第52混ぜ パーティーメンバーの集い
お待たせしました!
よろしくお願いします!(´ω`)
今年もこの季節がやって来た。
数日後に開催される年に一度のお祭り。王都を中心に開かれる、――『シュレミンガルド建国記念祭』。
ただの武術大会とかそういうお祭りだと思っていたら、その実、建国した日を尊ぶお祭りだった。
ここ数日、街の掲示板に張り出された祭りのイベントに関してのお報せ……その内容は、例年と少し変わっていた。
武術大会は毎年と同じで違いはないが、その規模が大きくなっている。
身体強化以外の魔法を使う事を良しとしていなかったこれまでとは違い、魔法も含めた総合トーナメントに変わっていた。
魔法師団からの参加も増えると予想がされ、まずは四ブロック五人生き残りのバトルロワイアル形式、その後に勝ち残った人達でのトーナメントという流れになっている。
当然、俺は参加しないのだが……今年はエレノア、ミルフさん、フランが参加する予定で、からその応援はするつもりである。
――そしてもうひとつ。午後からのバトルロワイアルの前に行われる、毎年人気のないイベント『錬金術発表会』。
どちらかと言えば、こちらがメインである。シララさんの推薦で、俺は審査委員に抜擢されているし、マユエルが初参加する予定だ。
今夜には、お金稼ぎを兼ねて護衛依頼を受けたらしいエレノアとミルフさんが王都に到着するらしい。
身内以外ではビスコしか教えていなかった転移鏡の存在を、ミルフさんは既に知っているのだが……今の内にランクを上げておきたいとの事らしい。
「それで、マユエル? 発表会では何を出品するんだ?」
「秘密なのよ?」
「面白くない作品を出しても、コメントに困るぞ」
「うにゅにゅ、考えはあるのよ……先生、アレちょうだい」
一応、何かを考えているらしいマユエル。
そんなマユエルが最近、やたらと要求してくるのは鉄だ。自宅アトリエの近所に鉄を扱うお店があって、そこで安く仕入れているから痛手ではないものの……既に結構な量を持っていかれている。
キャロルさんにも何か持ってくる様に指示をしているみたいで、素材で分からせない様に徹底しているところは褒めるべきとこだろう。
「はいよ」
「じゃあ、外に行ってて」
「はいはい……」
今は授業をお休みして、マユエルの発表会へ向けての時間にしている。
俺はアトリエから閉め出される為、マユエルが何を作っているのかは知らない。審査員だから知らない方がいいのだろうが。
時々、どうすれば良いかのアドバイスを求めに来た時は、教えてあげている。だけど、それだけではマユエルの作っているアイテムの全容を掴むのは、正直に言って難しい。
伸ばしたり縮めたりするアイテムではあるらしいが……いったい、何を出来上がるのかは謎である。
マユエルの技術レベルはまだまだ……って感じではあるけど、成長を見れるのは少し楽しみだ。
「さて、トレーニングでもするか」
空いた時間は筋トレや体力作り。キャサリンさんとしている修行とは別に、時間を見付けては鍛えておかなければならない。
数年前までは、実力はエレノアと同じぐらいだったはずなのだが……今はもう冒険者として日夜活動しているエレノアの方が強くなっているだろう。
自分の方が上でありたいという訳では無いが、足手まといになるのは流石に情けない。
格好良い所を見せたいという訳では無いが、格好悪い姿は可能な限り見せたくない。
まだ俺の師匠から許しが出ていないから結婚はしていないけど、嫁である前にライバルであったエレノアに対してはそんな感じだ。
――ボンッ!!!!
「……失敗したか」
アトリエの中から聞こえてきた、小さい頃から聞き慣れた音。
俺は見付かって掃除を手伝わされる前に、ランニングを開始した。
◇◇
――放課後。
いつもならキャサリンさんと二人で走って帰る時間だが、今日はメンバーと移動手段が違っている。
「エレノアさんとミルフさんに会うの久しぶり」
「たしかに……そうですね」
マユエルとビスコ……そして、マユエルが用意してくれた馬車での移動だ。馬を操る御者は、キャロルさんが担当している。
まずは身内の俺、エレノア、キャサリンさんで、ダンジョンをどうするかという話し合いになった時に、ミルフさんとビスコとマユエル……そしてフランを会わせておこうという話題になった。
師匠が残してくれた転移鏡のお陰で、あっさりと会う事は出来たのだが……初回はやはり、マユエルの地位が微妙な縦社会を形成してしまっていた。
それでも定期的に――メンバーが毎回必ず集まるという訳では無かったが――顔合わせを重ねていく内に、可愛いもの好き且つ男が多い場所で育ったミルフさんが、妹の様にマユエルとフランを可愛がり始めた。
それから打ち解け始めたのもあって、ダンジョン攻略への鍵となる『チーム』という部分はひとまずクリアと言えるだろう。
「あれ、フランが来るって返事ありましたっけ?」
「それは届いていませんが……ホムラ様が誘ったので、おそらくですがフラン様もお越しになりますよ」
「う~ん、どうですかね? ……魔法師団の宿舎に行った時、疲れてるのかフラフラでしたし」
お祭りに向け、騎士団も魔法師団は主に警備関係で大忙しみたいだ。
人が多く集まるという事は、いろんな事が起こるみたいだし、各国から権力者もやって来るとの話だ。
まだ二年目くらいの新米フランであっても、やることが多いのだろう。
「賭けますか? 私は来る方に」
「何を賭けます? では、俺は来ないに」
「きっと来るのよ?」
「それでは、私も来る方に」
俺以外は来る方か……。
それはまぁ、俺も来てくれた方が良いとは思うけど。
「では、負けた方が今晩の食事の準備をするというのは如何でしょう?」
「うん。それはもう、俺の為に俺が負けるしかありませんよね」
賭けなのに賭けではなくなってしまった……。
そうこう話している内に、最初の目的地である冒険者ギルドへと近付いていた。
ここで、依頼を終えたエレノアとミルフさんを拾って自宅アトリエへと帰る事になっている。
顔を覗かせてギルドの方を見てもそれっぽい二人組は居ない。少し待つことになりそうだ。
「先生、エレノアさんとミルフさん居た?」
「うーん、まだみたいだな。……もしかしたらギルドの中かもしれないし、ちょっと見てくるよ」
「付き添います」
「大丈夫ですよ。キャサリンさんは馬車で待機しておいてください」
ギルド前に停まった馬車から降り、ギルドの中へと入る。
夕方のこの時間ともなると、二階の飲食店の方が賑やかだ。
一階の受付にもクエスト報告で何人かの冒険者は居るが、その数は少ない。
「だが、ビンゴ」
たった今、受付が終わった感じの二人の冒険者……女二人という珍しいペアはよく目立つ。
他の冒険者に声を掛けられる前に連れ出すのが吉だな。
「エレノア、ミルフさん」
「クルス~! 会いたかったネ!」
「久しぶりだな、ホムラ」
ギルド内でもお構い無しに抱き着いてくるエレノアと、それを微笑ましく見るミルフさん。
さて、恒例のやつをやっておきますか。
「獣臭いッ!!」
「きょ、今日は戦って無いぞ!! おい、消臭液を吹き掛けるなっ」
「すみません、つい……」
「……マユエルちゃんが居るのだろ? 今日は良い香りのやつを頼む」
乙女心よりもお姉ちゃん心。
ミルフさんには、甘い香りのする香水を軽く吹き掛けてあげる。
「うむ。さぁ、早く行こうか!」
「クルス、私ハ? 私ハ?」
「エレノアはいつだって良い匂いだから大丈夫」
「えへへ~」
ズカズカと歩いてギルドを出ていくミルフさんを追い、俺とエレノアも冒険者ギルドを後にした。
外で待機している馬車に乗り込むと、さっそくマユエルを膝に抱えて座り込むミルフさん。もう、見慣れた光景でもある。
「じゃあ、アトリエに帰りましょうか」
「キャロル、出発なのよ~」
ギルドからならそう遠くはないアトリエ……十分もしない内に到着した。
もう空も暗くなりそうな時刻。灯りの少ないこの辺りだと、暗くなる前に帰宅しないと中々怖い雰囲気がある。
そんな中にポツンと一人。アトリエの前でしゃがんでいる人が居た。
その人影がゆっくりと動いた。馬車の存在に気づいたのか、こちらへ歩いて来た。
「とっても遅い! 遅い! ……というか、そもそも時間を教えて貰ってないんだけどっ!?」
「どうやら賭けは我々の勝ちの様ですね、ホムラ様?」
「……賭け? いったい、何を賭けてたんですか?」
「フランが来るか来ないか、賭けてたのよ~?」
馬車に近付いて来るにつれ、そのシルエットがハッキリとしてくる。
ツインテールに結ばれた金髪。少し大人びたが、まだまだ幼い顔。怒った表情は何にも変わっていない――アホの子フランだ。
「ちょっと従者、あたしの話聞いてるの?」
「あ、はいはい。聞いてるよ」
「聞いてないわよっ! 私は聞いてないの!」
フランが文脈おかしく怒っている理由は、なんとなく察しがつく。
今日の集まりについて、日付は伝えていたものの時間を伝えていなかった。それを思い出したのはたった今なのだが、ずっと待っていたのかと思うと……ちょっとだけ悪い気がしてくる。
「フラン、今日も元気ネ!」
「あら、エレノア。元気さで言ったら、あなたには負けるわよ」
「フランちゃん!」
「ヒィッ!! ミ、ミルフさん……」
明るいエレノアとは気が合う仲のフランではあるが、実はミルフさんとの相性は今のところ微妙と言わざるを得ない。
フランは魔法メイン、ミルフさんは剣術や体術をメインにしているから相性が良くない……という訳ではなく、原因はシンプルに『ミルフさんの可愛いもの好き』。
フランの実姉であるラランさんとは違うタイプの歳上で、自分を甘やかしてくる存在にフランが戸惑っている状況だ。
マユエルはすんなりと受け入れていたが、それは少し歳が離れているからだろう。
ミルフさんは俺と同じ年齢……すなわち十八歳。それに対し、フランは一つ下の十七歳。難しい時期なのもあって、フランらしからぬ感じになってしまっている。
「ほら、こっちへおいで!」
「従者ァ……。あれをどうにかしておいて、って言ったでしょ?」
「あぁ、だからフランに似せたぬいぐるみを作ったんだがな……あははっ、逆効果だったみたいだな」
エレノアに聞いた話だと、マユエル人形とフラン人形を野営の時は抱いて寝ているらしい。普段はちゃんと鞄に入れているらしいが、休憩中も取り出しては遊んでいるとか。
何だかちょっぴり、ミルフさんがパーティーにとって危ない存在な気がしてくる。
「わ、笑いごとじゃないでしょ!」
「まぁ、我慢してやれよ。ミルフさんってほら、いつも獣臭いだろ?」
「……おい、ホムラ。それがどう繋がると言うのだ?」
「すみません、ただの悪口です」
「斬る!! エレノア、すまないが、コイツぶっ殺してやる!」
「わっ、わっ、駄目よミルフ! クルスも、女の子に変なこと言っちゃ駄目ネ!」
助けを求めてビスコを見るが、困った表情を浮かべるだけだ。
幾度となく衝突する俺とミルフさんだが、今までミルフさんが発端となった時は無い。ビスコはそれに気付いてから、仲裁すらしてくれなくなっていた。
「とりあえずアトリエに入りましょう、エレノアもミルフさんも疲れているでしょうし」
「私はまだ余裕があるぞ……お前を斬る程度のな」
「夕食にデザート作るので、今日はそれで手を打ちませんか?」
「……大盛だぞ」
これもだいたいいつもの流れ。この後にマユエルが俺を叩いて来て喧嘩を始め、自分も大盛を要求する。その後にエレノアが普通のおねだり、そしてフランが軽口を叩いてくる。
久し振りというのに、いつも通りという感覚。いつの間にか、この空間に居心地の良さを感じている。
「ふ~ん、従者のデザートもそろそろ食べ飽きたかもしれないわね」
「そうか。じゃあ、フランは要らないのな」
「何でそうなるのよッ! 要るに決まってるでしょうが!!」
何でそうなるのかは、こっちの台詞だ。
フランだけ、何だかいつも下手なんだよな……軽口とか煽り方が。
「はいはい。じゃあとりあえず……すぐご飯の用意をするから、みんなは遊んでいてくれ」
アトリエに入ってから夕食が完成するまでは、各々で時間を潰しておいて貰う。
全員で夕食を食べた後は、報告会と今後の予定についてのミーティングとなっているが、そう難しい話は出ないだろう。
一応お祭りの為に、明日から学校はお休みになっている。
だから、マユエルもお泊まりが可能だ。特例中の特例で、国王陛下から許可は取ってあるし心配は何もない。普通ならありえない事なのだが、アトリエの安全性については結構前にお忍びで来て貰って証明している。それに、キャロルさんも居るしな。
「ちなみに、今日の献立に注文がある人は?」
「私はパスタが食べたいネ!」
「従者なら主人の食べたい物くらい、自分で考えなさいよねっ」
「私は食える物なら何でも良いぞ」
「そうですね……ホムラにお任せします」
「うにゅ! 若鳥のグリルトマトソースなのよ~」
答えてくれたエレノアとマユエルを、ちゃんと褒めてあげる。
ただ、今日の俺の気分はオムライスの為……作るのはオムライスだ。
――さて、さっそく取り掛かりますか。
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