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訪問

毎朝8時に更新。

「母様、誰かいるよ」

 家の玄関に誰かがやって来ている。その姿を逸早く見付けたのはアリーシャで、またその声に気付いて問題の人物は彼女たちの方へ向き直った。

「誰ですか?」

 ルーディリートは相手の正体を探ろうと、誰何していた。淡い青色のゆったりとした服に、銀色の刺繍がなされている。その刺繍は見る者が見れば魔法語であると判読できたはずだが、彼女は一目見ただけで判読できるほど魔法語には精通していない。彼女と同じぐらいの背丈の女性は、黒の長い髪を括りもせずに頭頂で左右に二つに分けて背中に流している。涼やかな目元は今はルーディリートたちを捉えているが、周囲への警戒も怠っているようには見えなかった。

「ルーディリート・レリアサーグ・アーフリアノールとお見受けする」

 フルネームで呼ばれて彼女は反射的に身を固くした。返事はしなくても、その一瞬の緊張を見逃すはずもなく、相手は口元に小さく笑みを浮かべる。

「どうやらそのようですな。ご安心下さい。私めは怪しい者ではありません。その証拠に、こちらを御覧下さい」

 相手は懐に手を入れて何やら取り出した。それを恭しく捧げるようにして、ルーディリートは手渡される。手渡した後、相手は退がって片膝をついた。呆気にとられていたルーディリートではあったが、手渡されたものに目を落とす。それは書状のようだった。巻紙の封を解き、内容を読む。読み進むにつれて彼女の表情は劇的に変化した。書状から目を上げて、目の前に佇む人物に驚きの視線を投げかける。

「ファルティマーナ様の……?」

「はい、使者として参上しました」

 片膝をついたままの姿勢で相手は答える。しかしルーディリートの驚きはその他にあるらしく、フラフラとおぼつかない足取りで相手に近づくと、その頬に手を触れた。

「どうして?」

 ルーディリートは知らず呟いていた。その問い掛けに対する答えは無論、望んでいない。ファルティマーナからの書状に対する純粋な疑問が、無意識に現れただけであった。

「母様」

 アリーシャに服を引っ張られて彼女は気を取り直した。改めて相手の姿を見詰め、それから書状の一部を読み上げる。

「この者、ユーゼラート・マナールテ・アーフリアノールを、貴女の指揮下に置く。指示者、ファルティマーナ・ヴェルロサリア・アーフリアノール」

 ユーゼラートは微動だにせずに、その言葉を聞いていた。

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