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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第二部〜カリスマ女子高生になったわたしに、初恋の彼が全校生徒の目のまえで告白してきたけど、もう遅い!〜
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第3章〜カワイくてゴメン〜⑮

 まさか、吹奏楽部や体育会系のクラブを巻き込んでの告白イベントが、転入してきたばかりの女子生徒によって仕組まれたことだとは思わなかった。

 しかも、彼女は、大勢の在校生や進学を希望する中学生が見守るまで、くろセンパイの告白を断ったのだ。


 なんという底意地の悪さだろう――――――。

 

 彼女のなかで、どういう理由があったのかは知らないし、知ろうとも思わないけれど、自分が大切に想っているヒトを衆人環視の前で傷つけたことは、絶対に許せない。

 中庭に設置されたステージの上で、くろセンパイの告白を断り、ニヤリとほくそ笑むような彼女の表情を目にした瞬間、ワタシの中で、ほの暗い感情が生まれたことに気づいた。

 同時に、三年前、中学生になったワタシに対して、取るにたらないイヤガラセをしてきた三人の女子の気持ちを、初めて理解できた気がする。


(もし、好きな人を傷つける人間がいたら……そりゃ、憎悪の対象にもなるか……)

 

 だからと言って、彼女たちの行為を許すつもりはないが――――――自分が想いを寄せている相手を手ひどくフッた女子に対する感情がどのようなモノなのか、ワタシは、心の底から初めて感じ取ることができたのだ。


 こんな人間が、今までと変わらず、学校生活を送ろうとしていること自体に腹が立つ!


 それが、ワタシの偽りのない気持ちだった。

 とはいえ、教科書など彼女の持ち物を破損させたり、肉体的に痛めつけるなどの行為は、あまりにも低レベルで、自分のポリシーにそぐわない。

 そこで、ワタシは、と《・》い《・》う《・》に、もっとも、精神的ダメージを与える方法を考えていた。

 それは、なによりも、彼女自身が執着を見せている、と《・》い《・》う《・》が、カギになることは、間違いないだろう。

 ワタシから見れば……いや、誰がどう見たって、彼女の感情のベクトルは、くろセンパイに向いているにも関わらず、あ《・》の《・》で、彼の告白を断った理由は、まったくわからない(そして、理解するつもりもない)けど……。

 彼女は、その最大のチャンスを自分から手放したのだから、ワタシとしては、この機会を逃す理由はない。

 

 自分の想う相手と相思相愛で結ばれ、そのことが憎い相手へのの《・》になる――――――。


 これほど、胸のすくシナリオが、他にあるだろうか?

 大昔から語り継がれている『シンデレラ』の物語から、最近、流行っているという悪役令嬢や追放される聖女が主人公の作品に至るまで、なぜ、このテのストーリーが、いまでも人気を集めるのか、よくわかった。

 

 驕る白草四葉は久しからず――――――(原典は、『平家物語』だっけ?)


 彼女が、いい気になっている間に、ワタシは、淡々と自分のやるべきことを進めるだけだ。

 その一方で、


(だいたい、くろセンパイも、くろセンパイだよ! 紅野センパイみたいに思いやりのある相手ならともかく……あんな性格の悪い女子に騙されるなんて!!)


 と、自分が想いを寄せている相手に対しても、憤りを感じないわけではないけれど……。

 

一時(いっとき)の気の迷いであれば、許してあげましょう」


 と、ワタシは、寛大な気持ちで、目の前の上級生に接することに決めていた。

 まずは、短期間で二度の告白の失敗(=本人は失恋したと思い込んでいる)から回復するまでの『恋愛クールタイム』に入っている彼を早めに立ち直らせて、心理的にも、物理的にも近くにいる後輩女子に目を向けさせることが重要だ。

 

 そのために、外堀から徐々に埋めていこう――――――


 そう決意したワタシに、先ほどから、ジッと考え込んでいたようすのセンパイが、声をかけてきた。


「ありがとうな、モモカ……色々と話しを聞いてもらって、少し気持ちが楽になった」


 その言葉のとおり、くろセンパイの表情は、さっきまでより、少しだけ晴れやかになっている。


「そんな……後輩として、お世話になっているセンパイに、当然のことをしただけです。あと、中学のときの放送では、『非モテ』キャラとしてイジらせてもらいましたけど……くろセンパイのことを想っている女子は、必ず居るハズですから……」


 普段、誉めなれていないセンパイが相手なので、最後は小声になりながら伝えると、


「……そんなに気を使ってくれなくても大丈夫だぞ、モモカ。まあ、オレみたいな人間の相手をしてくれる女子がホントに居てくれたら良いけどな……」


くろセンパイは、自嘲気味に笑う。その笑顔が、あまりに切なくて、胸に息苦しさを感じながら、ワタシは、視線をそらして、こう言うのが精一杯だった。

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