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ネオ・アース 賢帝伝説  作者: おっとっとむ
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決断。「Leap before you look・・・見る前に跳べ」

決断。「Leap before you look・・・見る前に跳べ」


 夕食後、ナターリヤとエーヴの日課となったのは、レミの入浴だった。ロッキングチェアに腰かけてお酒を噛めるようにして飲んでいたイグナートは、何かを決心したかのような、すっきりとした様子で、やおら立ち上がり、入浴中のレミを抱き上げ、高く支え上げた。レミはぶるっと震えて、ゆばりをイグナートの顔に浴びせた。目をしばつかせて、笑いながら大声で「おまえには、かなわんのぅ。」と大笑いした。一瞬、緊張した周囲に、笑い声が広がった。

 レミをナターリヤとエーヴにあずけ、顔をふいたイグナートは「ナターリヤとエーヴは、客間に来なさい。ほかの者たちは、近寄ってはならない。」と言い残して広間をでていった。


「エーヴよ。この子は、本当にクラシコフ11世の御子なのか。確たる証はあるのか。」

「はい」と答えて、すやすやと眠っているレミの右上腕部を露出し、懐から聖印祥具を取り出してかざすと、皇帝色である紫の聖印がくっきりと浮かび上がった。

「おぉぉ。」

「まぁぁ。」

「これをご覧ください。」と、持参していた護り刀の柄を指さした。クラシコフ11世の妃であったロマーヌ・ギルメットの名前が刻まれており、裏には、「愛するレミをお守りください」という祈文が見てとれた。

「この護り刀は、守護魔術の発動体となっています。ロマーヌ妃殿下が、命の残り火を注ぎ込んで、お造りになられたのです。」

「御子であることはしかと確認した。不肖イグナート、この命に代えても、この御子をお守り申し上げる。」

「わたくしも、聖慈母様に誓い、我が子以上に、慈しみ、健やかにお育て致します。」

しばらくの沈黙の後、


「わしの爺様の言葉に従ったまでよ。」

「『見る前に跳べ。』爺様の口癖に従ったまでよ。」

「おまえや、領民たちのこともいろいろ考えた。ロシオン(義弟)にも都の情勢を詳しくきいた。わしの力量で精一杯考えたが、これ以上じくじく考えても、前には進めん。」

「やっぱり、私のお前様ですね。」と、イグナートの手を強くにぎったナターリヤの顔には赤みがさしていた。


「では。具体的な話に移るとするか。」

「御子が優れた資質をおあらわせになられた暁には、我が領地をささげよう。そのために、御子を(おおやけ)には、当アモソフ家の世継ぎ養子として、御子の秘密を守るためにも、世間に公表しよう。名前は、家人に既に知れ渡っており、ありふれた名前のため、そのまま、レミとしてもよいかと。」

「わたくしも、そう考えていましたよ。」

「聡明で、この領地、この国に幸をもたらす、立派な男子になるよう、一家を挙げてはげみましょうぞ、おまえ様。」

「そうですわ、お前様。私の遠縁に子だくさんのマカレンコ家のからの養子とすればどうでしょう。一家は数年前に、マカレンコ家は帝国外に居を移していますし、帝国嫌いの一家ですから、知らせておけば悪いようにはしないはず。」

「じゃあ、皇帝宛ての、男爵家嫡子登録届をだすとするか。」

涙を目に満たしながらエーヴが、「亡きロマーヌ様もお喜びなされますし、ご安心もされましょう。レミ様、アモソフご一家の皆様を、きっと天国からご加護をくだされます。」と嗚咽(嗚咽)にたえながら絞り出すようにつぶやいた。

「エーヴ、おまえはどうするのですか、よければ・・・。」

「もし、お許しがいただけるのなら、この地でレミ様の侍女としてお仕えさせていただければ。」

「うれしいわ。私と歳も近いし、頼もしい相談相手、いえ、ちがうわ、友垣となっていただきたいわ。」

「身に余るお言葉・・・。」



 時に、帝国(クラシコフ)暦419年10月19日、クラシコフ11世の13男であるレミ・クラシコフは、アモソフ男爵家嫡子登録届にて、マカレンコ家から養子として、アモソフ男爵家嫡子としての名を、レミ・クラシコフとして登録され、翌520年3月日付けをもって、帝国内務省より承認された。


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