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儀礼

毎朝8時に更新。

「ユーナ」

「お呼びですか?」

 先程と同じ様に音もなく黒髪の女性が現れる。

「カミナーニャ様の葬儀の日取りは?」

「今宵は葬儀の準備と各地への発布があるかと。そして一般参列者の弔慰の後に、葬儀が執り行われると思いますので、恐らくは明後日でしょう」

「分かったわ。それではファルティマーナ様に伝えて頂戴。ルーディリートは、この三日の内に訪れます、と」

「畏まりました」

 ユーゼラートは一礼すると姿を消した。ルーディリートは椅子から立ち上がり、隣室に向かう。そこでソニアの邪魔に成り掛けていた自らの娘を呼び寄せた。

「アリーシャ、こちらにいらっしゃい。ソニアに任せておけば大丈夫ですからね」

「はーい」

 トテトテと小走りで彼女は母の許へ来る。娘の手を引いてルーディリートは部屋を横切った。

「ソニア、後は任せましたわよ。私は外出して来ますから」

「はい、お任せ下さいませ。戻り次第、出立出来るようにしておきます」

 再度頼まれて彼女は深く頷いた。侍女に全てを任せてルーディリートは外へ出た。降り注ぐ光は魔法に依るものだが、その明るさは地上と変わることはない。古の時代に地下へと身を隠してより幾星霜、一族は幾つかの部族に分かれて生活していた。彼女が身を寄せているのは、失われたと思われている時空の力を操る部族の許だ。そこは母親の里であるが故に、彼女もこの隠れ里に入れた。普段は結界に守られて人目につかないが、長が訪れる時には開かれる。彼女は、その結界を越える許可を長老に求めに出たのだ。

 長老の住居は村の中央にある。小高い丘の上に有るその家はこじんまりとしていて、一見しただけでは有力者の家には見えない。

「こんにちわ」

 ルーディリートは軽い挨拶をしてドアをノックした。

「お入りなさい」

 しっかりとした声が返って来たのを確認して、彼女はドアを開ける。

「お久しぶりです」

 ルーディリートは部屋の中にいる人物に頭を下げた。

「そう堅くなる必要はない、我々は兄弟のようなものだからな」

 家の中にいたのはこの村の長老だ。長命な一族の中で、彼ほど年齢不詳な者も珍しい。この村の最高齢であるはずなのに、その外見は少年と青年の間ぐらいなのだ。

「そこに掛けて。今、お茶を淹れてあげよう」

「そんな、気を遣って頂かなくても……」

「遠慮することはない、我々は兄弟のようなものだからな」

 同じ言葉を常に繰り返す。彼にとって村人はもとより、もしかするとファルティマーナさえも可愛い妹でしかないのだ。

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