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第49混ぜ 大丈夫、ただの家庭訪問だから


お待たせしました!

よろしくお願いします!



 


 川の流れをただボーッと見て時間を潰し、キャロルさん達の尋問が終わるのを待っていた。


「ふむ。長いな」

「うにゅ~?」

「いや、キャロルさん達の尋問の話。森を出る時間を考えると俺の尋問タイムが短くなるだろ?」


 同じ様にただ川を見ているマユエルに、こんな話をしても仕方ない。実際に俺のターンが来ても、マユエルは離れた所に居て貰う。

 キャサリンさん仕込みの尋問をやってたら、確実に時間は足りないし、回復薬も無駄になるだろう。


「仕方ない……アレでパパっと終わらせますか」


 俺はポーチの奥にしまっていた茶色の小瓶を取り出した。

 危険な薬というよりは、第三級禁忌アイテムとしてお偉いさんの許可が無いと使用が出来なかった薬だ。

 だがそれは、日本での話。ここでは、止める者などいない。


「先生ー? それなに?」

所謂(いわゆる)、自白剤ってやつだ。簡単に言うと……軽い催眠状態にして、こっちの問い掛けに答えてくれる薬」

「……危険な薬?」

「そうだな。滅多に使わないけど今回は特別に、な」


 第三級アイテムは、作るだけならまだ問題にならない。

 この世界に来る原因となった、師匠の作った惚れ薬は第二級禁忌アイテム。等級がひとつ上がった第二級は、作るのも禁止されている。

 だが、第一級に関しては作れば高額で買い取って貰えるというシステムだった。

 危険だが、裏社会的に有用なアイテムだからだろう。若返りの薬や霊薬……そんなのを作れてしまうと知られれば、争いに巻き込まれるのは目に見えているけれど。


「お待たせしました。次、どうぞ」

「どうも。じゃあ、しばらくマユエルを見ておいてください」

「一応、手足は縛ってあります。出血は止めましたが……」

「あぁ、それはそれは。お手数お掛けしました」


 足を撃ち抜いた時から流れ出した血はキャロルさん達で処置してくれたらしい。

 一言、礼を告げて入れ替わる様に第二王子の私兵だという男の元へと近付いて行った。



 ◇◇



「やぁ、どうもどうも! 初めましてですね!」

「…………」


 フランクな挨拶をしてみるも、やはり睨まれるだけで言葉は返って来ない。喋る事は何も無いという意思すら感じる。


「一応聞いておきますけど、第二王子と第一王子の対立とか、マユエルの状況とか、話す気はありますかね?」

「…………」

「まぁ、どっちでも良いんですけど。貴方の意思なんて関係なく喋らせる事は出来るんで……でも、その薬もタダじゃ無いんですよね。話して貰えません?」

「…………貴様みたいな平民に話す訳ないだろう?」


 おぉ、顔に似合った低めの声だ。この人も貴族出身なのだろうか?

 まぁ、どっちでも良いか。それより、キャロルさん達が手足を縛ってくれていて助かった。

 キュポンと鳴らし、小瓶からコルクを外す。自分で臭いを嗅いでしまわぬ様に息を止め、男の口に近付け……全てを飲ませた。



「――ンンッ!? カハッ、貴様!! 何…………を…………っ」

「ふふふ。しばし、眠っててくださいな」


 ――面白い程にペラペラと情報を話して貰った。

 良いか悪いかで言えば、良くない情報が多くて面倒という理由から悪いのだが……まぁ、どうにかなるだろう。

 そう言えば……学校では定番をたしかまだやっていなかったな。この世界の学校にそのイベントがあるのかは知らないけど、やってみようか。


 今夜(・・)家庭訪問(・・・・)をば!!



 ◇◇


 何事も無かった様な顔をしてマユエルの元へと戻り、この森を出る事を伝えた。

 第二王子の私兵……男爵家の次男坊――腕の立つ男らしいが、名前はもう覚えてない――奴はキャロルさん達が運んでくれるという事で、さっさと森を抜ける事にした。


「……先生、速いのよ?」

「おぉ、すまん。ちょっと久しぶりに危険な道を行く事に、心が少し(はや)っていたらしい」

「うにゅ……危ない事はしちゃいけないのよ?」

「正論だ。アイテムだって、ちゃんとレシピ通りに作らないと爆発するもんな。ちゃんと計画して行く事にするよ」

「伝わってないのよ……」


 森から最初の地点に戻って来た頃、もう夕方という時間帯になっていた。俺達が最後という訳では無さそうだが、それでも最後の方ではあるらしい。

 教員や他の生徒達から向けられるのホッとした顔、キャサリンさんやビスコから向けられるホッとした顔、その違いを気にする前にシララ校長への報告に向かった。


「ただいま戻りました」

「おかえりなさい。マユエルちゃん、どうだったかしら?」

「変なキノコで笑いが止まらなかったのよ?」

「あらあら、うふふ。ホムラちゃん、何か素材を取ってきたのでしょう? 預かるわ」


 何の素材を渡すか少し迷って、一番小さい魔石を渡す事にした。

 魔物を討伐した証にもなり、尚且つ今のところ錬金にはそれほど必要としてないという理由で。

 シララ校長はマユエルの頭を撫でながら「もう少しで揃うからしばらく休憩にしといて良いわ」と言い残して、その場を離れていった。


「俺はちょっとキャサリンさんの所に行くが……マユエルはどうする?」

「一緒する」

「疲れただろ? あっちに給仕科の生徒さんが作った軽食もあるみたいだし、休んでて良いぞ?」

「一緒する!!」


 これからキャサリンさんに相談する事を察しているのか、(かたく)なについて来ようとしている雰囲気だ。


「まぁ、良いけどさ」


 そう言って、真っ直ぐにキャサリンさんの方へと歩いていく。

 ビスコは遠くで生徒達のカウンセリングをしているし、話すのは帰りの馬車にしようかな。


「キャサリンさん、戻りました」

「おかえりなさいませホムラ様。マユエル様」

「戻りました……のよ」


 キャサリンさんが少し怖いのか、あまり声が出ていなかった。

 前に、キャロルさんが来る前の護衛であるハイピスさんに威嚇してしまったのを覚えているのだろう。怖いなら、無理してついて来る必要は無かったのにな。


「キャサリンさん、力を貸して貰えますか? ちょっと面倒事がありまして……」

「ご命令通りに。それで、面倒事とは?」

「森でちょっとありまして――――」


 森で起きた事や、奴から聞いた話や、マユエルの気持ちなんかを伝え、俺が何をしようとしているかまでキャサリンさんに伝えた。

 家庭訪問――場所は王城。平民が普通に入れる場所ではなく、いきなりアポなしで行ける訳もなく、ツテを使って予約を入れてもだいぶ後回しにされるか、そもそも無理。

 簡単に行ってしまえば……捕まれば死刑、その覚悟をした上で潜入しようというお話である。


「キャサリンさん一人なら余裕でしょうが、今回は一応俺が行かないと行けませんしね」

「買い被り過ぎですよ。私とて、今夜いきなり潜入は不可能です。最低でも下調べはしませんと……ですが」

「えぇ。俺の作ったアイテムとキャサリンさんの技術があれば可能性は十二分にあるかと」


 別に宝物庫に入ったり、重要な書類を盗み出す訳じゃない。ただ、マユエルの父親……王様に会ってお話をさせて貰うだけだ。

 王直轄の護衛や、城の警備兵なんかの厄介な相手も居るだろうし、捕まれば不法侵入、王殺害の疑いでその場で斬り殺される可能性だってある。


「――あまり時間が無いのですね?」

「そうですね。後の事を考えればなるべく早くの方が良いと判断しました。今のままだと、思ったより早く魔の手が伸びてくるでしょうから」

「分かりました。私はホムラ様のメイドとして、全力でお守りしましょう。ですが、失敗すれば全てを捨ててでも他国へと逃げますよ」

「……先生、嫌なのよ」


 俺とキャサリンさんの会話を静かに聞いていたマユエルが、ポツリとそう言った。

 何が嫌なのか、それはマユエルにしか分からない。

 でも、不安そうな顔への対処法は知っている。よく師匠やキャサリンさんがやってくれた事をそのまましてあげれば良いだけだ。


「大丈夫。何も心配はいらない」


 ポンっと頭に手を乗せて、ガシガシとそのまま無造作に髪を撫で回す。


「うにゅ!? うにゅなのよ~!!」

「大丈夫。ちょっとご挨拶に行くだけだから。明日、今日採ったら果実でスイーツ食べるんだろ? 良い子で待ってな」

「でも、でもなのよ……」

「任せろ。俺は……お前の先生だぞ」


 格好付けたからには失敗は出来ない。失敗したら終わりだが。

 帰りながら作戦を考え、手持ちのアイテムを整理しなければな。


 ――しばらくして、帰りの時間がやって来た。

 シララ校長からお話があって、行きと同じ様にそれぞれ馬車へと乗り込んでいった。

 帰っていく道すがら、ビスコへも同じように説明はしたのだが……。


「ホントに馬鹿なんですかっ!! 不敬罪や国家転覆罪、殺人未遂……首を斬られて晒されますよっ!! ホントに!! シララ校長にだって、迷惑が掛かりますっ」


 と、大人な対応で普通に怒られた。

 ただ、マユエルをビスコの目の前に出して目をうるうるさせる事で対応しておいた。残念ながら、やらないという選択肢は無い。

 短期決戦、そして、最悪俺だけに罪が来る様に徹底抗戦していこうか。

 大丈夫。これは戦争じゃない、家庭訪問だから大丈夫。


 ◇◇◇



 学校まで戻ってくる頃には、空も薄暗くなっていた。魔道具らしき街灯が学校の周りには整備されているから、まだ見えなくなるという事はないが、あと一時間もすれば消されていくだろう。


「マユエル、今日は念の為に学校のアトリエでキャロルさんと居てくれ。飯は作りおきで良ければ用意出来るし」

「分かったのよ……。先生、すぐ帰ってくる?」

「パーっと行って、パーっと帰ってくるさ」


 完全に暗くなる前に王城近くには潜んでおきたい。だが、一度アトリエに行って装備を整えると闇夜を動かないといけなくなるだろう。


「ホムラ、本当に気を付けてくださいね?」

「分かってますよ。こっちにはキャサリンさんが居るんですから、失敗はあり得ません」


 ずっと心配そうなビスコとマユエルに手を振って、俺とキャサリンさんは学校から離れて行く。

 アトリエまで戻って来るとすぐに、今日使っていた物とはまた別の魔法鞄を用意して、必要な道具を準備していく。

 キャサリンさんは基本的にメイド服を脱がない。だからせめて、黒い外套(がいとう)を上から羽織って貰う。

 一応、戦闘は想定しているものの、なるべくは回避していくつもりだ。消臭はもちろん『消音ブーツ』、『魔導吸着シール』、大活躍間違いなしのタブレットも当然持っていく。


「潜入は久々になるでしょうか。技術が鈍ってなければ良いのですが……」

「キャサリンさんに限ってそんな事ないと思いますよ、たぶん。とりあえず、警備の薄い所から最短距離で外壁を越えて行きましょう」


 ――準備を整えて、すぐにアトリエを出る。

 街中の明るい場所は避け、やや遠回りで治安の悪い場所であっても、人通りの少ない所を選んで王城を目指して走る。

 それほど高い建物の無いこの世界では、屋根に上れば王城の位置を見失うことは無い。辿り着くまでに手こずる事は無かった。


「正面の門は当然閉まってますね……門の下には兵が二人、門の奥には壁に沿って夜勤の兵士が何人も居ますね」

「おそらく騎士団の面々でしょう。戦闘は避けるべきかと。背後から薬品で眠らせるにしても……複数相手には面倒ですから」


 ひそひそと話ながら俺とキャサリンさんは闇と同化しながら移動する。潜入と言えば、やはり相場は裏の方からだろう。

 正面玄関ほどでは無いにせよ、兵は居る。だが、タブレットで位置情報は確認済みだ。

 タイミングを測って忍び込むのは、思ったよりも簡単そうだ。


「そろそろ……行きましょう」

「そうですね。ホムラ様、遅れずについて来て下さいませ」


 高い壁を魔力を流すと引っ付く『魔導吸着シール』を使い、壁を虫の様にカサカサと登っていく。

 敷地の中にさえ入ってしまえば、後はもうキャサリンさんについて行くだけだ。


(さて、スマートに駆け抜けるとしますかね)






誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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2020/1/11~。新作ラブコメです!٩(๑'﹏')و 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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