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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第二部〜カリスマ女子高生になったわたしに、初恋の彼が全校生徒の目のまえで告白してきたけど、もう遅い!〜
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エピローグ〜幼なじみや後輩とはラブコメにならない〜序

5月21日(土)


 その後のことを少しだけ語ろう。

 月曜日に、体験入部というかたちで紹介された宮野さんは、引き続き、仮入部ということで、しばらくボクたち広報部と活動をともにすることになった。

 そこで、翌日の土曜日に、彼女との親睦会を兼ねて、月曜日の放課後から先延ばしになっている「学校生活におけるSNS発信の活用」についての会議を、ボクと竜司が利用している《編集スタジオ》で開催することにしたんだけど――――――。

 

 月曜と同じメンバーが集うということは、五月から広報部の部員になっている佐倉さんはもちろんのこと、鳳花(ほうか)部長が、オブザーバーとして、アドバイスを要請している白草さんも参加するということである。


(ナニもトラブルが起こらなければ、良いけど……)


 オープン・スクールの直後から続く、佐倉さんと白草さんの険悪な雰囲気を目の当たりにしている身としては、そのことだけが気掛かりだった。

 せっかくの週末だというのに、ボクの気持ちは晴れないままだ。

 一方で、ひと月ぶりに女子メンバーが自分たちの根城に来る予定ができたということでテンションが上がっているのか、竜司は、先月と同様、前日から、はりきってランチの材料を買い込んでいた。

 午前十時の集合時間より少し早く、同じフロアに住んでいる佐倉さんが、《編集スタジオ》にやってきた。


「おはようございます、くろセンパイ、きぃセンパイ! 昨日、近くのお店で焼き菓子を買っておきました。宮野さんの歓迎会もありますし、お昼の後に、みんなで食べませんか?」


 佐倉さんは、そう言って、竜司に紙袋を手渡した。


「おぉ、ありがとう! 気が利くな、モモカ。昼は、パスタを用意するからな。楽しみにしていてくれ!」


「わぁ! センパイの手料理をいただけるなんて、感激です!」


 竜司の言葉に、佐倉さんは声を弾ませて、喜びを表している。

 ボクらが、その変容について、いままで意識していなかっただけかも知れないが、中学校時代に比べると、高校に入学して、彼女は、本当に性格が丸くなったと感じる。

 自分たちの知っている佐倉さんなら、竜司の手料理にも、なにか、一言……いや、二言三言の毒を吐いていただろう。

 彼女の内面に、どんな変化があったのかはわからないけれど、特に、竜司に対してのあ《・》た《・》り《・》が、とてもソフトなモノになったことだけは、たしかだ。


(まあ、中学の時みたいに、二人で校内放送をすることはないだろうし……あれは放送用のキャラ作りって面もあったのかな?)


 楽しげに竜司と語り合う佐倉さんのようすを眺めながら、ボクは、そんなことを考えていた。

 すると――――――。


 ピンポ〜ン、と玄関のチャイムが鳴り、竜司がインターホンで応じると、


「おはよ〜! 雪乃といっしょに来たよ〜」


という白草さんの声が聞こえてきた。

 モニターに目を向けると、二人の女子が、インターホンのカメラに向かって微笑んでいる。

 玄関ドアに向かい、ボクが彼女たちを出迎えると、


「お邪魔しま〜す! おはよう、黄瀬クン! 今日は、SNSの調査会議に、雪乃の歓迎会! 楽しみだね!」


と、白草さんが声をかけてきた。

 彼女は、宮野さんのことを下の名前で呼ぶほど、親しくなっているようだ。


「今日は、お招きしてもらった上に、わたすの歓迎会まで開いてもらうことになって、ほんにありがとがんす」


 白草さんに続いて、今日の主賓と言っても良い宮野さんが、ボクにあいさつをしてくれた。


「いいよ、いいよ! お礼なんて! ただでさえ、人手が足りない広報部に入部してくれてただけでも、ボクたちは大歓迎なんだから! 佐倉さんも含めて、なるべく早く芦宮(あしのみや)高校の広報部に馴染んでもらいたいからね。さぁ、あがって」


「ん、では……お邪魔します」


 そんな風に、ボクが下級生を歓待している間、いつの間にか、玄関フロアからリビングに移動していた白草さんは、竜司に話しかけている。


「ねぇ、クロ! わたし、今日はお菓子を焼いてきたんだ! 一年生の大事な歓迎会だもんね! ショコラクッキー、雪乃や佐倉さんのお口に合えばイイんだけど……」


 その言葉に真っ先に反応したのは、声をかけられた竜司でも、白草さんを慕う宮野さんでもなく、意外な人物だった。


「わぁ! ありがとうございます、白草センパイ! さすが、女子力高いですね!」


 佐倉さんのその声に、トゲや険のようなモノは感じられず、人当たりの良さが感じられる。


「ありがとな、シロ! 桃華も喜んでるし、きっと、宮野もそうだろう。なぁ、宮野?」

 

 竜司が、もう一人の下級生に呼びかけると、彼女は、


「はい! お部屋に来る前にも、ヨツバちゃんに聞かせてもらったんですけど……ホントに嬉しいです」


と、心の底から嬉しそうに、はにかみながら答えた。

 その和やかな雰囲気に、ボクの表情も、思わずほころぶ。

 佐倉さんから自分への敵対心や悪意が感じられないためか、白草さんも、今日は、すこぶる機嫌が良い。

 これなら、心配していたように、彼女たちが敵意をむき出しにして、ギスギスした雰囲気になり、宮野さんの歓迎会が台無しになることはなさそうだ。

 それは、(自覚はないかも知れないけど)当事者の竜司だけでなく、ボクにとっても、喜ばしいことだ。

 戦火をまぬがれることができそうな、その穏やかな空気に安堵したボクは、来たるべき我ら広報部の明るい未来を想い描いていた。

 

 そう、この時までは――――――。

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