第五階層
「ビルさん、はぐれ魔物って何です?」
「あぁ、はぐれってのは例えば獲物を追いかけて本来の生活圏から飛び出してしまったり天敵に終われて戻れなくなったり…そんな本来いる筈もないエリアに取り残された魔物をそう言うんだ」
「なるほど」
はぐれ、か。単に方向音痴で彷徨ってる方が嬉しいな…後者だとその先に強い魔物がいるって事なんだし…
「ビル!下に降りる階段を見つけたぜ!」
ガイジさんが罠を解除して階段を発見した様だ
シーフがいないパーティーだと攻略に時間が掛かり元が取れない可能性も高くなる
故に高ランクのパーティーには必ず優秀なシーフが加わっているのだ
「へへ、先頭のパーティーのシーフは熟練じゃねぇな。隠し空間にこんなお宝があったぜ」
ガイジさんは階段の片隅でミスリル製の短剣を見つけた様だ
ミスリル製なら売ればソコソコの金になる
やはりシーフのポジションは迷宮探検には必要不可欠な存在だ
俺達は階段を下って現在最深到達階である五階層に足を踏み入れる
この階は通路ではなく広い空間に柱が何本も林立しているエリアと見受けられた
周囲を警戒しつつ前進していくと先頭で罠等を警戒していたガイジさんが手を上げた
「どうした?」
「…恐らく先頭を走ってたパーティーだ…」
ガイジさんの視線の先には撲殺され、踏み殺された人間の死体が散らばっていた
周りの気配に細心の注意を払いながらパーティーに近付くと生存者を確認した
「…ダメだな、全滅したっぽい」
全滅したパーティーはイケイケだったらしく剣士が2人、盾役が1人、タンクが1人の四人構成だったみたいだ
「待て、恐らくもう1人いる筈だ」
「何?」
「多分神官かヒーラーだな。この死体に回復魔法を使った形跡がたる」
ガイジさんは経験則からこのパーティーに足りないメンバーを言い当てた
「よし、遺品を回収したら周囲を捜索しよう」
「了解」
慈善事業じゃないから本来なら勝手に潰れたパーティーの後始末はスルーしても責められはしないのだが
パーティーシェードは死者に敬意を払い負傷者に治療を施すのがルールとなっていた
利益優先でPTSDを発症させるより偽善でもそういう行動を選択した方が後々の精神的負担に違いが出るらしい




