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月の華は蒼く咲く  作者: 斎木伯彦
別れ、そして出会い
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別れ、そして出会い

平日毎朝8時に更新。

「それで、修業はいつからだ?」

「一週間後から、光の巫女として、修業するようにって」

 ルーディリートはカードを片付けた。ランティウスは少しの間、何やら考えていた様子だったが、彼女の方へ向き直って微笑む。

「頑張るんだぞ。早く一人前になる必要はない。みんなの役に立てるような巫女になる必要もない。ただ、誰か特定の人だけでもいい、頼りになるような巫女にさえなってくれれば、この兄は嬉しいな」

「それじゃ、お兄様の為にだけ、巫女になるね」

「そういうことを言った訳では……」

「決めた、お兄様の巫女になる」

 彼女の言葉に、ランティウスは絶句した。ルーディリートは幼くて知らないのだが、その人の巫女になるとは、その人と結婚すると言う意味を含んでいる。ましてや長の正室は巫女か、それに準じる者とされているので、次期長の彼の巫女になるとは、そのままズバリと言えなくもない。

「ルー、そういうことは誰にも言ってはいけないよ」

「どうして?」

 あどけない瞳が理由を問い掛けて来る。しかし彼は答えを憚った。

「どうしてもだ。そういうことは母上の耳に入ると、あまり好ましい顔はしないからね」

「ふ~ん」

 彼女は釈然としなかったが、それでも微笑んだ。

「今日はありがとう、お兄様」

「いや、こちらこそ、食事をよばれて、失礼した」

「明日も来てね」

 妹の言葉に兄は残念そうな表情をする。

「そうしたいのはヤマヤマだが、そうすると眉を釣り上げる方が何人か居られるので、遠慮しよう。だが、時期を見てまた来よう。ここの食事は美味だからな」

「それは有難うございます」

 彼らの話をどこで聞いていたのか、ソニアが微笑みながら軽く頭を下げた。

「では、そろそろ就寝の時間ですので、誠に恐れながらもお引き取り願い致します」

「そうか、もうそのような時間か。これは長居してしまったな。失礼した」

 ランティウスは立ち上がり、出入り口へ向かう。その後ろに妹とソニアがついて来た。

「それではおやすみ、ルーディリート」

「おやすみなさい、お兄様。それと、約束忘れないでね」

「ああ、約束だな」

「うん」

 嬉しそうに微笑み頷いたルーディリートの約束とは、再び食卓を共にするという意味だったのだが、真剣な眼差しで確認を取ったランティウスの約束は、彼女のそれとは違っていたようだ。しかしその相違には二人とも気が付いていない。廊下を歩み去る兄の背を見送って、ルーディリートは傍らに控えるソニアを見上げた。

「ソニア、お兄様の本当の御用って何だったと思う?」

「さあ、私には分かり兼ねます」

「そう……」

 薄々とは言え、彼女にも兄の目的は分かっていたようだ。その事を感じ取ってソニアは心中複雑になっていた。ルーディリートにはどのような未来が待っているのかが、侍女たちの噂話などから大筋で見当がつくからだ。けれど、そのようなことだけで主に意見を申すことは出来ない。悩む彼女に、主が声をかけた。

「ソニアももう寝ていいよ。私、今夜はいい夢が見れそうだから」

「そうですか、それではお休みなさいませ」

 部屋の明かりを消して、彼女たちはそれぞれの寝台へと向かった。

次回更新は3月2日です。

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