別れ、そして出会い
平日毎朝8時に更新。
それから暫く月日が経ち、ルーディリートもここでの生活に慣れてきた頃。
「ルーディリート様」
「なあに、ソニア?」
少女と言ってもよい年頃であるから、その受け答えはやや間延びしたような感じになる。
「今し方、ソフィア様よりお召しがありましたけれども、如何なさりますか?」
ソニアの奏上にルーディリートは首を傾げた。言葉の意味が理解出来ていない。
「分かり易く言って」
「これは失礼致しました。今、ソフィア様から、ソフィア様の部屋へ来るようにと言われたのですけれども、どうなさりますか?」
ソニアは言葉を選びながら言い直した。それでやっと意味が通じたのだろう、ルーディリートは少し考えてから短く返事する。
「行く」
「畏まりました。それでは支度を始めますので、お待ち下さいませ」
ソニアは控えへ一旦戻ると、主の為に服を選び出した。純白の正装を取り出して、金細工の髪飾りを脇に控えていた侍女に持たせる。踵の高い靴を持って彼女たちは主の許へ戻った。
そして着替え。
「はい、これで完了です」
笑みを含んだ語気のソニアは、目の前で可憐に着飾ったルーディリートを羨望と嫉妬の入り交じった視線で見つめた。ほんのりと紅を差したことが彼女の儚げな印象を吹き飛ばし、そこに生気溢れる花を咲かせている。
「それでは参りましょう」
ソニアたち侍女もそれぞれに佇まいを直して、主に見劣りせぬように気遣う。一行は粛々と廊下を進んだ。その彼女たちを、通りかかった男性たちが惚けたように見ている。大体は廊下の脇へ避け、道を開けてくれた。それに対して最後尾のソニアは笑みを見せて応える。主たるルーディリートの株は、これで上がったはずだ。
「ルーディリート、参りました」
「お入りなさい」
前を歩いて来た侍女の声に、部屋の中から返答がある。扉が開き、ルーディリートは後ろからソニアに押されるようにして中に入った。ついて来た侍女は部屋の外に残る。
「ようこそいらっしゃいましたわね」
部屋の中央で、これまた正装に着飾ったソフィアが微笑みを浮かべていた。彼女は飾りのついた冠を頭上に戴き、手には錫杖を握っている。純白の衣裳は女性にのみ許された特権だ。
「本日、呼びましたのは、貴女に巫女としての修業に入って頂く為です。適性判断を致しますから、ここへ来て頂いたのです」
ソフィアの口上が流れる間に、侍女たちはいそいそと歩き回って、ルーディリートの前に銀の盆を置いた。その上には一揃いのカードが載っている。