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named L  作者: はぜ道ほむら
第一章 再誕する竜のアシンメトリ
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始まり

初投稿です。宜しくお願い致します。

 


 生には死が必要です。

 適切な長さというのはあるものでして、それは望んでいる長さとは異なるのかもしれません。

 それでも、最後というのは必要です。

 永遠とは安定しているように見えてその実、とても不安定なものなのですから。



 ◆◇◆



 窓のない暗がりをランタンが照らす。ジメジメと湿気た木壁の部屋は壁に蔦が這っている。

 ランタンを持つのは緑髪の淑女だ。肌は奇妙なまでに白く、危険を感じるような独特の美しさの相貌を持っている。どこか人間離れした容姿を持つ彼女は、木製の横長な机に近づく。

 机には人が寝かされていた。緑髪の少女だ。傍に立つ淑女の娘だろうか、顔立ちは瓜二つであるが美しいというより可愛らしいと印象を受ける。

 ただ、この少女から違和感を感じることだろう。淑女の肌よりさらに白く、まるで生気を感じない。身じろぎもせず静かに、時が止まったかのように机に寝ている。身体には蔦が這い、机に固定されているように見える。


 淑女は横たわる少女の前に立ち、両手を重ねて詠唱する。両掌の上には、特徴的な縦裂きの紋様を持った虹色の球形宝石が乗っていた。

「ーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーー」

 人の公用語でない、古代言語での詠唱が密室に響く。高音域の肉声で紡がれた詠唱の反響が部屋中に満ちると、壁の外から魔力が集まり、螺旋回転しながら宝石に吸い込まれた。


「ーーーーーーーーー ーーーーーー ーー『ーーーーー』」

 淑女は詠唱を続ける。古代言語による詠唱の意味は不明だが、手に持つ宝石に変化が生じた。

 固い宝石はどろりと溶け、みるみるうちに形を失くす。液体となった宝石は一塊で掌に留まっているが、淑女が掌を傾けるとその指先から雫となって落ちていく。

 液化宝石の雫が落ちた先は、横たわる少女の顔であった。鼻と右目の間に落ちた液体は傾斜に従って流れ、右目の目頭に到達する。右目の隙間から液体が体内に侵入していく。


 ランタンに照らされた暗い部屋で、怪しげな魔術の詠唱が響く。儀式は未だ終わらない。


 世界のどこかで、一つの思惑が渦巻く。



 ◆◇◆



 日が暮れて未だ肌寒い初夏の山中、針葉樹林の合間からパチパチと焚火の音が聞こえる。灯された火が辺りを照らす。

 橙色の明かりに照らされて、大きめの岩に座る細い身体をローブで覆った女が見えた。ローブの端からはちらりと金属が見え、傍らには美しい鞘に収められた長剣が立て掛けられている。女は拳ほどの大きさの青白い水晶塊を手に持っている。

 水晶塊は一定の間隔で仄かに点滅発光していて、女にとって聞き馴染みのある友の声が聞こえてくる。


『あー、あー、聞こえるだろうか。久しぶりだな、エル。元気だったか?さて、用件は聖教からの仕事の依頼だ。落鳥樹という不気味な噂を持つ木を知っているか?凡そ樹高十メートル程にまで成長する広葉樹で、群生せず、枝を大きく広げる特徴をもつ植物だ。落鳥樹の周りでは、奇妙なことに度々野鳥の変死体が見つかることから、この木は災厄の先触れであるという言い伝えがある。通常群生しないはずの落鳥樹であるが、雪解けが終わった頃に、聖都エノンから馬車で二日の距離に落鳥樹が群生する大森林が見つかった』


『最初にこの森を見つけた下級冒険者によると、森は落鳥樹の枝によって日光が通らないために暗く、風に乗って腐臭が漂ってきたという。それと、暗くてよく見えなかったようだが大型の獣の影を目撃したそうだ。この下級冒険者は深入りせずに生還したが、この報告を受けて、ギルドから調査を依頼されて森に入った銀級冒険者は帰ってきていない。現在、聖都とギルドは共同で落鳥樹の森を危険区域に指定し、立ち入りを禁じている』


『話を戻そう。今回の聖教からの依頼は落鳥樹の森の調査及び脅威の排除だ。落鳥樹の大森林が発生した原因、落鳥樹の詳しい生態、その他脅威となりうる事象の調査を行う。また、その行程で脅威の排除を同時並行に行う。今回の依頼は私とエルの二人に出されたものだ。詳細な内容はこっちに戻ってから伝える。受ける受けないに関わらず返事は早めに頼むぞ』



 水晶越しに名を呼ばれた女は、握った水晶塊に魔力を流しながら返答を録音し、彼方に向かって送信した。返答は承諾だった。縁ある聖教の依頼ならば断る理由は無い。

『返事ありがとう、エル。元気そうで何よりだ。依頼を受けるでいいんだな。では、合流するために私の研究所へ来てくれ。依頼の詳細もそこで話そう。それと、あいつは別件で忙しいようだから、今回は参加しなさそうだ。ではな』



一章終了まで書き終えているので、そこまではノンストップで行きます(毎日投稿)


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