第53混ぜ ミーティング
お待たせしました~
よろしくお願いします!٩(๑'﹏')و
オムライス作りを始めてから三十分。デザートを含め、ようやく全員分が完成した。
最初の一個目が作り上がった時点で、何かがおかしいと気付いたマユエルだったが特に何も言わなかったのでそのままオムライスを作り続けた。
最近はお米に対する違和感も無くなったメンバー達である。
「じゃあ、各々好きな所で食べ始めてくれ。いただきます」
アトリエに全員分の椅子は無いし、机も無い。だから何人かは床に座って食べるか立食スタイル。キャサリンさんが綺麗に掃除してくれているから、安心して俺は座って食べる。
「最近、普通の飯が物足りない」
「た、たしかに……魔法師団で出る大味のご飯だと少し……」
ミルフさんに始まり、フランが続く普段の食事についての感想。何だか悪い気はしない。
今日作ったオムライスだってふわとろだ。シンプルなケチャップとデミグラスソースの二種類を用意して、好きな方を選んで貰っている。
丁寧に作る……もとい掻き混ぜる事を意識しているし、褒められると素直に嬉しいものがある。
「ミルフさんって、焼くしか出来ませんもんね。フランはそもそも料理しないですし」
「冒険者の飯は基本が焼くなんだから仕方ないだろ」
「料理は、出来る人がすれば良いじゃない」
冒険者らしい開き直りと貴族らしい開き直りだった。
ミルフさんに至っては本当に焼くだけであって、炒めたりしない点が今後の成長を望めない部分だ。
フランはそれ以前の話だが……。
ガツガツ食べるミルフさんやビスコはさっそくデザートのチーズタルトを食べ始め、少し遅れて他のメンバーもデザートに手を伸ばした。
食事は二十分足らずで全員が食べ終わり、そのままの流れでミーティングの時間へと入っていった。
「はい、まずは報告から」
「私とミルフは赤ランクのままネ! この前、ミルフのお尻に触れた冒険者が全治一ヶ月の怪我をしてましタ! 終わリ!!」
「ミルフさん……」
「下衆な男が悪い。正当防衛かつ、私に負ける弱さを省みるべきだな」
……反省する気はないらしい。
まぁ、たしかに今の件でミルフさんが悪いとは俺も思わないが、下手に恨みを買うと面倒だし……少しくらいは自重を覚えて欲しい感じはある。
だが、順調に冒険者としての経験を積んでいる部分は良いな。
「次は私ね! お祭りの警備とかその訓練とかばかりよ。各国からお偉いさんとかも来るし、いろんな所から人も集まるからね。正直……とても面倒だわ!」
「それでよく、大会にエントリーさせて貰えたな?」
「そこはほら……頑張ったのよ!」
おそらく俺以外のみんなの頭にも、上司に駄々をこねるフランの姿が浮かんだことだろう。
たしかにもう既に街の宿屋は忙しそうにしている。いろんな場所から人が集まるから危険もあれば、何かしらの出会いとかもあるかもしれない。
「じゃあ、最後は学校組から……マユエルは順調に錬金術師として成長してると言える。と言うか、順調過ぎるくらいだな」
「うにゅ~、頑張ってるのよ~」
「でも、なんか……たまに従者みたいな部分がマユエル様から見えるんだけど。真似しちゃいけない部分とか、言葉とか悪影響を及ぼしてるんだけど!」
「そんな事ねーだろ?」
「ねーだろなのよ~?」
「ほらぁ!! よく、思い出してみれば、マユエル様の晩御飯の注文も変だったもん!」
騒がしフランだが、マユエルはちゃんと錬金術師としても精霊術師としても成長しているのには違いない。
二つの力を合わせて、オリジナルの小物とかを作ったりしているみたいだし……下手すると俺やシララさんなら越えていくかもしれない。
「ビスコの方は?」
「えぇ、普段の勤めが神に認められたのか、光魔法や浄化魔法の威力が上がっていますね」
「ほぉ~、そんな仕組みで……どうりで光魔法が使える人のほとんどが修道師になる訳ですね」
いつも女子生徒とイチャイチャしているだけかと思っていたが、ちゃんとビスコも成長をしていたらしい。
久しく鬼の手も見てないし、機会があれば死霊クエストに一緒に同行して欲しいと思っている。エレノアは嫌がるし、剣がメイン武器のミルフさんだと相性は悪いし、マユエルは聖水をまだ作れないからな。
「では、報告はそんな感じで……次はミーティングですね」
「お祭りのことぉ~? 私、大会以外は警備なんですけど!」
「お祭りは明後日からだから明日は自由時間になるけど……一応の予定を聞いとこうってね」
「私はミルフと買い物行ってくるヨ!」
「サリュに王都のお菓子を買ってきて欲しいと頼まれたからな」
たまには女の子らしい事をして、リフレッシュ休暇というのも必要な事だろうな。
殺伐とした空気の中で生活しているんだし、たまには羽を伸ばして来るのも良いだろう……後でキャサリンさんから軍資金を渡しておいて貰うかな。
「先生、釜使って良い?」
「もちろん。井戸の水はキャロルさんかキャサリンさんに汲んで貰うといい」
「はいなのよ~」
マユエルは明後日の為に、このアトリエで錬金しておくらしい。
ちょっとだけミルフさんが残念そうな顔をしているが、今は各々すべき事を優先という事で……。
「じゃあ、暇なのはビスコと俺だけですね」
「なら、私達も街へ出掛けますか? 催し物も屋台も沢山あるみたいですし」
「そう……ですね。久し振りに男だけで街に繰り出しましょうか!」
俺とビスコの予定も決まった。
でも、まだこれでミーティングは終わりじゃない。ここから、話題はダンジョンへと移っていく。
ダンジョンについての話となると、やはり冒険者として活動している二人の方が詳しい。
冒険者ギルドへはめっきり行かなくなったし、魔法ギルドは年間のアトリエを経営する為の税金的なのを支払いに行く時しか行かなくなった。
つまり、俺が得る情報はすれ違い様に聞こえてくる冒険者の会話程度のレベルだ。
「朗報なのか悲報なのか……ダンジョンを攻略したという話は届いていないな。まぁ、この情報も最新という訳ではないが」
「あとネ! 噂だと『ユウシャショウカンノギシキ』? ってのを宗教の国がするんだっテ!」
(ユウシャショウカンノギシキ? ……勇者召喚の儀式か!?)
エレノアの言う宗教の国というのは、おそらく中立国である宗教国家『ラサミュベス』の事だろう。
数年で進展があまりみられない事に業を煮やしたのか、師匠が煽りに煽りまくったりしたのかもしれない。
(勇者召喚……良くないなぁ。良くない臭いがプンプンとしてくる)
この世界の神がそれを許可するのかという疑念。
そして、師匠が神側に居ることにより召喚元となる世界がほぼ決まっている予感。
良くも悪くも、また少し世界が荒れるだろうという懸念。
「……とりあえず分かった。良い情報だ、エレノア」
「ほんト? クルス嬉しイ?」
「あぁ、さすがエレノアだな」
「やったァー、クルスに褒められたヨ!」
勇者召喚……勇者召喚かぁ……。
たしか、前に何かの書物で読んだ気がする。その話では勇者とお姫様の物語だったけど、実に物語調で……それはそれで楽しめたけど、参考になるかは微妙なところだな。
「先生? 勇者召喚ってなんなのよ?」
「うーん。前例を知らないからなぁ~。逆に聞いて悪いけど、マユエルは勇者って知ってるか?」
「知ってるのよ。凄い強くて優しい英雄っていう、胡散臭い人なのよ~」
「正解だ」
「ちょっと待ちなさいよっ!! 従者、あんたマユエル様に間違った事を教えてるんじゃないでしょうね!?」
また、会話の流れを断ち切るフラン。
ただマユエルには危機管理能力を鍛える一環で、優しいだけの人間には気を付けろと教えただけである。
その上、強さも兼ね備えていたら正義の名の下に自分を押し付けるから気を付けなさい、と言い聞かせただけだ。
「変なことは言ってない。優しくて強い奴とか胡散臭いだろ?」
「何でよっ!?」
「何でって言われてもなぁ……こればっかりは感覚的な問題だし」
「偏見じゃないのよ!!」
たしかに偏見かもしれない。
ただ、正義の名の下で相手の事情なんてお構い無しに、敵と判断した相手に容赦ないのが怖い。それに、だいたいが見た目か弱い方に味方しがちなのも怖い。
しかも強いならば手に負えないし、国王がよく魔王退治とか言って国外に追いやるのも頷ける理由だ。
「コホン。話を戻すと、そういう強い奴等をどこかから召喚して、ダンジョン攻略に力を貸して貰うつもりなんだろうな」
「うにゅ……ラサミュベスは中立なのよ? そんな勝手は出来ないと思うのよ?」
「そだな。だから……これは予想だが、召喚した数を大国を中心に振り分けたりすると思う。ダンジョン攻略した場合は利益を還元する約束で」
「なるほどなのよ~。ダンジョンを攻略した勇者はどうなるの?」
「知らん」
「うにゅにゅ……知らん~」
マユエルは何故か俺の「知らん」という一言がお気に入りらしく、言えばほとんどの確立で繰り返してくる。
マユエルの質問に「知らん」と答えても、嬉しそうに「知らん~」と言っている。
――それはともかく。
ダンジョン攻略後の勇者がどうなるかは、実際に分からない。
召喚の儀式があるなら、元の場所へ還す儀式があっても不思議では無いし……だが、一方通行という可能性も大いにある。
もしかしたら、この世界に住み着く人が出るかもしれないし、命を落とす人が居るかもしれない。
だから、分からないというのが今の現状だ。宗教国家まで乗り込んで調べようとも、別に思わないし。
「うむ……マユエルちゃんは賢いのだな」
「難しい話は分かんないネ……」
「ねぇ~、何で勇者が胡散臭いのよ~」
ビスコは話には入って来ないものの、しっかり理解はしているだろう。
それに比べ……このパーティーの女性陣は、少し賢さが足りてないな。強さは持ち合わせているものの……それだけじゃ乗り越えられない場面も出てくるだろう。
難しい場面も自分の得意でぶち壊していく――それはそれで、師匠の好きそうなやり方ではあるものの、少しは思考力を身に付けて欲しいのが本音だ。
「ビスコ、力自慢で賢い人がこのパーティーには必要と思うんですが……」
「優秀な方は、権力者や高ランクパーティーが見逃さないでしょうね」
「ですよねー」
エレノアやミルフさんは、ぐんぐんランクも上げて目立つ存在になっている。
だから最近はよく、高ランクパーティーからのお誘いはよくあるそうだ。
小ダンジョンで腕を慣らしたり、大ダンジョンへ挑むにしても、人手は多い方が良いのは間違いない。
ソロでの攻略は、ほぼ不可能と言われているダンジョンだ。ペアでも不可能……六人以上でも未だになのだ。権力者が我先にと動いて、金で人を集めているのは想像が容易い。
「そういえばホムラ、キャサリンさんはダンジョン攻略の際に参加なされるのですか? それこそ、百人力だと思うのですけど」
「あー……それはキャサリンさんと二人で話し合った結果、不参加という事に決めました」
「キャサリン、一緒しなイ?」
「はい。私はメイドですので、主の成長を見守るのも役目かと」
ダンジョンを作った師匠が、俺に対して挑戦しろと言っているのだと察しての結論である。
キャサリンさんの力は借りずに、自分自身やこのパーティーの力だけで攻略するのが師匠の思惑だろうし、きっと楽しいだろうから。
ダンジョン都市までは来るキャサリンさんも、ダンジョンの中には入らない。今回は二人での話し合いでそう決めさせてもらった。
「残念ネ、キャサリン居れば心強かったヨ」
「ありがとうございます、エレノア様。ただ、エレノア様にはホムラ様が居れば充分かと」
「うん! キャサリンの代わりに、ホムラは私がちゃんと守るヨ!」
別に守られると言われて、男としてのプライド的な部分が傷付くなんて事は無い。そんな羞恥心にも似た感情は、とうの昔に失っている。
ミルフさんやフランからは情けないという視線が刺さるが、動じる俺でも無い。自分に出来ることを全力で行う……それが合わさってチームとしての強さになるのだからな。
「……じゃあ、そろそろミーティングも終わりという事で良いですかね」
「賛成! 従者、疲れたから肩揉みなさい!」
「もちろん嫌だぞ。みんな後は勝手に過ごしてくださいな」
「はーい、なのよ~」
寝る頃になると流石に場所が足りないという事になり、俺とビスコは転移鏡を使って、いつもエレノアが使っている方のアトリエの方へと行く事になった。
たまには男二人だけというのも、夜の街を散策するのには気楽で良かった。
当然の事として歓楽街は避け、夜なのに空いている店を何軒か回っては楽しんでいた。
あまり酒を嗜まない俺とビスコは、遊び方もまだまだ子供っぽいかもしれない。でも、童心を持った頭脳と体が大人な大人は……思い付いた事は割りと何でも出来てしまう為、無敵感が凄かった。
「明日の為に今日はこのくらいにしておきますか!」
「そうですね。あと……ホムラが散財してしまった事は、内緒の方が良いですよね?」
「……ビスコ。俺は、何であんな使えない素材を買ったのでしょうか?」
変な形の素材。変な色の素材。特別な素材ではなくただの不良品。
それを何故か面白いと思って、無駄に買い込んでしまっていた。
夜の解放感と無敵感……酔っ払っていないのに財布の紐が弛み、やってしまった感と共にゴミを回収した夜の一幕。
俺は多少の後悔をしながら、ビスコとアトリエへ帰って行った。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)




