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スキル「PV」は閲覧数に応じて強くなる  作者: ジブン
第二章 2083~
16/23

第十六話 2911

「今のところは父上の城だがな」


 茶髪の男は右手で城壁を撫で、感慨深そうに城を見つめる。


「は?え?」


「まさか、俺を知らないのか?」


 茶髪の男はまるで不思議な生き物を発見したかのような目をする。


 押し黙る俺をしばらく見つめた男は耐えかねて言った。


「俺はフェルマン王国王子、テベス・メイリングだ」


 俺は唖然として、茶髪の王子を見つめる。


 なぜ一国の王子が、国王軍と共に訓練などしているのだ。


 いや、そんなことより無礼な働きをした俺は罰せられるのか。


 また絞首刑か。


 まとまらない頭をフル回転させているとテベス王子は高笑いし始めた。


「フハハ。本当に知らなかったようだな」


「こ、国王軍じゃ」


「父上に頼んで国王軍へと入隊させてもらったのだ。ブラックウッド大将には他の軍人と同じ扱いをするよう言っている。そうでなければ国民に示しがつかんからな」


「も、申し訳ありませんでした」


 俺は身体をこれでもかと折り込んで謝罪をした。


「なぜ謝る?」


「王子様とは知らずに無礼な働きをしました」


 頭を下げたままそう言うと再び王子は笑い始めた。


「確かに無礼ではあったが、今は同じ一軍人なのだ。謝るほどでない。面を上げろ」


 俺はゆっくりと顔をあげる。


「ところでお前は何歳だ?」


「15です」


「なら私の方が一つ上だな」


 俺より二回りも大きい王子は意外なことに16歳の若者であった。


「お前はなぜ剣を握る?」


 唐突にテベス王子は屈託の無い顔で問いかける。


 王子に向かってサルマン家を打倒するためだとは口が裂けても言えない。   


「家族を守るためです」


 俺の返答にテベス王子は噛み締めるかのように何度も頷いた。


「俺も同じだ。俺にとっては国民が家族だからな」


 格好つけたセリフに恥ずかしくなったのか、テベス王子は俺の言葉を待たずに続けて話し出した。


「そうだ。なぜお前はブラックウッドと仲が良い?俺とて奴から稽古を受けれんというのに」


 なるほど。この王子が俺を敵対視していた理由が分かった気がする。


 彼はブラックウッドから稽古を受ける俺に嫉妬していたのだ。


「色々と理由がありまして」


「馬車の時もそう言っていたな。なぜ言えない」


 ムッとした王子は俺に詰め寄る。


 俺が言葉を考えていると「分かった。俺と勝負しろ」と王子は勝手に話を進め始めた。


「馬車からお前がひったくりを捕まえるのを見ていた。なかなかやるようだ。だから俺と素手で勝負しろ。俺が勝てば話を聞かせてもらう」


「いえいえいえ。王子様と勝負するなんて滅相もありません」


「可能性は薄いが、もしお前が勝てばお前の剣の構えの欠点を教えてやろう」


 テベス王子は負けるわけがないといった様子で指をコキコキと鳴らし始めた。  

 

 王子と勝負するなんて恐ろしいが、提案は魅力的だ。

 しかも、多分俺は負けない。

 同世代のこの生意気な王子に対して急に敵対心が湧いてきた。


「分かりました」


「よし。参ったと言った方が負けだ。あと、顔への攻撃はなしだ。後に心配されるのも癪だからな」


 誰もいない夜の稽古場で俺と王子は向かい合った。


「行くぞ」


 王子は見た目の大きさとは裏腹に俊敏な動きで距離を詰めると足払いを仕掛けきた。


 一歩下がって足を避けると、王子はそのまま姿勢を低くしてタックルをしてきた。


 大言を吐くだけのことがあって、なかなかの動きだ。


 王子のタックルを膝で受けようとした時に、俺は止まった。


 そうだ。ガラ空きの顔への攻撃は無しだった。


 一瞬の躊躇いの内に王子は俺に馬乗りになった。


「参ったか?」


 確かにこの体格差で馬乗りになられては反撃の余地はない。


 しかし、そっちが顔面なしのルールを使ってくるならこっちも利用してやる。


 俺は顔面へのガードなしに両手で王子の腰を掴み、下半身だけをブリッジする形で王子を頭上の方へとのけぞらせた。


 バランスが崩れた隙にマウントを解いて立ち上がる。


「見かけによらず力があるな」 


 顔についた土を払った王子はどこか嬉しそうだった。


 低い姿勢で構えてジリジリと近寄る王子は長いリーチを生かして俺の腕を掴もうとする。


 だが俺は手を払うと瞬時に距離を詰めて、「硬化」した鉄拳でボディブローを叩き込む。


 ひったくりを一発でノックアウトさせたボディブローだったが、王子はクッと息を漏らしたあと、怯むことなく俺の腕を掴んだ。


 すると抵抗する間もなく俺の身体はフワッと浮き上がる。


 中学の体育館で経験したあの不思議な感覚。柔道だ。 


 掴まれた瞬間に重心を崩されて、気がつけば俺は背中からモロに地面に激突した。


 咄嗟に身体を「硬化」させたものの全身が痛く、頭がクラクラする。


 だが俺は再び馬乗りになろうとする王子に向かって仰向けのまま腰を捻って蹴りを放った。


 王子の膝に「硬化」した蹴りが刺さり、怯んだ隙に俺は立ち上がった。


 三度みたび、息を切らせて王子と向き合う。


 互いのダメージは同じぐらいだろう。


 もう手加減はできない。

 柔術を操る王子の実力は確かで、隙を見せればこちらがやられてしまう。


 王子は息を整えると一気に近寄り、再び腕を掴もうとする。


 受け流すために手を払おうとするが、王子は手のひらを拳に変えて、俺に胸へと豪快なパンチを繰り出す。


 分かっていた。


 俺は胸を「硬化」させてパンチを受けると、渾身の力をこめて王子の横腹を殴った。


 ボキっという骨の折れる音がした。


「うぅぅ。参った」


 片手で腹を押さえて四つん這いになる王子は降参した。


「大丈夫ですか?」


 心配して近づくと王子は四つん這いのまま手を上げて、俺を静止する。


「一人で立てる」


 苦しそうにテベス王子は立ち上がる。


「ふぅ。お前強いな。安心しろ。このケガの事は秘密にしておく」


 王子は俺の心配を見越してそう言うと、一人で壁伝いに歩き出した。

 

 一国の王子の肋を折ってしまった罪悪感や不安の内にたちすくんでいると王子は振り返らずに言った。


「お前に足りていないのは重心を掴むことだ。身体の重心ではなく剣の重心だ」


 王子の助言は酷く言葉足らずであったが、俺には言わんとすることがすぐに理解できた。


 俺は稽古用の剣を取り、構える。


 身体を水のようにイメージし、さざなみを起こさないように安定させる。

 

 そしてそのイメージを剣にまで拡張する。


 剣もまた身体の一部であり、血を通わせるかのようにその重心の位置を掴む。


 指先や手首だけを動かし、微調整を加える。

 

 ここだ。最もしっくりくる剣の位置と角度。


 腕をどう動かせば、剣がどう動くのかがハッキリと手に取るように分かる。


 俺はゆっくりと剣を持ち上げ、横に一振りをする。


 夜風が一筋に切れた気がした。


「ステータス」

ーーーーーーーーーーーー


名前:マルク

年齢:15歳


レベル:6  

最大体力:32

最大魔力:2 

力:25

魔力:2 

すばやさ:50

運:11


魔法:なし

スキル:農作業Lv.14 

    目利きLv.10

    硬化Lv.7

    体術Lv.6

    剣術Lv.1

ユニークスキル:「PV」


ーーーーーーーーーーーー


 俺は剣術スキルを発現させていた。



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