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プロローグ

とにかくのんびり系を書きたくて書きたくて・・・・と思っていたら出来上がってしまった、そんな作品です。



 ヨルハ・ヴァルハラ、五百歳(推定)

 

 職業、ヴァルハラ・ダンジョン・第百層の主



 今日も今日とて私は、このダンジョンの主としての務めを果たさなくちゃいけない。でも実際、どんな仕事をしてるのかと聞かれると、正直困ってしまう。

 だって私はダンジョンに棲まうモンスター。来る日も来る日もやってくる冒険者さんたちを木っ端微塵に・・・・じゃなくて追い返さないといけないんだから。あまり人聞きのいい仕事じゃないというのは、私がよくわかっている。


 ズゥゥゥゥゥン・・・・ドガっっっっ



「今日もみんな、頑張ってるなぁ・・・・」



 上からは、今まさに戦っている爆音が聞こえてくる。でもその音はけっこう遠くから聞こえているから、五十層あたりのミノタウロスたちが暴れてるんだろう。

 半分牛で半分大男って、いかにも悪者って感じのビジュアルだけどあの子たちも結構いい奴なんだよなぁ。あんまり犠牲が出ないといいけど。



 ふあぁぁ、と大きな欠伸をして起き上がる。と、そこには見渡す限りの大草原が広がっていた。カラッと晴れた青い空、心地よい風。こんないい天気じゃ、また居眠りしちゃおっかな、なんて思ってしまう。


「そういえば、昨日ダンジョンの背景変えたんだっけな。前の火山口みたいな風景もよかったけどちょっと暑すぎたし。」


 もう一度ゴロン、と草原に寝転ぶ。そして近くに転がっていた本を引き寄せ、ページをめくる。まあこの本を読むのも、すでに100回目ぐらいなんだけどね。もう全部暗記しちゃってるし。



「はぁぁぁぁ・・・・。どっかの冒険者さんが新しい本落としってってくれないかなぁ。でもモンスターってちょっと乱暴だし、どうせまた破けるんだろうな・・・。」

 


 パチン



 気分転換のため、指を鳴らして風景を変えてみる。さっきまでの草原は全て消え去り、今度は海に浮かぶ島の上に寝転がっていた。というか、海も草原も火山も今まで見たことないから、全部本に書いてたことを想像して作った魔法なんだけど。


 でもここじゃそれ以外やることないんだもん。本読むか、風景変えて遊ぶか、他の階層のみんな召喚するぐらいしかないんだもん。


 そりゃ私だって、「よく来たな冒険者どもめ、ゲヘヘヘヘ・・・・だがここで貴様らの命も終わりだ!!」みたいなこと言ってみたいよ?とんでもない闇魔法使って人間を困らせてみたいし、すんごい悪者顔して剣振り回したりしたいよ?

 いつか冒険者が最下層ここまでたどり着いた時のために、登場シーン二千通りぐらい考えてるし、緊迫した戦い演出するためにプロットも練ってあるし、なんなら戦わなくても外の話聞かせてくれるだけでいいし・・・・・




 なのに・・・・なのにぃぃぃぃぃぃ・・・・・


「全然来てくれないじゃんか!五百年待ったけど、だぁぁぁ・・・っっっっれも来ないよ?!このままじゃ私死んじゃうよ!暇すぎて暇すぎて死んじゃうよォォォォォォ!」


 だが私の渾身の叫びも虚しく、壁に反響しただけだった。なにこれ、余計に寂しいんですけど。もうやだこの生活、もうやめたい。家出したい。



「っっっっは!!そうか!家出すればいいんだ!ダンジョン出て旅にでも出ればいいんだ!『旅に出ます。探さないでください。』とか書いて行くのがお決まりだって、昔読んだ本に書いてあった気がする!」


 でも流石に一人で出るのはまずいかな。私には本の知識しかないし、外なんて出たことない。モンスター達連れてくのは、もっとまずい気がするし。



「どこかに人間界のこと知ってて、最下層たどり着くぐらいまで強くて、モンスターにあんまり恨み持ってなくて、外を案内してくれるような優しい人、いないかなぁ・・・・・」



 と、その時だった。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!????」




 なんだなんだ?空から女の子の叫び声が聞こえるけど。・・・・あれ?なんだかあの子、どんどんこっちに近づいて来てない?




 どしィィィィィィん!!!

「ぐえッッッッッ!!?」


 

 いてててててて・・・・・。全く、力魔法使って衝撃和らげたからよかったけど、私じゃなきゃ死んでたよ?誰この子?




 見上げると、そこには目をウルウルさせた十五、六歳ぐらいの女の子が私の上に乗っかていた。陶器みたいな白い肌に綺麗な二重まぶた。サラサラとした茶色の短髪。そこからピョンっと飛び出しているフワフワの耳を見る限り、獣人とかいう種族なんじゃないだろうか。あとこの子、むちゃくちゃ胸が・・・なんというかその・・・・豊富なんだけど。そのせいで絶対重量かなり増されてるでしょ、息ができない。



「あうううう・・・・すいません・・・・。すぐどきますね・・・・。」

 うんしょ、と言って女の子が起き上がる。

「私さっきまで50階層にいたんですけど、逃げ回ってたらなんだか縦穴に落ちちゃったみたいで・・・・。ここどこかわかります?」

「第百階層、ダンジョンの一番下だよ。」

「そうですか一番下ですか・・・・ってえええ?!一番下?ご冗談ですよね?だってここ、すごい南国リゾート風じゃないですか?!」

「それはさっき私が変えたからね。ちなみにあなたは、ここにたどり着いた初めての冒険者ってことになるんだけど・・・・どうする?どのパターンの戦い方がいい?」


 と、一応オプション付きで提案してみたものの、女の子は口をパクパクさせて固まっている。

「え、えと・・・・ここはヴァルハラ・ダンジョンの最下層で間違い無いんですよね?」

「うん。」

「じゃあ、ここの階層主は・・・・?」

「私だよ。」

「・・・・えっ?!でも、見た目全然モンスターって感じには見えないですけど・・・。」

「あんまり怖い見た目だと、せっかくの冒険者さんが逃げちゃうでしょ?だから十歳の金髪少女っていうコンセプトで五百年間やってきてるんだ。」

「・・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 なんだなんだ、次はどうしたの。女の子がすごい勢いで離れて行くんですけど。もしかして『金髪幼女』はウケがいいていう情報は間違ってたの?


「え、えと・・・・大丈夫?」

「すいませんすいません・・・・・見逃してくださいぃぃぃ・・・・。」


 一体なにがだろう。私はまだ何もした覚えはない。むしろ冒険者ならこっちに向かって剣振り回すぐらいの度胸が必要なんじゃないだろうか。


「私、ホントはここに来たくて来たわけじゃないんです。ご主人様に身代わり用として連れてこられただけで、戦う気はないんです。お願いしますゥゥぅ・・・後生ですから・・・。」


 なるほどそういうことね。確かに、女の子の首元に首輪みたいなのがついてるな。無理やり外すと火炎魔法が発動する仕組みになってる。世に聞く奴隷というやつか。



「なんだぁ・・・・私を倒すためにここに来たんじゃないんだね。」

「そ、そうなんです!」

「じゃああなたは外からやって来て、モンスター倒してやる!この野郎!みたいなことも考えてなくて、たまたま最下層来ちゃっただけで・・・・・ん?」



 ちょっと待て。この言葉さっきも聞いた、っていうかさっき私が言った言葉と同じ?

だとしたら・・・・・これってスゴイことなんじゃないの?!


 ゴホン・・・・ 気を取り直して、これ見よがしに咳払いをしてみる。

「・・・・いいでしょう。特別にあなたを見逃すことにします。」

「ほ、ホントですか?!ありがとうございます!」

「ただし・・・・・条件があるんだけどね。」

「・・・・・へ?」




 これは多分、最初で最後のチャンスだ。こんな偶然、五百年に一度起きるか起きないかぐらいの可能性だ。今まできっと、私のことを神様が見ててくれたんだろうな。モンスターに肩入れする神様なんて聞いたことないけど。

 バンッと胸を叩き、大声で叫ぶ。



「この私を・・・・人間世界に連れて行って、案内しなさい!!!それが条件よ!!」

「・・・・・・え?」




 ええええええええええええええええええええええええええええ???!!!!!





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