表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル「PV」は閲覧数に応じて強くなる  作者: ジブン
第二章 2083~
22/23

第二十二話 4418

 無名で異色な四人のパーティが巨大なドラゴンを討伐したという話は王都中に広まった。


 しかしそれ以上に、爆散したドラゴンの死体の異質さが強烈な関心を攫っていた。

 

 ヤグーはその噂を最大限に利用し、ハムラの作った兵器こそがドラゴン討伐の要となったと風評を広めた。

 その評判は冒険者を中心に広まり、ハムラの下には兵器を求める冒険者や、技術者として弟子入りを志願する者たちも集まるようになった。

 ドラゴン討伐の報酬を元手に王都の中心で設立された〈ハムラの工房〉は、ヤグーの仲介によって、あっという間に十数人の弟子たちを抱える規模となっていた。


 自身の噂が広がることを危惧していた俺にとっては、ハムラやヤグーがドラゴン討伐の立役者となることは非常に都合がよかった。


 ハムラは弟子を取ることや兵器製造に関心はないようだが、ヤグーが勝手に話を進めているようだ。

 ドラゴン討伐で利用した魔石の暴発を推進力とした大砲は量産することはできないが、その代わりに彼が〈東の国(ハポネ)〉から持ってきた弩が一世を風靡している。

 特に冒険者たちの間ではハムラの弩は一つのブランドと化しているとヤグーは得意げだった。

 商売人であるヤグーは弩の技術が他に漏れることを嫌がっているが、ハムラは技術は再現できるから良いのだと、むしろその制作方法を広めているようだった。


 ハムラ自身は今回の冒険で魔法の力を身を持って体感したようで、魔法を技術によって再現することに腐心している。

 特に俺の起こした爆発のエネルギーに彼は惹かれており、何度か俺の元に尋ねては、もう一度爆発を見せてくれと頼み込んできた。

 残念ながら爆発は俺の力ではなく魔石に依拠するもので、さらに魔石はカリーナ王女に返却してしまっていた。


 落胆するハムラに俺は元の世界でのなけなしの知識をもとに「火薬」の存在を仄かした。 

 ハムラは初めは「火薬」に対して猜疑的であったが、可燃性の物質に関する実験を開始したようだ。

 いずれこの異世界にも「火薬」が誕生し、どこかで技術革新が起こるのだろう。

 

 莫大な旅費を手に入れたイェフェンは旅を続けるとは言ったが、王都が気に入ったようで、しばらくの在住を決めた。

 イェフェンによれば王都は他の町や国々よりも、他人への関心が薄く、エルフであっても絡まれることが少ないのだという。

 だがそうした都市の匿名性よりも彼女の心を捉えたのは、王都のグルメであった。

 パンを中心とした人間の料理に胃袋を掴まれた彼女は、少しだけふくよかになったように思われる。


 さて肝心の俺だが、今もまだ国王軍として働き、ブラックウッド大将による剣術の稽古や王子たちとの魔法の勉強会を行っている。

 変わったことといえば、テレンス伯という貴族の下で槍術の訓練を受けるようになったということだ。

 経緯としてはドラゴン討伐の依頼人であるテレンス伯が、俺たちパーティを呼び出し、私兵にならないかと提案してきたことから始まる。


 ドラゴンの頭を嘱望するような豪快な趣味のテレンス伯は、〈|十人隊〉という少数精鋭の私兵を結成していた。

 イェフェンとハムラはテレンス伯の提案を断り、ヤグーは金の交渉が上手くいなかったようで知らぬ間に消えていた。

 初めは俺も断ろうとしたが〈十人隊〉の隊長であるチャールズという男の華麗な槍捌きを見て話を聞くことにした。

 

 チャールズは30代後半の冴えない中肉中背の男であったが、槍を持つと常人離れした動きを見せる。

 実際に彼は槍を持っていない時は低姿勢で謙虚な男なのだが、槍を持つとまるで人格が変わったかのように生意気で豪胆な男と化す。

 華麗な動きだけでなく彼の実力は確かで、屈強な強者である〈十人隊〉の全員がチャールズに絶対の信頼を置いている。

 

「国王軍として働いているので常駐することはできませんが、槍術を習いたいのです」

  

 俺は失礼を承知で正直な意見をぶつけた。

 ブラックウッドとの剣術稽古にも少し慣れてきたところであり、新たな戦闘系スキルを獲得したいとも考えていたのだ。 


「ガハハ。かまわん。かまわん。ドラゴン討伐の勇士ならいつでも歓迎じゃ」

 

 白髪と白髭に包まれ、まるでホワイトライオンのような見た目のテレンス伯は豪快に笑った。

 おそらく彼は60歳ほどだとは思うが、その表情や大きな体躯からは精力が溢れているようだった。


「良いな。チャールズ」


「チッ、分かった。来い小僧」


 槍を肩に乗せたチャールズは舌打ちすると部屋を出た。


 こうして俺の槍術稽古は始まったのだ。

 

♢♢♢ 


「お前、本当にドラゴン倒したの?」


 チャールズによる突きを鳩尾に喰らい俺は倒れ込む。


「あぁ。またやってしまった。すまない。マルコ君」


 槍を手放したチャールズは急に態度を変えて俺に駆け寄る。


「ぜ、全然、攻撃が、見えなかったです」


 息を吐きながら俺が言うとチャールズは溜息をつく。


「これじゃ訓練にならないだろう。ごめんよ。正直なところ、私にもどう動いているかわからないんだよ」


 チャールズの言葉通り、彼の指導は全くアテにならなかった。

 槍を持った彼は「シュッと動いて、スッと刺すんだよ」などと感覚的なことしか言わず、槍を持っていない彼はただただ謝るばかりなのだ。


 もう4度目の訓練だが、まだ槍術スキルは発現すらしていない。

 今までヤグーやブラックウッドなどスキル習得に関して師匠に恵まれていた分、俺はなかなか発現しないスキルに焦りを感じていた。


 訓練用の木の槍に体重を預けて溜息を付くと、〈十人隊〉の一人で顔に大きな傷のある若者が話しかけてきた。

  

「チャールズさんから槍術を学べるなんて期待しない方がいいぜ」

「やっぱりそうですか」

「あの人の槍術は特殊すぎる。誰も真似できねぇよ」

「一般的な槍術とは違うんですか?」

「当たり前じゃねぇか。そんなのも知らずに稽古を受けてたのか?」

「すみません。無知なもので」

「普通の槍術はあそこまで身体を動かさない。なぜなら槍はリーチがあるから槍を動かすことに主眼を置く。だがチャールズさんはむしろ逆。まるで槍と踊るように身体を動かす」

「もしかしてチャールズさんは特殊なスキルを持っているとかですか?」

「多分持っているだろうな。だがチャールズさんはそれを絶対に教えてくれない。秘密を知っているのはテレンス伯ぐらいじゃないか」


 その言葉を受け、このままチャールズの稽古を受けていても埒が明かないと、俺はダメもとでテレンス伯の元へと向かった。 


 テレンス伯の館は王都の中でも城に次ぐ大きさを誇っており、俺はテレンス伯を探して館中を歩き回ることになった。

 館の中は豪華な装飾の他に、数多くのモンスターの剥製が飾られている。


 イェフェンが見たら悪趣味だと批判するのだろう、などと思いながら歩いていると、館の中心にあるダンスホールに辿り着いた。

 

 誰もいないダンスホールに足を踏み入れると、豪華な内装の施されている奥の壁に巨大なドラゴンの頭の剥製が飾られているのが見えた。


「お前たちが狩ったドラゴンじゃよ」


 突然、後ろから長く白い髭を撫でるテレンス伯が現れた。


「立派じゃろ」


「確かに、大きいですね」


 我ながらこんな大きなドラゴンを討伐したのかと感心する。


「だが、もっと大きく、もっと綺麗な状態のドラゴンの頭があるんじゃよ」


 テレンス伯は自慢げに言った。


「どこにあるんですか?」


 館の中をしばらく歩いたが、そんなものは見当たらなかった。


「後ろを見てみろ」


 振り返ると前方のドラゴンの顔と向き合うように配置された巨大なドラゴンの頭が壁にかけられていた。

 それは俺たちの討伐したドラゴンの1.5倍ほどの大きさで、まるで壁から生えたきたかのように傷が一切ないものだった。


「ガハハ。凄いじゃろ」


「凄いです。誰がこれを?」


 俺は純粋な好奇心から聞いた。

 するとテレンス伯は急に歯切れが悪くなり、「うーむ。〈十人隊〉の前隊長じゃよ」と答えた。


「もしかしてブラックウッドさんですか?」


 俺が当てずっぽうに言うとテレンス伯は豪快に笑い始めた。


「確かにあやつなら可能かもしれんな。だがあやつはメイリング家に忠誠を誓っておる。何度も我が隊に勧誘したが全て断られたわ」

 

「その人は王都にいるんですか?」


「あいつはもう王都にはおらん」


 神妙な顔つきになったテレンス伯を見て、俺はそれ以上の追求をやめた。

 

 ドラゴン討伐の実力者を知りたい気持ちもあるが、まずはチャールズの秘密を聞き出さなくてはならない。


「実は、チャールズさんの槍術のことなんですが…彼は何か特殊なスキルを持っているんですか?」


「ガハハハ。やはりお前も、チャールズに振り回されておるのか」


 テレンス伯はまるで俺が助言を求めるのを知っていたかのような反応を見せる。


「全く動きが読めません。教えてもらうにも、性格があれでは…」 


「チャールズの相手をするものは皆そうじゃ。お前ならあるいは、とは思ったがな」 


「私なら?」


「あぁ。マルコ、お前はユニークスキルを持っておるじゃろ?」


 突然のテレンス伯の言葉に俺は戸惑った。

 今までスキルやステータスは隠してきたが、なぜテレンス伯が俺のユニークスキルについて知っているのか。

 「PV」というユニークスキルについて知っているのは両親だけだったはずなのに。

 

「やはりそうか。わしは強者を見る目はあるんじゃ。あのパーティの中でドラゴンを倒したのはお前じゃと一目でピンときたわ」


 返事に困っているとテレンス伯は続ける。


「お前は素性を隠しておるようじゃが、わしはその力の源泉だけが気になる。だから提案じゃ。一週間後に行われる決闘試合に出場せよ。その結果次第ではチャールズの秘密を教えてやろう」

 

 テレンス伯は自分で言った決闘試合という言葉に少年のように目を輝かせる。

 恐らく彼は、純粋な好奇心から強さや力を探求し、その一環として俺の力を知りたがっている。

 

「分かりました。出場します」


 俺は二つ返事で提案を受けた。

 決闘試合という言葉に惹かれたのは俺も同じだ。

 

 安定した生活や十分な金は手に入れた。 

 レベルやステータスも確実に上がっている。

 だからそろそろ本格的に「PV」を使って戦闘系のステータスに特化させてもいいのかもしれない。

 しかも試合の結果次第ではさらに「PV(閲覧数)」を伸ばせるかもしれない。


 俺は一週間後の決闘試合に向けての特訓を開始した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ