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開花

平日毎朝8時に更新。

「ならば、犯人を見付け出して……」

「いいえ、お兄様。いらない波風は立てないで欲しいのです。私は無事でしたのですから、一族の間に不和が生じるようなことはして欲しくありませんわ」

「しかし、これは長に対する……」

「私の言うこと、聞いてくれないの?」

 上目遣いで兄を見つめる。その少し拗ねたような視線を受けて、ランティウスは怯んでしまった。それで彼の負けである。何を言ってもこの妹には勝てないのだ。

「今回だけだからな。次に同じようなことが起これば、その時には犯人を意地でも見付け出す。私の大事な妹を傷つけるものは、許さん」

 熱い決意を胸にたぎらせて、ランティウスは拳を握り締めた。その拳にルーディリートはそっと両手を添える。

「お兄様、無理はなさらないでね。私は貴方が幸せになって下されば、それで幸せですから」

「ルー……」

 ランティウスは何かを言いかけて口をつぐんだ。喉元まで出かかった言葉を飲み込んだようだ。ルーディリートは微笑んで兄の顔を見つめている。

「お兄様、あまり長いこと居ますと、怪しまれますわよ。兄妹とは言え、結婚もできるのですから」

「私は……」

「戴冠式の日にでも、答えを出して下さればいいですわ。私は、その日にちゃんと出席しますから」

 意地悪っぽく微笑んで、彼女は兄を追い出すようにして部屋の外へ歩かせる。扉を後ろ手に閉めて、もたれかかりながら溜め息を一つ漏らした。

「お兄様、私は……」

「姫様、もうよろしいのですか?」

 ソニアが声をかけて来る。どうやら扉の開閉音で、ランティウスが帰ったのを察知したらしい。ルーディリートは慌てて表情を普段の様に作り替えた。

「ソニア、これからソフィア様のところへ参ります。準備をして頂戴」

「姫様、このような時間に……」

「使いの者を送って、それでダメなら行かないから。でも準備だけはするわよ」

「畏まりました」

 強情なところは誰に似たのか、彼女の強い意志に押されてソニアは折れた。衣裳棚を開いて、着用する服を選び出す。姫の正装を持ち出して来たソニアに、ルーディリートは満足気に頷いた。その衣裳を着終えた頃、使いに出した侍女が戻って来る。

「ソフィア様は、姫様のご訪問を、待ち望んでおられるご様子でした」

「ありがとう、よく分かったわ」

 頭上に髪飾りを着けて、唇にも薄く紅を差した彼女は部屋を出た。後ろをソニア、前を使いに出した侍女に挟まれて、彼女は粛々と廊下を進む。ソフィアの部屋の前で彼女たちは佇まいを直した。それからソニアが扉をノックする。

「ルーディリート、只今参上(つかまつ)りました」

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