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スキル「PV」は閲覧数に応じて強くなる  作者: ジブン
第二章 2083~
21/23

第二十一話 4160

 分裂してしまった時のために措定しておいた集合場所に四人が集まる。


「無事で良かったです。イェフェンさん」 

 

「マルクが爆発を起こしてくれたお陰で撒くことができた。ありがとう」


「で、どうするよ。ドラゴンは手負いでしばらく飛べねぇだろうが、こっちは肝心の大砲を失っちまった」


「すみません。ハムラさん。せっかく作ってもらったのに」


「いえいえ。私の作った兵器でドラゴンを撃ち落とせただけでも光栄です。しかし、あのドラゴン、大砲の事を警戒してましたし、なかなか賢いですね」


「一筋縄ではいなかったですね」


 悔しながらも全員の意見は一致していた。

 大砲が無くてはドラゴンに勝つことはできない。


 空飛ぶドラゴンを地上に降ろした今こそ好機であることは確かだ。

 だがそれでも生身の四人で敵うような相手ではない。

 また新たな大砲を制作するにしても、その間に飛べないドラゴンは他の冒険者たちの餌食となってしまうだろう。


「勿体ねぇなぁ。初めの一発も中々深いところまで刺さったはずなんだがなぁ」 


 ヤグーは悔しそうに呟く。


「そうですね。砲弾も一つ余ってますし。僕が大砲を失っていなければ…」


「仕方ない。あの状況でブレスがくるとは私も思わなかった」


 イェフェンは不慣れな手つきで俺の頭を撫でる。


「〈巨竜(ドラゴン)〉のブレスですか。少し見てみたかった気もします」


 ハムラは夢見るかのように上の空で呟く。


「凄い迫力でした。ある意味で大砲でしたよ」


 俺がそう言うとハムラは急に立ち止まる。


「確かに。構造は同じですよね。もしかしたら、いや、さすがに、それは、けど、うーん…」  

 

 ハムラは何やら頭を抱えてブツブツと呟き始めた。


「どうしたんですか?」


「ハムラは何か考える時はいつもこうなんだ。こんな時だっていうのによ」


 俺が問うと、呆れ気味のヤグーが代わりに答える。


「あの、マルクさんは爆発を起こせるんですよね?」


「まぁ近ければ一応」


「なら、ドラゴンの中で爆発を起こせば」


「え、食べられろってことですか?」


「いやいやいや、違います。一発目の砲撃で開いた傷口です。そこで爆発を起こせば、ドラゴンだってひとたまりもないはず。もともと爆発っていうのは凄い力で、だけど力が分散しちゃうから大砲みたいな筒が必要で、だからあれは鉄じゃないといけなくて、鉄じゃなかったら内側から破裂しちゃうんですけど…」


 ハムラは独り言のように文法もバラバラな言葉を並べる。

 だがハムラの言わんとすることは分かる。

 ドラゴンの胴に開いた傷口から爆発を起こすという、かなり無茶な作戦だ。

 しかし、試してみる価値はあるかもしれない。


「なんとなく話は分かるが、どうやってあのドラゴンに近づくんだよ」


 ヤグーの質問に対して、ハムラはブツブツと独り言を続けながら答える。


「違うくて、それは、え、と、あの。大砲を囮に…」


「はぁ?もう大砲は壊れたって」


「作れます。いや。本当は大砲じゃ無いんですけど、大砲の形であればそれでよくて。ドラゴンは頭がいいから。たぶん」


 ハムラの頭は冴えていた。

 大砲の脅威を知ったドラゴンは間違いなくその形を覚えているだろう。

 もし大砲の形だけでも再現できれば、それは格好の囮となる。


「直ぐに作れるんですか?」


「木と、あとナイフか剣を貸していただければ作れます。技術は、技術は再現できるから最高なんです。何度も何度も積み重ねて、その都度に強くなっていくんです」


 ハムラはこれまでにない程に力強く言った。

 

「イェフェンさん。フンババを埋めた時の小さな(くわ)をまだ持ってますか?」


 ハムラの思考に触発されて、俺もまた一つの作戦を思いついた。


(くわ)?あぁビネットか。持っている。浄化を表すエルフのお守りでもあるからな」


 イェフェンは背嚢からビネットと呼ばれる小さな(くわ)を取り出す。


「貸してくれませんか。もしかするとドラゴンを転倒させることができるかも」


 俺は、昨夜トロールから逃げる最中に足に何かが引っかかって転んだのを思い出した。

 ドラゴンの巨体を埋めるほどの落とし穴は作れないかもしれないが、突進の最中に転げさせるほどの穴を作ることは可能かもしれない。


「やるのか?本当にやるんだな?」

「私は構わない。全力でサポートしよう」

「あの。やってみたいです。危険かもですけど、試してみたいです」

「やりましょう。リベンジです」


 四人はそれぞれ作業に入った。

 ヤグーとハムラは擬似大砲を作り、俺とイェフェンは落とし穴を作る。


「相変わらず早いな。ビネットを持った瞬間からまるで別人のような動きだ」


 瞬く間に広がっていく穴をみてイェフェンは感嘆の息を漏らす。

 

 「ステータス」

ーーーーーーーーーーーー


名前:マルク

年齢:15歳


レベル:10  

最大体力:41

最大魔力:12 

力:40

魔力:11 

すばやさ:55

運:15


魔法:ファイア

   ウォーター

   ウィンド

スキル:農作業Lv.14 

    目利きLv.10

    硬化Lv.8

    体術Lv.7

    剣術Lv.3

ユニークスキル:「PV」


ーーーーーーーーーーーー

 

 まさか農作業スキルがこんなところでも役に立つなんて思いもしなかった。

 しかし改めてみると俺のステータスも随分と逞しくなってきた。


 転生した当初のステータスはただ生きるのすら困難なものだったが、「PV(閲覧数)」のお陰でここまで生き延び、強くなることができた。


 念を入れて、ここ最近で増えた「PV」を最大魔力と魔力に割り振る。

 魔石の力を借りるにしても、俺の最大魔力は限界に近づいていた。

 またドラゴンの巨体を爆発させるとなると相応の魔力も必要なはずだ。


 日が暮れ始めた頃、作業はほとんど同時に終了した。


「凄いです。こんなデカイ落とし穴を」


 ハムラは俺の作った落とし穴を覗き込んで驚愕する。

 深さはそこそこだが、ドラゴンの足を躓かせるだけの幅を作るのには多少骨が折れた。

 俺が農作業スキルを発動させて穴を掘る間、イェフェンは穴をカモフラージュするための小枝などをつなぎ合わせてくれた。


「擬似大砲もいい感じですね」


 俺が褒めるとハムラは照れて下を向く。


「車輪も動きませんが、再現してみました」


 木でできたその模型は遠くから見れば、大砲そのものであった。


「あとは誘き出すだけだな」

「僕が爆発でここまで陽動します」

「確認したがドラゴンは丘上に戻っている。私もマルクと共に弓で牽制しよう」

 

 全ての準備は整った。

 三度目の邂逅、今度こそドラゴンを倒す。


 しばらく歩き、夕暮れが迫る丘の上でドラゴンが悠々と寝そべる姿を視認すると、俺は開幕の狼煙を上げた。

 ドラゴンは爆発音に敏感に反応し、こちらを確認すると滑り落ちるかのように丘を駈ける。

 

 予想通り、翼に傷を負ったドラゴンはまだ飛べないようだ。

 俺とイェフェンは走り出し、落とし穴と擬似大砲が置いてある地点にまで急ぐ。

 

 ドラゴンの突進は脅威的なスピードだが、それでも飛翔よりかは断然に遅い。

 

「マルク。早いな」


 イェフェンは息を切らしながら俺の後を追う。

 トロールに追いかけられた時は暗闇で上手く走ることができなかったが、やはり俺はすばやい。

    

 時折爆発を起こしながら走ること数分、ドラゴンに追いつかれることなく落とし穴の地点にまで辿りついた。


「頼みましたハムラさん。危なくなったら逃げてくださいね」


 俺はハムラが構える擬似大砲の近くで爆発を起こすと、落とし穴の近くの木陰に隠れる。

 俺たちはそれぞれ持ち場についてアイコンタクトを交わす。


 木々を薙ぎ倒しながら土煙が着実に迫ってくる。

 森から開けた場に到達すると、ドラゴンの黄色の目の瞳孔が細くなる。

 標的である大砲の姿を認めたようだ。


 ドラゴンは自身に傷を負わせた兵器に向かって怒りを露わにするように、速度を加速させて突進する。

 ハムラは震えているが、擬似大砲の側で迫り来るドラゴンを待ち受けている。

 

 ドラゴンは大砲に向かってブレスしようと口を大きく開く。

 だがドラゴンの口からブレスは放たれることなく、その巨体は前方に向かって大きく転倒する。

 俺たちの作った落とし穴はしっかりと役割を果たした。 

 

 俺は転げたドラゴンに向かって駆ける。

 ドラゴンの胴にできた傷口の場所は確認済みだ。

 砲弾がめり込んでいる直径20cmほどの傷口からは真っ赤な血がダラダラと滴っている。 


 これがドラゴンを倒す最後のチャンスだ。

 ドラゴンは立ち上がろうとするがヤグーの弩とイェフェンの弓が顔に命中し、苦しそうに咆哮を上げる。


 地を揺らし、空気を震わす咆哮の中で俺は一心に走った。

 

 左手で強く魔石を握りしめ、右手でドラゴンの傷口に触れる。

 ドクドクと流れる血。まるで焼いた刃物に触れているかのような硬さと温かみ。

 深い傷口の奥、きらりと光った砲弾が、まるでドラゴンの瞳に見えた。 


「ファイア」


 最大の魔力で放ったファイアは魔石の力を借りて、巨大な爆発を引き起こす。

 俺の身体はその反動で吹っ飛ぶ。

 そこから先の記憶はない。


「おい。大丈夫か?」

「マルク。起きなさいマルク」

「倒しましたよ。ドラゴンを倒したんです」


 ぼやける視界にヤグー、イェフェン、ハムラの心配する表情が映る。

 俺はゆっくりと身体を持ち上げる。

 全身がべっとりと血だらけで、節々が痛むが大した怪我はなさそうだ。


「あの。ドラゴンは?」


「ほら。見てみろよ」


 ヤグーの指した先には霧散するドラゴンの肉片、そしてまるで生きているかのように瞳の開いたドラゴンの頭部が転がっていた。  


「頭だけでも150000ゴールド貰えますかね」

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