別れ、そして出会い
平日毎朝8時に更新。
「若君……!」
「このような時間に押し掛けて申し訳ない」
訪問者はランティウスだった。ルーディリートは、驚き立ちすくんでいるソニアの横に進み出る。
「お兄様、ようこそおいで下さいました。何か御用ですか?」
幼いながらも知っている限りの単語を組み立てて兄を迎える。その妹に、兄は微笑み返した。
「可愛い妹が何をしているのか、見に来たのだよ」
「若君はお食事、お済みになられましたか?」
ソニアが割って入る。
「いや、まだだが?」
「それじゃ、お兄様も一緒に食べましょう」
兄の手を取って部屋の中へ引っ張るルーディリート。ランティウスは抵抗せずに素直に部屋の中に入る。見ると既に卓上には食事が用意され、後は食器の数を増やすだけのようだ。彼は間が悪かった事に気付いたが、今更どうにもなるまい。
「これは、抜かったかな……?」
「若君、どうぞご遠慮なさらずに、お召し上がり下さいませ」
ソニアが目配せしていたこともあり、彼の分の食器も用意された。向かい合わせで座る兄妹は、兄の方がどこかぎこちない。ソニアたちは侍女の勤めで給仕に徹する。二人とも未成年であるから食前酒こそ出ないものの、それに代わる食欲を刺激する飲み物は出た。
「こうして卓を囲むのは初めてだな」
「お兄様となら、毎日でもいいのにな……」
妹の何気ない言葉に、ランティウスは言葉に詰まった。更には飲み込もうとしていたものも喉に詰まらせたようだ。慌てて水を含み、詰まりかけたものを喉の奥へ流し込んだ。
「うむ、出来れば毎日でもいいな」
「でしょ?」
ルーディリートの笑みを受けて、彼はますますぎこちなくなる。そのような彼の様子に、ソニアは笑いかけて、辛うじて押し止めた。幸せそうな表情で食事をする、ルーディリートに悲しい思いをさせたくなかったが故に。
食事を終えて、二人はそのまま話し込む。食器などは侍女たちが片付け、今は白湯が出されていた。
「そうか、母上からカードを授かったか」
「はい、これがそうです」
ルーディリートは兄の目の前にカードを示した。しかし彼は目もくれず、彼女の瑠璃色の瞳を見つめている。