4話
トーク画面をひとつ戻し蒼葉のトーク画面を開いて、私もだよと返信する。
「蒼葉も彼女いるのかな…画像は付き合ってるようには見えないけど…猫…」
ため息をついて天井を見上げた。
男の子と縁がない私に比べて、りおは高校生の時ずっと周りの男の子に話しかけられていた。大学生に入ってお化粧や服に気を使うようになったりおはさらに可愛くなった。お互いやることはあるから毎日遊べないけど、たまに会った時のりおは前回よりも可愛くなっている。なんだかデートで彼氏が彼女と会って、可愛いねって言うのと同じ感覚のように思えてきた。
一方短期大学に入っても私の私服は変わらず着回して少し古い服を着て、化粧は全くせず何にも気を使っていない。別にほぼ女子しか関わらないし、男子となんて話す機会も無かったからオシャレしたりする必要は無いと思っていた。特別に彼氏が欲しいと思ったこともないが、りおに彼氏が出来たと知るとそろそろ私も焦りが出始める。
「彼氏欲しい、かも…」
呟いた瞬間頭をブンブンと横に振る。ありえない。私に彼氏ができる?おかしい。男の子の友達だってできたことないのに。出会いの場に行ったりオシャレや化粧のなんの努力もしない私に彼氏ができるなんて、ありえない。いや、その前に。
「好きって、なんだ…?」
芸能人には疎いからこの人かっこいいとか可愛いと思ったことはあるけどそれだけで、好きとはならなかった。高校の時、先生にもっと周りの人間に興味を持ちなさいと注意を受ける程に友達とかどうでもよかった。今ではほんとに周りの人間に興味を持っていろんな人と話せばよかったって後悔している。
そんな私に好きって言う気持ちを知る時が来るのか。この食べ物甘くて美味しくて好きなんだよね、っていう好きとは違うのはなんかわかる。でも相手のことを好きになって、相互の気持ちが合致したらお付き合いを開始する、はず。気持ちを確かめ合うのが告白…。
前にどこかで読んだ恋愛漫画のストーリーを思い出しながら考える。でも友達や憧れの“好き”ではない、ちゃんと一緒にいたいっていう“好き”っていう気持ちがあってこその恋人関係、なんだと思う。
「恋愛経験したことない人が何考えてるんだ」
ごめんねお母さん、お父さん。私は一生彼氏もできず結婚もできないみたい。孫の顔をみせてあげられなくてごめんね。リビングでお茶を飲んでいるであろう父母に心で謝罪をしてスマホの蒼葉とのトーク画面を見る。
『そうか! そういえば昨日声かけずに腕掴んだけど、痛くなかった?』
あーそんなこともあったっけな、と他人事のように考えて自分の右腕をさする。痛くなかった。ただ女の子に掴まれるより、蒼葉の方が掴まれてる手の範囲が広かった、とは思う。その思いを素直に返信した。
女子に比べて男子の方が成長するにつれ体格が大きくなっていく。今まで女子としか触れ合ってこなかったから、男の子に触れられるなんてこと、今考えるととんでもない経験をしたな…。