別れ、そして出会い
平日毎朝8時に更新。
城の通路を女性の集団が進む。その彼女たちを避けるように、通路の端には畏まり頭を垂れる男女が見受けられた。
集団の先頭を歩く女性は、純白の緩やかな衣裳をまとい、銀の冠を戴いている。彼女は右手に錫杖を、左手には幼い少女の手を握っていた。その後ろに、成人した女性が五人続く。
粛々と進む一同は、一様に口を閉ざしていた。
「着きましてよ」
重々しい扉の前で集団は立ち止まった。素早く後ろから二人の女性が進み出て扉を開ける。
部屋の中では十人ほどの女性たちが両脇に並び、一様に頭を下げていた。
「お帰りなさいませ」
「ソニア」
ソフィアの呼び掛けに応じて、一人の女性が進み出て来た。年の頃は二十歳前後、黒髪の女性だ。彼女はルーディリートの前に来ると、そこで畏まった。
「ソニア、今日からお前はこのルーディリートの世話をなさい。この子にはフォリーナのところからも三人、連れて来ましたから、お前はその子たちの指揮を執って、よく仕えるのですよ」
「畏まりました」
ソニアは深々と頭をさげた。
「それでは巫女部屋に案内なさい」
ソフィアの命令を受け、ソニアはルーディリートの手を取った。
「それでは失礼致します」
出がけにソニアは一旦、前の主に挨拶を済ませた。部屋を出て、通路を更に奥へと向かう。その二人の後ろへ、更に三人が同行した。
「こちらです」
ソニアが扉を開けたのは、さほど大きくない部屋だった。しかし、一人で住むには充分な広さはある。ソニアたちは扉の前に侍したまま動こうとはしない。幼いルーディリートは、どうして良いのか分からなかった。
「ルーディリート様より、入って頂きます」
ソニアが優しい口調で告げなければ、彼女たちはその場で立ち尽くしていたに違いなかった。ルーディリートが部屋に入ると、侍女たちも続けて入って来る。全員が入ると扉を閉じて、ルーディリートの前に四人が跪いた。
「本日より、ルーディリート様のお世話をさせて頂くことになりました、ソニアと申します。こちらのお三方は以前より仕えておりましたけれども、ソフィア様の命に依り、私が率先して貴女様のお世話をさせて頂きます」
ルーディリートは、よく分からないながらも頷いた。
「お荷物などは後で整頓して運び込みますから、今暫くはこちらでの生活に慣れることを重点的になさって下さい。それと、私共は普段、あちらで待機しておりますので、御用の際はつつがなく仰せ付け下さいませ」
部屋の奥には小さな出入口があり、その奥にも部屋があることを物語っている。ソニアの後ろに控えていた三人は立ち上がり、揃って頭を下げ、その出入口の向こうに姿を消した。
「……ソニア、私はこれから、どうすればいいの?」
「ルーディリート様がなさりたいようになさって下さいませ。ですが、そろそろ長の訪問のある頃ですわね。それなりの準備をしておきませんと……」
ソニアは立ち上がると、銀で出来た椅子を部屋の中央より、やや下がったところへ置く。それから奥に引っ込んでいた侍女たちが衣裳を持って現れた。ルーディリートが理解する前に、侍女たちは彼女を正装させて、銀の椅子に座らせる。