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最悪だ。
最低最悪、これ以上ないくらいに腹が立つ。
目の前で起こっている出来事にも、それを見ているだけの自分にも。
二度と利用されたくないと思ったはずなのに。二度とあいつらに関わらないと決めたのに。
たとえ、それでこの世界が滅んでも「自業自得だざまあ見ろ」そう言って笑ってやるつもりだったのに。
最悪だと心の底から思いながら、仕方ないあの子は別だなんて、死んでほしくないなんて強く思う時点で私の負けなのだろう。
今からする事が、あいつらを助ける事になっても。あの子が死ぬよりはましだろう。
だから心の底から願おう、あの子が幸せになってくれるように。
心の底から祈ろう大嫌いなこの世界の神に、あいつらが不幸になりますようにと。
世界が滅びから逃れた後に希望を託して、異端者<イレギュラー>の名にかけて運命を変えてあげる。
それじゃあ一歩踏み出して、笑って一言「さようなら」
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魔王が倒された。
異界から来た聖女と、剣に選ばれた勇者。魔王討伐を目指し各国から集った実力者たち。
一度は、全滅まで追い込まれながらも世界を救った彼らは英雄とされ記録に名を刻んだ。
後に、幾人かの英雄の懇願により一人の冒険者の名が加えられた。
その者の名は”イレーナ・ジーリス”
後に陰の功労者と記録されながらも、何を成しどのような人物だったのかは記されていない。