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月の華は蒼く咲く  作者: 斎木伯彦
戴冠式
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戴冠式

平日毎朝8時に更新。

「ソフィア様、これは黙っていて下さい。私は身を引いたのです。ですから、母の里へ行きます。そこでこの子を産んで、ひっそりと暮らします。ですから、許して下さい」

「ルーディリート、本気なのですね?」

「はい、私はあの人を愛しています。そしてあの人も私を愛してくれた。それだけで充分です。私にはそれだけで充分なのです」

「分かったわ。それでは貴女をわたくしの故郷へ送る手筈を整えましょう。あの子には、よく説明しておきます。貴女が昔、患った病の為に身を引いたと言うことにして」

「有難う御座います。そうして頂ければあの人も私を諦めてくれると思いますし……」

 ルーディリートの目尻に光るものが浮かんだ。

「では私は未だ病の床にあるようにして下さい。誰にも会えないことにして、その間に私は旅立ちます。それが最善の方策だと思います」

「そうね、それがよろしいですわね。それでは、貴女は病の床に臥せり、誰にも会えない。もちろん長であろうとも会うことはできませんわね」

 ファルティマーナは彼女の決意を聞いて納得していた。一族のことを思えば、一度決定したソフィアを覆すことは好ましくない。更に先見(さきみ)の巫女の告げる事柄は、優先事項だ。

「先見の巫女を失うのは大きな痛手ではありますけれど、この際です、目を瞑りましょう」

「ご迷惑を掛けます」

「いいのよ、貴女はわたくしの妹の子。それにわたくしの娘とも思っております。一度城の外の世界を知るのも大切でしょう。ですから、行ってらっしゃい」

「はい」

 ファルティマーナの厚意に甘えるのはこれが最後にしたかった。しかしルーディリートは、この先に待ち構える自己の運命を未だ見ていなかった。

次回更新は5月2日です。

姉妹作品もよろしければご一読下さい。

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