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スキル「PV」は閲覧数に応じて強くなる  作者: ジブン
第一章 0〜1922 〜旅立ち〜
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第三話 84

 父ガリアが一命を取り止めたこと、そしてナザム村に反乱者はいないと判断されたことを除けば、昨日の出来事はまるで悪夢であった。


「疲れただろう。二人とも家に帰って寝なさい。俺は大丈夫。ドルビンさんが面倒をみてくれる」


「面倒をみるとまでは言ってないぞ。私は応急処置をしただけだ」


 ドルビンは白髪混じりのボサボサ髪を掻きながら顔をしかめる。


 ここは村外れにある診療所も兼ねたドルビンの家である。


 右腕を切り落とされ、瀕死状態にあった父を共に運んでくれたベンソンと、適切な処置をして命を救ってくれたドルビンには感謝をしてもしきれない。


「サルマン家の連中に生意気な口を聞くなんて。しばらくこいつに説教してやる。お前さんたちは邪魔だからもう帰りなさい」


 ドルビンは口や態度こそ横柄だが、いい人だ。


 こんな貧しい農奴を救ったとしても見返りがないことぐらいは分かっているはずだ。

 

 しかも、領主の騎士たちに睨まれたガリアを救うことは、村での自分の立ち位置にも影響を与えるだろう。


 だがドルビンはぶつくさ言いながらも、懸命に父の命を救ってくれた。


 この村にはそうした善意の欠片が光っている。


 だが領主サルマン家の存在、そして過度な封建制がその光に影を落としているのだ。 


「本当にありがとうございますドルビンさん。帰るわよ。マルク」


 泣き腫らした赤い目の母が俺を呼ぶ。

 

 父の目が覚めるまで一晩中、彼女は父の残された左手を握って懸命に祈り続けていた。


 俺はその様子をどこか後ろめたい気持ちで見守っていた。


 その場にいたにも関わらず、何もできなかった俺は自分の無力さを呪うしかできなかった。


 ドルビンの家を出ると、そこには心配そうな顔をした幼馴染のアリアが一人佇んでいた。


「こんにちは。アリア。私は先に帰るから、暗くなるまでには帰ってらっしゃいね」


 母は俺にそう言い残して、先に帰っていった。


「お父さん。大丈夫?」

「うん。一命は取り止めたって」

「良かった」


 夕暮れ時、電灯一つない村はオレンジ一色に包まれていた。

 

 何を話していいのか分からない。

 俺はこの美少女と幼馴染だと言うことしか知らない。


「マルクは悪くないよ」


 少し先を歩いていたアリアが振り返ってそう言った。


 どうしてこの子は俺が今一番欲しい言葉が分かるのだろう。


「すごく怖かったし。自分が情けない」


 俺は涙を堪えながら胸の内を吐露していた。


 そこから俺が一人で話し続けている間、アリアは隣を歩き、そっと手を握ってくれていた。


 昨日の出来事を夢中で話していると、気がつけば辺りはかなり暗くなっていた。


「もう帰らなきゃ。家まで送るよ」


 アリアの家がどこかも知らないのに、勝手な事を言った。


「すぐ近くだから大丈夫。ご、ごめん」


 アリアは繋いでいた手をパッと離す。


 暗い背景から際立つアリアの白い肌が仄かに赤く染まった気がする。


 俺の頭が冷静で、父の腕が切り離される光景が脳裏に焼き付いてさえいなければ、今すぐにアリアを抱きしめていただろう。


 だが俺は潮らしいアリアに「またね」とだけ伝えて、振り返った。


 街灯がなければ、こんなに暗くなるのが早いのか。

 けど見たこともない星の輝きのお陰で、なんとなく道は分かるな。


 そんな事を一人帰り道に思う。


 父はしばらく働くことができないだろう。

 というか腕が一本無くなったのだから、もし快復したとしても今まで通りに働くことはできないはずだ。

 しかもベンソンがそうであったように、領主に納める作物の量は減る訳が無い。

 むしろ嫌がらせのように増やされる可能性だってある。


 もし俺が本当のマルクなら、こんな時に両親を励ましたり、率先して父の代わりに農作業をこなせていたのかな。

 だけど手伝いをするのもやっとで、なんの力にもなれない俺。


 ダメだ。


 死にたくなってきた。


 俺はこの世界でも無力なのか。 

 

「ステータス」


ーーーーーーーーーーーー


名前:マルク

年齢:15歳


レベル:3

最大体力:15

最大魔力:1

力:6

魔力:1

すばやさ:7

運:2


魔法:なし

スキル:農作業Lv.4

ユニークスキル:「PV」


ーーーーーーーーーーーー


 なんだよこれ。

 弱すぎるよ。

 なんで、なんのために、俺は転生したんだよ。

 

 暗闇のせいか一層に光って見える「PV」という文字を手で触れる。


ーーーーーーーーーーーー


ユニークスキル「PV」 


累計:84


ーーーーーーーーーーーー


 また累計の数が増えてる。


 これが増えると何になるっていうんだ。


 もし、この「PV」が本当にアクセス数ならば、昨日の悪夢のような出来事を多くの人が見たという事になる。


 お前らはこれで満足なのか。


 元の世界でも自殺した惨めな俺が、異世界で生きようと立ち上がってもうまくいかず、さらに絶望する様を見ることは楽しいか。


 俺は天に向かって声にならない叫びをあげていた。


 ピコン。


 累計の数が一つ増える。


 なんなんだよ。これ。


 見てるんじゃねぇよ。

 

 俺は目の前に浮かぶ累計の「85」という数字を握り潰してやろうと手を伸ばす。 


 すると


ーーーーーーーーーーーー


「PV分配」


使用可能:


レベル +1 [10PV]△


最大体力 +1 [1PV]△

最大魔力 +1 [3PV]△

力 +1 [1PV]△

魔力 +1 [3PV]△

すばやさ +1 [1PV]△

運 +1 [5PV]△


農作業Lv. +1 [1PV]△


ーーーーーーーーーーーー


 なんだこれ。


 ステータス・ボードが変化して「PV分配」と書かれた画面が目の前に現れる。


 使用可能という文字やステータスの「+1」という表記。


 直ぐにピンときた。


 ゲームか何かで見たステータス割り振り画面と似ている。


 もしかするとこの画面で累計PVをステータスに変換することができるのか。


 俺は試しに最大体力+1の[1PV]と表記された横の光っている△を押してみる。


 するとピコンという音が鳴り、使用可能PVがちょうど1引かれた「84」に変化し、最大体力+1の隣の[1PV]が[2PV]へと変化した。


 俺は確認のために再びステータス・ボードを出す。


ーーーーーーーーーーーー


名前:マルク

年齢:15歳


レベル:3

最大体力:16

最大魔力:1

力:6

魔力:1

すばやさ:7

運:2


魔法:なし

スキル:農作業Lv.4

ユニークスキル:「PV」


ーーーーーーーーーーーー


 最大体力が一つ増えている。


 間違えない。


 スキル「PV」はPV数に応じて強くなる。


ようやく物語が動き出しました。

皆様で主人公を強くしていただけると嬉しいです。


ーーーー


今作品は読者との相互的な関係の中で作りたいと考えているので、お気軽にご意見、ご感想をお願いします。もちろんブックマーク登録や閲覧をしていただくだけでも、「PV」として作品に影響を与えますので、連載中はお祭り感覚で参加していただけると幸いです。


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