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初恋☆リベンジャーズ  作者: 遊馬友仁
第二部〜カリスマ女子高生になったわたしに、初恋の彼が全校生徒の目のまえで告白してきたけど、もう遅い!〜
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第3章〜カワイくてゴメン〜②

4月26日(金)


〜佐倉桃華の回想〜


「佐倉! 好きだ!! 付き合ってくれ!」


「いや、普通にムリだし……って言うか、あなた誰?」


 もう何回目だろう――――――?

 それは、中学校に入学してから、まだ、ひと月も経っていない放課後のこと。ワタシは、校舎裏で、ほとんど面識のない男子から告白を受ける、という罰ゲームに近い儀式に付き合わされていた。


「あ、オレは隣のクラスの谷口で……」


 告白のあとに自分の名前を名乗る、という相手に対するマナーも話しの順序もデタラメな内容に、ため息すらもらすことすら、もったいないと感じたワタシは、相手の発言を最後まで待たずに、言葉を発する。


「そう……谷口くん、だっけ? 良い機会だから言っとくけど、ワタシは誰とも付き合うつもりはないし……興味のないヒトから好意を向けられるのって……気味悪いんだよね」


 五回目くらいまでは、こうした場面に遭遇する回数を数えていたが、それ以降は、数をカウントすることも面倒になって、ワタシは考えることを放棄してしまっていた。

 客観的にみれば、相手にかなり酷いことを言ってしまったのかも知れないけど、二ヶ月弱のあいだ、立て続けに行われた『好意の押し付け』に、ワタシは、本当にイヤ気がさしていたのだ。


「そんな……せめて……」


「ナニ? 『友だちからでも』とか言いたいの? 空気も読まずに、自分の気持ちを押し付けてくるような人間と仲良くなりたい、と思う人間がいると思ってるの? あいにく、ワタシは、そこまで性格良くないから……」


 二度と自分にまとわりついて来ないように、キッパリと断る。

 隣のクラスに所属しているという男子は、半分、涙目になりながら、


「わ、わかった……放課後にムリに時間を取ってもらって、ゴメン……」


と言って、山の手中学という学校名に相応しく、目前に迫る山と校舎に挟まれた通路を駆けながら去って行った。


「ハァ〜〜〜〜〜。面倒くさ……」


 授業が終わっても続いた気の重くなる儀式から開放されたワタシは、ようやく大きなため息をついて、校舎に戻ることにする。

 ほとんど面識もないまま、自分の名前を名乗らず、一方的に気持ちを押し付ける、という、いつものパターンだったが、最後に、ワタシの時間を浪費してしまったことを謝るだけの気づかいがあったことだけは評価できるかも知れない。

 なにしろ、これまで告白を断ってきた相手の半数は、ワタシの返答を聞いたとたん、こちらの立場を気づかう余裕すらなく、逃げるように去って行くような人たちだったからだ。


(いつまで、こんな茶番に付き合わないといけないのか――――――)


 重たい気分を引きずりながら、校舎に入り、本来の放課後の目的地に向かう。

 それでも、一日で、もっとも楽しみなこれからの時間のことを考えると、少しずつ足取りも軽くなっていく。

 目的とする校舎内の一室のドアの前に立ち、少し呼吸を整えたワタシは、


 コンコン――――――。


と、ドアを二度ノックしてから、静かに扉を開ける。


「失礼します。佐倉です。遅くなって申し訳ありません」


 そう言って、校内で一番のお気に入りの場所である放送室に入ると、三人の先輩が、ワタシを出迎えてくれた。


「おっ! 佐倉、ようやく来たか! 待ってたぞ」


 真っ先に声をかけてきたのは、黒田センパイ。

 二週間前、ワタシが入部を決めた放送部の二年生だ。


「佐倉さん、お疲れさま。もう、今日の準備は出来てるよ」


 次に話しかけてくれたのは、黄瀬センパイ。

 黒田センパイと仲の良い同じく、二年のセンパイだ。

 そして、ワタシの表情を確認しながら、最後に女子のセンパイが口を開く。


「佐倉さん、なにかあったの?」


 遅れたことを注意することなく、理由だけをたずねてきたのは、花金鳳花(はながねほうか)センパイ。この放送部の部長さんだ。


「いえ……大したことでは……遅れて、すみません」


 上級生とは言え、男子のいる前で、恋愛関係の話しをすることは避けたかったので、理由を告げずに謝罪だけをすると、鳳花センパイは、表情を変えないまま、


「そう……でも、なにか困ったことがあったら、すぐに相談してね」


と、ワタシを気づかってくれた。

 穏やかな放送室の雰囲気に、ついさっきまでイラだっていた自分の気持ちが和やかになっていくことに気づく。


「はい、ありがとうございます」


 こうして、自分を受け入れてくれるセンパイたちに感謝を込めて、お礼の言葉を述べると、鳳花部長が、指示を出した。


「じゃあ、今日も本番に向けて、練習に入りましょうか?」

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