3話
「んん…」
ふと目を覚ます。ガバッと飛び起きた。
「学校! 上着着たまま昨日寝たの!? 髪の毛ボサボサ! 今何時!? うっわ携帯の電源切れてるし…」
朝からパニックに陥りながらも充電コードの先端をスマホに挿し、目覚まし時計をぐちゃぐちゃのベッド上から探し出して時刻を確認する。
「10時…あ、今日土曜日か…」
どろどろとスライムのようにベッドによじ登っては横になる。そして昨日のことを思い出す。
「吉岡 蒼葉…あ、そういえばりおの言ってた、蒼葉良かったね〜はどんな意味だったんだろ」
徐々に冷静を取り戻してコードに繋がれたスマホに手を伸ばして電源をつけるとメッセージが数件届いていた。蒼葉からは気づいたら寝ちゃってた、りおからはネズミの応援するようなスタンプが返ってきていた。
「可愛くな…」
『ねぇりお、昨日の蒼葉良かったね〜ってどういう意味? なんで蒼葉にメリットがあるのさ』
『あー、それは忘れて(汗)』
『気になる』
「忘れるなんて無理だよ…」
蒼葉が私に会えて良かったって、なんでりおがそんなことを言えるんだろう。私と蒼葉は小中同じ学校だったけど、りおは高校から仲良くなった友達。
確かにりおには高校の時同名の蒼葉ちゃんがいたから、小中学校の時に蒼葉くんって人がいたんだよって言った覚えがある。
もしかしてりおは蒼葉ちゃんだと勘違いしてる…!?
そしてなんで昨日は蒼葉の名前出なかったのに、りおに蒼葉って人が居たことを言えたんだ…?卒業してすぐだったからか…?
携帯とにらめっこしながらそんなことを考えていたらりおから返信が来ていた。
『蒼葉、高1の時にゆきの連絡先欲しいって言ってたんだよ!もう4年前?だから言わなくていいと思ってたんだけど言っちゃったから忘れてって言ったんだけど。 蒼葉どうだった? 可愛くなってた? 元からすごい可愛いけどさ〜!』
「やっぱり…」
何だかこれで良かったような良くないような。
前に話した蒼葉くんの方だよ、って言おうかと思ったけどなんだか寝起きということもあり疲れてしまった。話を変えようと、りおからのメッセージを全無視した話題を振ってみる。
『今日誰かと遊ぶの?』
『彼氏となう!』
「え!? 即返信きてからのりお、彼氏いたの!?」
アイコンもラブ充を匂わすものじゃないし、告白されたとも言ってこなかったし、彼氏いたことは全然知らなかった。昨日だってご飯食べてる間もそんな話一切なかった。むしろ男って何考えてるかわかんないから彼氏いらないまで発言していたのに。とんだ裏切り者。
『昨日ご飯中彼氏いらないって言ってたのに。しかも返信めちゃめちゃ早いじゃん。どういうこと?』
『今彼氏トイレ行ってて暇だからさ〜。昨日まで喧嘩してたからそう言っちゃったの。でも、ゆきとばいばいしてから通話で話し合ったら仲直りして。むしろ好きが増した!あ、彼氏帰ってきたからごめんね!』
「何がごめんねだよ!!」
りおに彼氏がいたとは。私は20歳=彼氏いない歴なのに。なんか寂しい。りおも別世界の人間だった。そりゃりおも可愛いし、大学に入ってサークル活動でいい人見つけたんだろうなぁ。
「応援してあげたいのに複雑…」