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開花

平日毎朝8時に更新。

「お覚悟!」

 扉を開けた女性はソニアを突き飛ばした。そのままの勢いで黒づくめの女性は短剣を振りかざし、椅子に腰掛けるルーディリートに迫る。彼女の胸に深々と短剣が突き刺さった。しかし、そこで違和感に気付く。

「引っ掛かったわね……」

「しまった!」

「ソニア、扉を閉めて!」

 刺客は短剣を抜こうとするが、それは深く突き刺さっており、どうしても抜けない。ルーディリートは寝間着姿のまま、刺客に向けて挑んでゆく。刺客は彼女の飛び蹴りを左腕で受け止めた。

「誰に頼まれたの!」

「チッ……」

 刺客は舌打ちして抜けない短剣を諦めた。踵を返して逃げの体勢に移行する。扉の前にいたソニアが捕まえようと手を伸ばした。しかしその手をあっさりとすり抜けて、刺客は外へと逃がれる。廊下を走ってゆく音を追い掛けてルーディリートが部屋を出た時には、既に刺客の姿は見えなくなっていた。彼女は諦めて部屋に戻る。

「申し訳ありません。私が……」

「いいのよソニア。あれでは誰も捕まえられないわ。それよりも、これをどうにかしないとね」

 ルーディリートが指差したところには、未だに深々と短剣が突き刺さっている椅子があった。ソニアはもしもそこに本当にルーディリートが座っていたとしたらと考え、その結果に思い至り身震いする。

「姫様、ご無事で何よりです」

「ソニア、すぐにお兄様をお呼びして」

「はい、畏まりました」

 侍女の一人を使いに走らせる。自らはルーディリートから離れないつもりだ。彼を待つ間に、二人がかりで短剣を引き抜いた。

 暫くしてランティウスがやって来る。

「どうした、このような夜更けに?」

「ソニア、席を外していてもらえるかしら?」

「姫様!」

 ソニアは驚いたが、済まなそうな表情のルーディリートの顔を見て、渋々ながらもその命令に従った。後には兄妹だけが残る。

「お兄様、これを見て頂きたいのです」

 彼女は先程の短剣を差し出す。

「これが、どうかしたのか?」

 兄は不思議そうに、短剣と妹の顔を見比べた。

「もういいですわ。よく分かりましたから」

 ルーディリートは短剣をしまいながら、微笑んだ。

「ごめんなさい、少しでもお兄様を疑ったりして……」

「どうしたと言うのだ?」

「実は……」

 ルーディリートは先程のことを説明した。

「そのようなことが……」

 ランティウスは愕然とした。まさか自らが住む城の中に、そのような刺客が紛れているとは思いも寄らなかったのだ。

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