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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第四部〜ラムネ瓶の中のガラス玉はとても綺麗に見える〜
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第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜③

緑川(みどりかわ)クンが、前向きになっているなら、もちろん大歓迎だよ! せっかくのご指名だし、期待には応えないとね!」


 自宅に戻ってから、シロに本日の成果を報告し、アドバイザー就任を打診すると、想像していた以上に、アッサリと快い返事をもらうことができた。シロが協力を渋ったときのために、いくつかの説得案とともに、どうしてもオファーを受けてくれない場合には、代替案(だいたいあん)を考えなければ……と思っていただけに、すんなりと協力を申し出てくれたところまでは、良かったのだが……。


「それだけ、クロにも、わたしのアドバイスのありがたみが理解できたってことだよね? それとも、わたしと一緒に居る時間を少しでも増やしたかったとか?」


 弾むような声で、マウントを取るようにたずねてくるシロの言葉に、少しウンザリしながらも、オレは率直に答える。


「あぁ、そうだよ。シロのアドバイスは、オレにとって役に立つモノばかりだったし……シロの話しを聞くのは興味深いからな」


「もう……わたしと居るのが楽しいって言えばイイのに……素直じゃないんだから、クロは……」


 言葉だけ聞くと、不満があるように感じるが、明らかに朗らかな口調で返事を返してきていることから、シロが上機嫌であるということは伝わってくる。

 

 この難儀(なんぎ)な性格の女子に、なぜ恋愛感情を抱いてしまったのか、そして、キッパリと「お友達でいましょう」と言われたのに、その想いが、自分のなかでくすぶり続けているのか、自分でも謎でしかないのだが……。

 いまは、自分自身の感情のことは、脇に置いておくことにする。


 そんな訳で、週末の金曜日の放課後は、三度(みたび)、シロと緑川家を訪問することになった。


「月曜日から、学校にも行く気になったみたいで……本当に、お二人のおかげです」


 オレたちの顔を見るなり、感謝の言葉を述べる緑川の母・優子さんに恐縮しつつ、シロとともに本人の部屋に向かう。


「では……あらためまして……アドバイザーとしてお招きいただきました白草四葉(しろくさよつば)です。ここには経験者もいるけど……わたしの指導は厳しいので、覚悟してついて来てね!」


 部屋に入って、あいさつもそこそこに、講師モードに入ったシロに、


「よ、よろしく、お願いします」


と、雰囲気に呑まれかけている緑川のようすに苦笑しつつ声をかける。


「シロ、なるべく、お手柔らかにな……」


 オレの声かけに笑顔を見せながら無言でうなずいた彼女は、


「それじゃ、あらためて、今回の目的というか目標を明確にしておきたいんだけど……」


と、相談の依頼主に視線を向ける。


「ぼ、僕は自分の告白を『キモッ……』と、バカにした山吹(やまぶき)あかりを見返してやりたいんだ」


 断言するような口調で返答する緑川だが、シロは、「う〜ん……」と少しだけ困惑した表情になり、オレたち二人に問いかける。


「相手の女子に対して、悔しさを晴らしたいっていう意気込みは伝わってくるけど……見返すってのは、具体的にどんなことなのかな? 女子の場合は、自分の魅力を磨いて、相手から愛の告白を引き出す。もしくは、相手よりもイイ男と交際して見せつける……なんて、ことが目標になるかなって思うんだけど……男子の場合は、その辺りのことをどう考えてるの?」


 たしかに、同じ失恋経験者として、緑川の気持ちはわからなくはないが、単純に「相手を見返す」と言っても、具体的に緑川本人が、どうすれば満足するのかを確認しておかなくては、アドバイスもしづらいだろう。


「相手からの告白されるってのは、ちょっと、ハードルが高そうだし……山吹よりも、魅力ある女子となると、校内に何人いるんだって話しだよな……」


 そう言いながら、今回も講師役を務めるクラスメート女子の方をチラリと見る。すると、こちらの視線に気付いたのか、シロは、オレと緑川を交互に見ながら、


「ち・な・み・に……今回は、黒田クンのときと違って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、その点は認識しておいてね」


と、わざわざ強調しながら返答する。


「わ、わかってるよ、そんなこと」


 緑川は、ややバツが悪そうに応じるが……。

 豊富な知識を持つシロとしては、ワン・パターンの展開は避けたいと考えているのだろうか?


 具体的な目標設定を行う、という彼女の問いかけに対し、答えを出せないオレたち男子二名の表情を確認しながら、シロは、こんな提案をしてきた。


「じゃあ、こういうのはどう? 相手の山吹サンを二人きりのデートに誘って、オーケーをもらえたら目標達成! これで、どう?」


 そのアイデアに、相談者の緑川より先にオレが返答する。

 

「良いんじゃないか! デートに誘って、相手がノッて来てくれるなら、男子として認めてもらえてるってことだよな?」


 オレの言葉に、我が意を得たりと、シロがうなずく。


「さすが、クロ! 良くわかってるじゃない! もちろん、デートしたからって、すぐに付き合うって訳じゃないけど、その候補には入っているって目安にはなるよ」


「たしかに、それは、わかりやすい目標だな……春休みまでの僕とは違うってことを相手に()()()()()には、十分だと思う」


 シロの言葉にうなずきながら、緑川も納得したようである。

 これが、大学生くらいになれば、もう少し先に進むことも必要かも知れないが、オレたち高校生なら、この内容でも十分だろう。


 こうして、今回の具体的な目標が決定し、シロの本領である『超恋愛学』の講義のセカンド・シーズンが始まった。

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