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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第三部〜怪獣たちのバラード 三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜
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第3章〜裏切りのサーカス〜④

 天竹(あまたけ)さんたちの待つ図書室に移動するまでの間、ボクは、連絡会の中身を頭の中で確認しながら、竜司や鳳花(ほうか)部長が発した言葉について考えていた。

 竜司と佐倉さんは、ボクたちがクラブ訪問を終えたあと、すでに提携するグループを決めていただろうクラブの方針を覆すような提案を行って、複数の文化系クラブとも協力関係を築きつつある。


 まだ、決定事項ではないということだけど、コンピュータクラブも、竜司たちと組む可能性があることを念頭におきながら活動しないといけない。


 明確なルールが無かった以上、竜司たちの行為を責める訳にはいかないし、魅力的な提案に乗った美術部に非がある訳でもない。

 

 これは、竜司たちの行動に注意を払うことなく、訪問したクラブとの約束をキッチリと詰めなかったり、彼らが協力を確約してくれるような提案を行うように周知できなかったボクに責任がある。

 そのことを文芸部のメンバーに説明しなければならないことを考えると、図書室に到着する前から、とてつもなく気が重かった。


 さらに、生徒会室を退出される前に、鳳花(ほうか)部長から声をかけてもらえたものの、この時点では、


 重い足取りのまま、図書室に到着すると、文芸部のみんなからの視線がボクに集まった――――――。


「あの、黄瀬くん……連絡会でわかったことはありますか?」


 心配そうな表情で、たずねてくる天竹さんたちの不安をなるべく小さくしたいという想いはあるものの、連絡会で判明した事実は、包み隠さず話そうと、ボクは考えた。


「うん……朝、話しを聞かせてもらったように、美術部は、竜司たちと組むことにしたみたいだ。ボクらが訪問したあと、竜司たちは、美術部にVtuberのキャラクターデザインをしてくれないか、と提案したそうなんだ」


「そう……ですか。それで、美術部は……」


 彼らが、竜司たちに協力する理由を確認した天竹さんは、納得したようだが、下級生の高瀬(たかせ)さんと井戸川(いどがわ)さんは、なにか言いたげな表情だ。


 ただ、そんな彼女たちに、まだ伝えなければいけないことがある。


「実は、もうひとつ悪い知らせがあるんだ。コンピュータクラブも、竜司たちの提案に乗る可能性があるらしい……。美術部のキャラデザが気に入れば、PCに画像を取り込む協力をするみたいだ」


 ボクが、説明を続けると、一年生のふたりは、


「そんな……」


と、絶句し、悲壮な表情を浮かべた。


「私たちが、キチンと説明できなかったからでしょうか?」


 高瀬さんが、そう言うと、井戸川さんが憤慨したように、


「それでも、一度は約束したのに、美術部もコンピュータクラブもヒドくないですか?」


と、不服そうにつぶやいた。

 

 もちろん、不満の声をあげたくなる気持ちは、痛いほど良く分かるけれど――――――。

 

「それは、竜司たちの行動に注意を払っていなかったことに問題があるし、他のクラブが思わず協力したくなる魅力的な提案を出来なかったことに原因がある……どちらも、広報部としての力量が足りていなかったボクの責任だ」


 ボクは、図書室に戻ってくるまで考えていたことを語り、文芸部のみんなに頭を下げる。


 すると、重苦しい雰囲気になりつつある図書室の空気を一変させるように、ボクらと同じ学年の今村(いまむら)さんが口を開いた。


「もう、みんな、なに深刻な顔つきになってんの? 他のクラブが決めたことは、仕方ないじゃん! 私たちにも相手にも責任があるわけじゃないし、誰が悪いって訳でもないよ? それより、いま協力してくれそうなクラブとの関係を大事にしよう!」


 その言葉に反応するように、石沢(いしざわ)さんも声をあげる。


「だよねぇ……私も今朝、美術部の加納先輩に言われたことはショックだったけど……まだ、協力を申し出てくれているクラブはあるし! 『来る者は拒まず、去る者は追わず』だよ!」


 二年生のふたりが発言すると、部長である天竹さんもうなずいて、部員たちを説得するように語りかける。


「うん……なつみとはるかの言うとおりだね。いま、協力的なクラブが他のグループに映らないように、対策を立てなくちゃ……」


 さすがは、文芸部の代表者というべきか、次の行動指針を示してくれた彼女に感心しつつ、ボクは、天竹さんの言葉を受けて、連絡会で決定した内容を報告させてもらうことにする。


「それについては、良い知らせ……という程ではないかも知れないけど、心配事がひとつ減ったんだ。連絡会では、今回の美術部やコンピュータクラブのような混乱を避けるために、各グループで、取材しているクラブ名と内容を共有することになったんだ。早ければ、もう、生徒会書紀の生野(いくの)先輩から、スプレッドシートのファイル共有の招待メールが来てるんじゃないかな?」


 ボクが、そう報告すると、すぐに天竹さんが彼女のタブレットPCを開き、メールをチェックする。


「あ、ありました! これですね! 生徒会のアカウントからメールが届いてます」


 彼女の声につられ、ボクと文芸部のみんなは、天竹さんが開いたPCの前に集まった。

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