第3章〜カワイくてゴメン〜⑦
放課後になり、オレは鳳花部長に任された任務を遂行すべく、校内の人通りの少ない場所を中心に探索する。
「新入部員の学内の評判を確かめようと思って……一年生に弟や妹が居る知り合いに、声を掛けておいて良かったわ」
頼りになる上級生は、佐倉桃華が、どんな生徒なのか、周囲にどう思われているのかを確認するため、さまざまな生徒から情報を集めていたようだ。
自分に対しても、同じことがされているのかと思うと、少しおっかない気もするが、今回は、彼女の情報収集に賭ける熱意に感謝するしかない。
オレと鳳花部長の考えでは、佐倉は、自分でトラブルを解決しようと、体育の授業でボールをぶつけてきたという三人の女子と直に話し合おうとするハズだ。
佐倉のクラスメートが報告してくれた一時間目の彼女の不審な行動の原因と、放送室前のリクエストボックスに入っていた投書の差出人は不明なままだが、おそらく、二時間目の体育の授業での出来事と関係があると考えて間違いない。
大きなトラブルに発展する前に、なんとか彼女たちと接触すべく、体育館の裏手や放課後は生徒が寄り付かない理科室などが並ぶ特別棟を探すが、なかなか佐倉たちを見つけることができない。
焦る気持ちを抑えながら、普通教室の入る校舎棟に戻ると、壮馬の声で
「二年一組の黒田くん、二年一組の黒田くん。至急放送室まで……」
という校内放送が入った。
その声に
「サンキュー、壮馬!」
と、つぶやき、オレは、昼休みの終わりに鳳花部長から手渡された物のうちの一つであるメモを確認した。
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至急放送室まで:駐車場
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オレが佐倉を発見するよりもさきに、放送部の部員に彼女たちの目撃情報が入った場合、校内放送で知らせることになっていた。
ただし、目撃場所をそのまま放送でアナウンスしてしまうと、佐倉や一年生女子たちが、その場所を移動してしまう可能性が高い。
そこで、あらかじめ、彼女たちが集まりそうなスポットをいくつか選定し、放送する内容によって、目撃された場所を指定するという方法を取った。
この鳳花先輩が考えたアイデアを書き記したメモをコピーし、放送部員たちで共有している。メモには、他にも、
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第二理科室まで:校舎裏
視聴覚室まで:体育館裏
相談室まで:特別教室棟
コンピュータ室まで:中庭
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など、放課後は生徒が立ち寄らない教室などを中心に、実際の場所とは離れた教室名が暗号文のように記されていた。
壮馬による放送と手渡されたメモの内容をもとに、校舎を出て駐車場に向かって駆け出す。
ここまでも、教室の廊下以外は走りっぱなしだったオレは、息が切れそうになるのを感じながらも、なんとか目的の場所にたどり着いた。
まだ放課後になった直後ということで、自家用車で帰宅する先生たちもおらず、駐車場には十台以上の乗用車が停まっているが、その奥に集っている女子生徒たちの姿が見える。
一呼吸おいて、彼女たちのいる方に歩いていくと、一人の女生徒が、地面にひざをつくような姿勢を取っているのが見えた。