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スキル「PV」は閲覧数に応じて強くなる  作者: ジブン
第一章 0〜1922 〜旅立ち〜
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第一話 0



 前置きはなしで、俺は死んだ。


 理由は自殺だからあんまり回顧(かいこ)はしたくない。


 ともかく重要なのは、異世界にいるということだ。


 そして「PV」と言う謎のスキルを手に入れたということも。



 前置きはなしと言ったが、自分の頭を整理するためにも、少しだけ振り返ろう。


 俺はこの異世界へ転生する前は26歳の日本人男性であった。

 

 だが今は15歳の青年マルクである。


 マルクこと俺は、ここナザム村で両親の農作業を手伝いながら平和に暮らしている。

 

 と思っていたが、どうやらそれは違ったようだ。


 少なくともナザム村が属する地域は封建制(ほうけんせい)で、俺の親はいわゆる農奴(のうど)、その中でもかなり貧しい。

 その証左(しょうさ)として、ついさっき同世代の青年二人組にいきなり殴られた。

 

 村のほぼ中心で殴られたにも関わらず、周りの大人は無視を決め込むか、よくても憐憫(れんびん)の目で見るだけだった。


 周りの反応や服装などからして、あいつらは権力者か何かの息子なのだろう。


 そして俺は小さな村の中でも助けるに値しない、貧しい農奴の息子なのだ。


「マルク。大丈夫?」


 唯一、泥だらけの俺に手を差し伸べてくれたのは幼馴染のアリアだった。


 この子と共に過ごした記憶がないことが本当に悔やまれるほどの美少女で、しかも優しい。


 顔は少しは整っている方だと思うが、家も貧しく身体も貧弱なマルクに、ここまで優しくする理由は何なのだろう。


 もしかしてマルクが好きなのか。それとも幼馴染としてのお情けか。あるいは誰にでも優しいのか。


 答えは分からないが、ともかくアリアはここ二日で俺に生きる気力を与えてくれた数少ない希望の一つだ。


 もう一つの希望は両親だ。


 マルクの母マーサと父ガリアは、暮らしは貧しくとも心は豊かであった。


 彼らは朝から晩まで汗水垂らして働き、少しでも一人息子の俺に楽をさせようとしてくれた。


 自分たちの子供なのだから優しくするのは当たり前なのかもしれないが、俺の場合はそうではなかった。


 幼い頃から虐待を受けていた俺は、両親の愛というのを知らなかった。

 

 別に知りたいとも思っていなかった。


 だが、実際に無償の愛というものを受けると、たった二日でも人は変わる。


 俺は死んでから改めて「生きよう」と思っている。


 こんなに優しい両親を俺の勝手で悲しませる訳にはいかないのだ。


 一昨日、見慣れぬ布団から目を覚まし、いつもと違いすぎる光景にパニックになった俺を優しく(なだ)め、さらに素っ頓狂(すっとんきょう)な質問を繰り返しては、死なせてくれと懇願(こんがん)する俺に一日中付き合ってくれた両親。


 そんな両親の寛大すぎる理解のお陰で、俺は記憶喪失をしてしまったという事になっている。


 だから自分の名前や年齢、生きていく上で必要ないくつかの根本的な事柄について質問をしても、彼らは優しく教えてくれた。 


 言語が通じるという不思議はさておき、両親から教えられたこの異世界について、特筆すべき事柄は三つ。


 一つ目は俺がいた元の世界ほどこの異世界は、特に機械産業的な発達を遂げていないという事だ。

 とりあえず俺は近世あるいは近代ヨーロッパに近いという理解をしている。

 それは人々の顔立ちや服装、家屋の雰囲気から推測できるのだが、アリアが西欧絵画に出てくるような金髪美少女であることもその理由づけの一つである。

 

 二つ目は魔法が存在するという事だ。

 まだ詳しいことは全く分からないが、この異世界では元の世界においてファンタジーの産物であった魔法が活用されているという。

 無論、俺は魔法という響きに心を踊らせたが、残念ながら魔法を使えるのは魔法学校に通えるような一部の富裕層だけなのだという。

 

 三つ目はモンスターが存在するという事だ。

 まだ見たことはないが、スライムやゴブリンなど、聞き馴染みのあるモンスターもこの村の近くに存在しているらしい。

 そしてモンスターを倒すことを生業(なりわい)にする職業もあるようだ。

  

 ともかく両親の話を聞いて再認したのは、これが(ちまた)でいう異世界転生だということだ。


 マルクという青年の元の人格がどこへいってしまったのかは分からないが、俺は死んでから魔法やモンスターが存在するファンタジー系の異世界に転生したのである。

 

 だが実は、この三つ以外に両親から教えられなかったこの異世界で生きる上で極めて重要な事柄が存在する。

 

 それはステータスとスキルだ。


 なぜステータスとスキルが存在すると分かったかと言うと、先ほど出会い頭に俺を殴った青年たちの去り際、涙で(にじ)んだ視界の中で彼らのステータス・ボードらしきものが見えたこと、そして「体術スキルのレベルが上がったぜ」という声が聞こえてきたからだ。


 そして、今まさしく仕事を終えて帰ってきた母マーサと父ガリアにその事を質問したところだ。


 彼らは申し訳なさそうな顔で俺を見ている。

 

 その理由は簡単で、彼らがステータスとスキルの存在をあえて俺に伝えなかった理由もそこにある。


 俺のステータスは圧倒的に弱いのだ。


 目の前に現れた自身のステータス・ボードを確認する。


ーーーーーーーーーーーー


名前:マルク

年齢:15歳


レベル:3

最大体力:15

最大魔力:1

力:6

魔力:1

すばやさ:7

運:2


魔法:なし

スキル:農作業Lv.4

ユニークスキル:「PV」


ーーーーーーーーーーーー

 

 他の人のステータスを知らないが、俺は弱い。

 

 両親の反応や数値からしてそれだけは確信できる。 


「PV?」

「分からないわ。そもそもマルクにユニークスキルは無かったはず…」


 両親は顔を見合わせて困惑している。


 それはステータス・ボードに表示された「PV」というユニークスキルについてである。


 両親がここまで困惑しているのだから、聞いても分からないものなのだろう。


 もしかすると、転生した際に付与された特別なスキルなのかもしれない。


 俺は自身の弱さに愕然としながらも、光って見えるステータス・ボートの「PV」という文字を何となく期待まじりに押してみる。


 するとステータス・ボードの文章がみるみる内に変化していく。


ーーーーーーーーーーーー


ユニークスキル「PV」 


累計:0


ーーーーーーーーーーーー


「これって何かな?」


 俺は突然変化したステータス・ボードを指して両親に聞いた。


「ごめんね。それがあなたのステータスなの」

「大丈夫だ。大層なステータスなんて生きる上では必要ない」


「この累計ゼロってところなんだけど?」


「ん?何のこと?」

「累計?ゼロ?」


 どうやら変化した「PV」のボードは、俺にしか見えていないようだ。


今作品は読者との相互的な関係の中で作りたいと考えているので、お気軽にご意見、ご感想をお願いします。もちろんブックマーク登録や評価、閲覧をしていただくだけでも、「PV」として作品に影響を与えますので、連載中はお祭り感覚で参加していただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  面白かったです♪  PVで、どう変わって行くんだろうと展開が楽しそう。 [気になる点]  マルクの過去が気になりました。優しい両親との記憶が全て無くなっているのが悲しい気がします。 …
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