別れ、そして出会い
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「ではルーディリートよ、まずはそのカードを心ゆくまで両手で混ぜ合わせなさい」
言われるままに彼女は両手で盆の上にカードを広げると、ゆっくりと混ぜ合わせた。そして再び一つの山に戻す。
「よろしい、それではカードの中央付近を抜き出し、一番上に重ねるのです」
指示通りにしてカードを盆の上に安置すると、侍女がそのままソフィアの手元に持って行った。ソフィアは錫杖を傍らに置くと、カードを手に取り、定められた手順に従って配置する。
一連の作業を終え、ソフィアはルーディリートの瞳を真直ぐに見つめて来た。
「ルーディリートよ、貴女の進むべき道を指し示しましょう」
彼女は一枚のカードを取り上げる。それには慈悲の心を示す教皇の絵が描かれていた。
「貴女の魂の本質は慈悲心、育命宮生まれの貴女に最もふさわしいカードです」
一枚目のカードを戻し、二枚目と三枚目を取り上げる。
「女帝と放浪者。平和主義の貴女ではありますが、方向性が定まらず、複数の物事に手を付けそうですわね」
ルーディリートには内心思い当たる節があったのか、視線をさまよわせた。その彼女には気を払わず、ソフィアは続くカードを見据え、眉根を寄せていた。
「試練と、幻影……」
呟いて、ソフィアは気を取り直すように次へ進んでいた。
「竜のカードは、超越を意味します。貴女には不屈の上昇志向があるようですね。とても喜ばしいことです」
微笑む。しかし、ソフィアの表情は再び強ばった。
「悪魔に、隠者……、死まで……!」
絶句。だがルーディリートには意味が分からない為、さほどの衝撃は与えていないようだ。ソフィアは取り繕うように説明を始めた。
「知性の方向性としては、隠されたる真実を探る能力があるようですね。ただその能力は発揮され難く、開発には時間が必要です。そして貴女の進むべきは、このカード」
ソフィアは最後の一枚を取り上げた。それには神々しさを身にまとう一人の女性が描かれている。
「女教皇が意味するのは、純粋性。そして光。貴女は光の巫女として修業なさい。名も月と関連がありますし、よろしいですわね」
月は地下族の通例で光を守護する者だ。
「ルーディリート、貴女にはこのカードを授けます。明日より暫くはカードの意味と、その扱いについて学びなさい」
つい今し方まで使われていたカードが、彼女の目の前に運ばれて来る。
「それでは巫女見習いとして、一週間後より修業を開始します。下がってよろしい」
ソフィアは錫杖で床を叩くと、サッと一振りしてルーディリートを指す。半ば気押されるようにして、彼女は退出した。