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第39混ぜ 視えないけど、分かる


お待たせしました!

よろしくお願いします!٩(๑'﹏')و



 


「チャーハン、棒棒鶏(バンバンジー)、エビチリ……中華料理で纏めてみたけど、作りすぎたかな?」


 ビスコが沢山食べる事を考慮しても、それでも少し多めに作りすぎたかもしれない。デザートはなんとなくプリンが食べたくて、中華料理で纏めるなら杏仁豆腐とかの方が良かったのかもしれないけど……普通にプリンを作った。


「ん? 今……何か通ったか?」


 テーブルにラップをした料理を配膳していると、高さ約一メートル程の窓の外に何かが映った気がした。

 こんな昼間から死霊系の魔物が学園に入り込むとも思えない。

 俺は腕時計を見る――この腕時計は、時間を表してくれる機能の他にもうひとつだけ改造した物。

 その機能とは……『魔力検知探知機(みつけちった君)』だ。腕時計版……魔力探知アプリとでも命名しようか。探知範囲が腕時計のモニターサイズにはなるが、この周辺に潜む魔力を持つ物質ならちゃんと反応を示してくれる。つまり、スピーディー且つお手軽に使う事を目的とした簡易版とも言える代物だ。

 その内、広範囲かつ薄い魔力の波を放って、ざっくりとした地形をも見れる仕様に改良はしていく予定だ。


「どれどれ、スイッチを切り替えて……って、はああああッ!? なんだこの魔力の密度!? 人レベルじゃねぇぞ?」


 魔力の密度によって色が変わる仕様だが、人程度なら……魔力の多いエルフのシララさんでも色は黄色から変わらない設定にしていた。魔力で『何かが在る』という事を知る為のアイテムであって、相手の力量を調べる用途で作ってはいないから(こだわ)りはしなかった。

 それでも、多少なりそういう意味も込めて色の変わるギミックを付けていたのだが……腕時計が示したのは赤。簡単に言うとエルフが束になっても届かないレベルの魔力量だ。ここまでくると、魔力そのものと言っても過言ではないだろう。

 それが、そんなヤバイモノがアトリエの外に居る。ちょっとどころでは無く怖い。


「離れた所にもう一個反応があるな……」


 赤の方はアトリエの回りをぐるぐると移動しているが、もうひとつの方は動いていない。

 相当の力を持っていても攻撃をしてこないという事は、こちらに対して敵性は無い……と信じたい。だが、念のために装備を固めてから窓に近付いた。ぐるぐると回っているモノが、窓から見えるのを息を殺して待つ。


「うにゅ~? うにゅ~?」


 姿は見えないが、奇妙や声が聞こえてくる。そんな鳴き声の魔物が居たかは覚えてないが、簡単に突破されている警備員を恨んだ。


(み、見えないな……この角度じゃ無理なのか? 出るしか……ないか……)


 正体不明な何かがずっとアトリエをぐるぐると回っている恐怖。たまにドアをガチャガチャと鳴らしては、またぐるぐると移動している。狙いは完全にアトリエの様で、これ以上静かに耐え続けるのは胃に悪い。


「こういう時こそ冷静に……」


 よし、不思議な事をひとつずつ解決していこう。

 これだけの密度の濃い魔力を持つと普通なら肌や第六感的な部分で感じる筈だが、何故か今は何も感じない。腕時計を見なければ分からなかったくらいだ。

 それに加え、魔力に敏感であるシララさんが何も行動を起こしていないことも気になる。おそらく、この魔力についてシララさんは知っているのだと考えられる。

 ドアを叩く行動……死霊系の魔物なら壁を透過してくるだろうし、形ある生き物だと断定して大丈夫だろう。


「危険性は……無いと踏んで大丈夫か?」


 落ち着いて分析すれば、強大な力が外に居るとはいえ問題は無い様に思えてきた。まだ油断は出来ないが、キャサリンさんも来ていないからおそらくは大丈夫だろう。

 俺は敵性が無い事を祈って、タイミングを見計らい……アトリエから外に飛び出した。


「うにゅ!?」

「……てるてる坊主?」


 それは魔物でも何でもなく――女の子だった。

 薄紫色の髪、小さい体躯、そして学園の制服でもあるローブを着ている。ただ、丈が長過ぎて首から足元までローブで隠れており、その姿がてるてる坊主みたいに見えた。

 魔物じゃない事、危険性が薄そうな事に安堵(あんど)のため息を吐いた。


「……あぁ、そういうタイプか。とりあえず問題なくて良かった」


 問題が何も無いと分かったし、アトリエに戻る。そして、腕時計を確認すると赤の反応はまだ外にあるが、よく見ればその赤に重なる様にして普通の反応もあった。魔力そのもの(・・・・・・)という俺の思ったことは、案外的を得ていた。外に居た女の子……彼女はきっと『精霊術師』なのだろう。しかも、かなり才能アリアリの。


「魔力の濃いこの世界で精霊術師は……ちょっと強すぎるよなぁ。あの女の子も強大な力を持って可哀想に」


 精霊術師は、使役する精霊の力を借りて戦う者のことを言う。詳しく知っている訳ではないが、魔法師の詠唱なんてものも必要せず、術師にしか姿の見えない精霊はどこからでも攻撃を可能とする。卑怯なんて言葉じゃ足りないくらいに恐るべき能力を持っている。

 攻略法は、術師の魔力が尽きるまで耐える耐久戦か、術師の意識を奪う事の二択。精霊術師は術師の魔力量も多いと言われているから、耐久戦はお勧めできない。自滅覚悟の短期決戦がベストだが……それも楽ではない。


「精霊術師か……考えてなかったが、何か対策を考えておかないとな。幸い魔力検知探知機(みつけちった君)で精霊の位置は分かるし……」


 トントン――。

 ドアが叩かれている。さっきの女の子だろうか?


「何か御用で?」

「うにゅ~」


 なるほど、会話の難しい子か。何か怒っている風にも見えるな……。

 そもそも、誰だろうかこの子は。新入生……かな? とすれば、もう生徒も下校し始めたという事だろうか。


「えっと……何? 体育館に居たなら知ってると思うけど、先生は錬金術師の講師で……今からお昼だから。キミは早く帰りなさいね?」

「お昼……お腹減った」

「そうか。キミは寮住まい? それとも近所に住んでるの? 早く帰りなさいね?」

「うにゅ~……!!」


 お手上げだ。思ったよりも子供の扱いが上手くないのかもしれない。

 怒っているし、帰らないし、てるてる坊主だし、小さいしでどうすれば良いか分からなかった。俺も悪いかもしれないが、きっとこの子も悪い。ちゃんと喋ってくれないし。


「はぁ……入る?」


 トタトタ……と返事もせずにアトリエの中へと入っていった。キョロキョロと見渡しては、テーブルの上にある料理を発見して駆け寄っていく。


「美味しそう」

「まて、まずはキミが誰か教えてくれ。何しに来たかも」

「うにゅ……マユエル。見学に来たの」

「見学……? もしかして、唯一の錬金術科を選んだ生徒ってキミか?」

「シララ先生に勧められた」


 シララ先生から生徒の事は会ってからのお楽しみと言われていたから、すぐに気付けなかったな。この子が……そうか。わざわざ授業の前日に見学に来てくれたのに、ドアを閉められたら怒りもするか。


「という事は二年生だよな? たしか、十歳で入学する生徒が大半だから……でも、本当に十一歳?」

「違う。私は八歳」

「八歳……まぁ、身長からすると納得だけど。七歳で入学か……早くないか?」

「受けたら受かった」


 まぁ、精霊を使役しているのだし……筆記の試験さえ突破できれば実技で落ちる事はまず無いだろう。入学の年齢において下限は無いにしても早いんじゃないだろうか。

 他の同級生より三歳は下だし、入学生よりも歳下になるし。


「友達とかちゃんと居るのか?」

「……うにゅ」

「居ないのか」

「ぎぎぎぃ~」

「おっ、新しい反応だ。まぁ、先生もビスコくらいしか友達は居ないんだけどな~」


 一言で言うなら、この子は変な子だ。ざっくりし過ぎかもしれないが、変な子で話は片付く。だが、危惧していた精霊が何かをしてくる様子は無い……ちゃんと制御しきれているのは偉いな。

 話が通じない訳ではないが、子供っぽい部分が多大に残っている。賢そうな顔はしているが、実際に賢いかはまだ分からない。

 錬金術は才能だ。シララさんが勧めたから才能はあるのかしれないが、精霊術師として生きていけるのにわざわざ錬金術を学びに来た理由がイマイチ見えない。


「それでえっと……マユエルさん? マユエル君? マユエルちゃん? ……まぁ、何でもいいか。見学に来たらしいけど、今日は特にすることも無いと先に言っておくぞ」

「分かった。これ、美味しそう」


 マユエルが指差したのはデザートとして作っておいたプリンだ。

 やはりプリンは、見た目で子供心をくすぐるのだろう。偉大な食べ物だ。


「これも錬金術で作ったんだぞー、食べてみるか?」

「食べる」


 スプーンをアトリエの中にある食器棚から取って来て、マユエルに渡した。すると――。


「――! ――――、――!!」

「おい、マユエル。あの窓を破壊しようと叩いてる女は知り合いか?」

「……護衛のハイピス」


 護衛か。なるほど、学園の中にまで護衛がついて来ている生徒はそう多くない。それだけこのマユエルが守護するべき存在なのだろう。

 その、護衛らしきハイピスさんは俺よりも少し背が高く、ゴツゴツしくはない軽装備で窓を叩いている。赤く燃え上がった様な色をした髪を振り乱しながら、だ。

 ただ、残念なことにシララさんのアトリエの強固っぷりが証明されていくだけである。

 おそらくだが……腕時計に映っていた離れた位置にあった反応はあの人なんだろうな。


「めっちゃ鬼の形相で何かを言ってるな」

「ハイピスよく怒る」

「窓、割れないと思うけど……そろそろドアを開けるか。マユエル」

「まかせて」


 トタトタとドアに近付いて、ドアを開けるとハイピスさんが入って来た。変わらずに、鬼の形相で。


「お嬢様!!」

「ハイピス、ついて来なくていい」

「それは無理にございます。それと、男性と個室で二人となる状況は避けてください」

「こちらは先生。ここはアトリエ。普通のこと」

「ですがっ! それに、得体のしれぬ物には気を付けてください!!」

「うにゅにゅ~!! キライ!!」


 キライという一言に、物凄くショックを受けたという顔をしているハイピスさん。口やかましく言われたマユエルは俺の後ろに隠れて盾にし始めた。

 そうすると、不思議なことに睨まれるのは俺になる。だからなんだという話だけど。


「えっと、ハイピスさん……ですか? 錬金術科の講師でホムラと言います。護衛なら、遠くからではなくアトリエの中に居て構わないですよ?」

「ふん。校長であるシララ殿が認めたらしいが、お嬢様に指一本でも触れてみろ……その首が跳ぶぞ」

「マジかよ……お前の護衛だろ? しっかり言って聞かせておいてくれよ? 授業に支障が出る」


 後ろに隠れたマユエルを前に突き出す。

 この時点で既に肩に触れているので、当然ハイピスさんはキレそうになっている。マユエルを盾に、俺も屈んでいるから剣を抜く事も出来ずにいた。わざとだがな。


「お嬢様! 退()いてください」

「うにゅ~!」

「お嬢様……。そもそもですよお嬢様! 錬金術科というよく分からぬ学科へ進まれた事、まだ私も含め誰も納得されてませんよ! お嬢様は頭がよろしいのですから、その道へ進むべきなのです!!」

「はぃぃ? マユエルはどう考えても……錬金術科じゃないとしても、魔法科あたりが良いでしょうよ」


 思わず口を挟んでしまった……。

 たしかにマユエルは地頭は良いだろうし、学問を納める道に進んだって才能は開花するだろう。他には貴族科という道もある。だが、どう考えたって魔法を使うべき人材なのは間違いない。


「貴様ァ……」

「えぇ……なんか一番怒ってるし」

「お嬢様はなぁ……お嬢様はなぁ……魔法を上手く扱えないのだ!!」


 マユエルが(うつむ)いて、少しだけ沈黙が訪れる。それを破ったのは、マユエルだった。

 ハイピスさんに「アトリエの外に出てて」と言った。かなり怒った表情を俺に向けながらも、マユエルの指示に従ってアトリエの外に出ていった。

 俺も聞きたい事ができたし、都合は良かった……と言うか、マユエルもその話をするためにハイピスさんを外に出したのだろう。


「隠しているのか?」

「うにゅ……。魔法……出そうとした時……まだ、力加減が分からなかった。だから、隠した」

「……今より小さい頃にやらかしたのか。まぁ、その力を上手く扱えて他の人に見せたとしても、良いことがあるとは思わないけどな」

「先生は……先生は視える(・・・)?」

「直接は無理。でも、存在しているのは確認できる。もしかして……話しても誰にも信じて貰えなかったとか?」


 俺の問いに、頷くマユエル。

 まぁ、魔物とはいえ死霊系ですら見える世界だ。見えないモノは存在しないと思い込む気持ちだって理解はできる。子供が精霊の事を言っても()(ごと)一蹴(いっしゅう)されてもおかしくはない。

 神の存在は理解しているだろうに……子供が精霊を使役している事を信じないとはな。見えると見えないでそんなに違うものなのかね……。


「まぁ、何て言うか……ドンマイ?」

「ドンマイ?」

「気にするなって意味だ。ほら、この腕時計見てみろよ……赤く映ってるのがおそらく精霊な。どこかに移動させてみたらよく分かるぞ」

「分かった。あっちに動いて」


 マユエルが精霊に指示を出すと、赤が動いていく。

 それを見たマユエルは「うにゅ~!」と声を出して喜びだした。何が嬉しいのかは分からないが、とても喜んでいた。

 精霊を右へ左へ動かしては、俺の腕時計を確認している。もう、プリンはどうでも良いのかな?

 少し遊んでいると、また窓が叩かれた。ハイピスさんかと思ったが、そこに居たのはキャサリンさんとビスコだった。おそらくキャサリンさんがビスコを迎えに行ってくれたのだろう。

 俺はマユエルに少し待つように言って、腕から離れて貰った。そして、アトリエのドアを開けて二人を招き入れた。





マユエルちゃんです!

八歳の賢い女の子ですゾ!才能の塊と言ってもいい……


誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


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2020/1/11~。新作ラブコメです!٩(๑'﹏')و 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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