表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネオ・アース 賢帝伝説  作者: おっとっとむ
2/8

草原を駆ける金髪の少年

草原を駆ける金髪の少年


 北国の短い夏が過ぎ去り、和らいだ日差しの下、黄金色の草原に湿り気を含んだ優しい秋風が、遊び疲れて眠りこけている少年の金髪を緩やかになびかせていた。

 不意に少年の体がのけぞり、一瞬、光に包まれたが、やがて元に戻り、かすかに顔が赤みを帯び、数刻ののち少年は目覚めた。しばらく頭を垂れ、物思いに耽っていた。一緒に寝ていた三つ子の兄弟姉妹たちが、目をこすりながら、少年に「レミ、どうしたの。」と声をかけた。はっと我に返った少年は、突然に奇声をを挙げて、草原を金髪を振り乱しながら駆けずりまわり、やがて転倒し気を失った。


 この三歳を少し過ぎた幼子に何が起きたのか。霊魂が着床したのだ。霊魂衝突が頻発した結果、まれにみる霊魂が結合した複合霊魂が、それも三体というトリニティ・ソウル(Trinity Soul Implantation、三重霊魂)が着床し、彼は覚醒したのだ。目覚めたとき、その三つの個体の過去が、走馬灯のように脳内を駆け巡った。

 まず、核となった霊魂は、西暦2020年4月1日、巨大隕石衝突で即死した、中川文也のものであった。文也は、平成生まれの28歳の青年。何事も中途半端な半生った。高校、大学、会社も一流半。女性とは親しくなるも、押しが弱く親友にかっさらわれ、独身のまま。生きがいも見いだせず、無気力な生活をだらだらと過ごしつつも、悔悟の念に駆られつつ死を迎えた。

 次に、ドイツの理化学者の、勤勉実直だったアルミン・アドラー。十数年間、高校化学・物理の教師を務め、大学の研究助手に転職後、講師昇格直前に巨大隕石衝突、享年39歳。彼の精神の転移は、核となった中川文也の霊魂に比べ希薄であった。最後に、アメリカのボストン出身で、地元のマサチューセッツ工科大学中退のランディー・ウォーラ―。実父の病死による経済的苦境と自らも交友関係のもつれから人間不信に陥り、大学を中退し放浪の旅を続け、北西部のアイダホ州にて、幸いにも恋愛結婚の末に妻の実家の自転車・農機具販売業を継ぐ。妻の妊娠7カ月後に、巨大隕石衝突、享年33歳。彼の霊魂もまた核となった中川文也の霊魂に比べ希薄であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ