第34混ぜ お出掛け
お待たせしました!
閑話的なのがもう数話続きますぞぉ~(閑話だから、いつもより少しだけ短め)
よろしくお願いします!
「従者~! 来たわよ従者~」
「あぁ、フラン。キミはなんて美しいんだ……」
「え……えぇッ!? ……ま、まぁ? 今頃気付いたの? って感じだけど? ンフフ」
オシャレをしてきたラランさんをビスコが褒めて、何故かキャサリンさんに「見習うべき」と俺が責められるという一幕があった。
だから、ビスコよりも大袈裟にしながらフランを褒めてみた。
本人の喜び様から見ても、成功みたいだが……キャサリンさんには溜め息を吐かれ、ビスコには苦笑いをされていた。
解せないが……本人が喜んでいるのだしと言い訳は、どうやら聞き入れて貰えなさそうだ。
「待たせたね」
「ふふっ、お待たせ致しました」
そして、ランドール氏とまさかの奥様の登場で一応の準備は整った。
数人雇われているメイドの代表として、ラランさん付きのパリュレさん一人が付き添う事に決まったみたいだ。遠くでフラン付きのメイドであるミリーさんが恨めしそうな顔をしていた。
「オホホ。今日は素晴らしい一日ですわぁ……ホムラさん? 感謝致しますのよぉ?」
「そ、そうですか。感謝は……はい。受け取っておきます」
バリバリに化粧を施した奥様は、髪が盛りに盛られていた。綺麗な人ではあるのだが、その威圧感のある髪型のせいで一歩引いてしまう。
「お父様。ホムラ様の大変さに見合う報酬をお渡したいのですが……どれくらいの大変さだったのでしょうか?」
「えっ……あー、そうだな。フラン……どう思った?」
「あ、あー……そうねぇー、中々……そう! 中々大変って感じだったかも?」
寝ていたのによく言う……。だが俺は、大人の対応として沈黙を選んだ。沈黙は金というやつだ。言わぬが華……というか、今はそっちの方が良さそうな感じがする。
現に、チラチラとこちらの反応を窺ってくるランドール氏である。俺は一歩分だけラランさんに近寄って、ニッコリと笑顔を返しておいた。
「やはり大変だったのですね……。お父様、私の貯めておいたお小遣い数年分をホムラ様に!!」
「えっ、重い……じゃなくて、そこまでしなくても大丈夫ですよ! フランからお金も貰いますし。ミリーさん、金貨を!」
「あ、はい。こちらになりますよ~」
「ちょッ!? えっ! な、なんでミリーが持ってるのよ!!」
呼べば何とかなるものだと、メイドさんの凄さを改めて思った。
いざとなれば主人をも裏切る姿勢もまた、メイドの生き方なのかもしれない。
(ミリーさんもお出掛けに参加したかったんだろうな……)
ミリーさんの裏切りは、自分を置いていくフランに対する当て付けなのだろう。ま、俺には関係ない事だ。
裏切っても結局はついて来れないミリーさんと、渡すべき報酬ではあったのだが、自分のメイドに裏切られる形になったフラン。どこにも救いは無さそうだ。
「あなた、そろそろ行きましょう? ラランとお買い物なんて……何でも買ってあげるわよぉ」
「いや、何でもとは……」
「あなた?」
「わ、分かったからそう睨まんでくれ……パリュレ、財布は……」
「旦那様の私財を用いて良いと奥様から仰せつかっております」
あからさまに肩を落としているランドール氏を慰める人は誰も居なかった。
しかも、そんなランドール氏を置いてきぼりにして女性陣は馬車へと乗り込んで行った。
今日は人数の都合上、二台用意してある馬車。いくら貴族とは言っても、馬車を個人で何台も持てる物なのか疑問である。
一台が車と同じ値段と考えても、ガソリン代の代わりに馬のメンテナンスや御者さんの賃金と、維持費は相当掛かるだろう。タイヤ部分なんて壊れやすいだろうし……。
「ご主人、質問良いですか?」
「あ、あぁ……何かね?」
「貴族の方って、どうやってお金を稼いでいるんですか?」
「まぁ、貴族もいろいろ……という事を踏まえて言うとだね、私腹は自分で働いて稼いでいるのが大半だろうね。領地から集める税は領地の為に使うからね」
なるほど。裏でヤバイ事をやっているのも一部居る……と。
やはり貴族は関わるのも目を付けられるのも危険な存在という訳だ。この王都で、いったいどれくらいの人が貴族という役職に就いているのかは知らないけど、結構居そうな雰囲気はある。いざとなったらタルトレット家に守って欲しいが……男爵はどこまで力があるんだろうか。
「何してるのよー? 早く出発……あわわわっ!」
「危ないでしょフラン?」
「お姉様! ありがとう」
そろそろ出発。今日はランドール氏にお金を出して貰えるという事らしいし、師匠の教えのひとつでもある『金を出してくれる人を立てろ』というものを実行していこうか。
錬金術師は自分で素材を手に入れる時間を惜しめるのなら、極力惜しむ人が多い。つまり、お金が要る……と言うことは、だ。お金を持っている人にすり寄る技術はあれば得をする。
「では、参りましょうかご主人。今日は俺というよりも、ラランさんとのお散歩が主ですから……楽しむ感じで。ビスコも」
「そ、そうか……そうだな! わははっ! ラランとの散歩なんて数年振りか」
「そろそろ女性陣の痺れが切れそうですので、急ぎましょうか。肩身が狭くなる者同士……皆で協力致しましょう」
お散歩と言いつつ目的地付近までは馬車で行くという……何ともお金持ちっぽい行動で、俺達は貴族街のショッピングモール的な場所へ向けて出発した。
◇◇◇
女の人と買い物に出掛けた時の、男の役割なんておよそ二つだ。
荷物持ち。それか、財布である。
ただ黙ってその役割さえやっていれば良いのならとても楽だろう。だが、女というものは何かと意見を求める。それも相手を試しながらだ。
そして、少しばかりお馬鹿ちゃんとは言え、目の前で二つの洋服を手にしたフランも性別は女だ。
しかもお馬鹿ちゃんだけあって、相手の表情から察するという事をしない。自分の気になる事を解決させる方がはるかに重要と信じて疑ってないのである。
「青のワンピースと黄色のワンピースどっちが良いと思う?」
「知らん」
「えぇ~? 良いからとりあえず答えてみてよぉ~。ねぇ、どっちが良い?」
「どっちでも……どっちも良いんじゃない?」
「なによぉ! さっきは私が一番美しいって言ってくれたじゃん!!」
俺が言ったセリフと微妙に違う気がするが……これ以上ハッキリしないのは時間が掛かるだけだろう。
ランドール氏は奥様の近くでアワアワしているし、ビスコとラランさんは各自で見たい服をみている。
特に服に興味の無い俺は、端の方でキャサリンさんと居た所をフランに捕まっていた。いつの間にかキャサリンさんが居なくなっているのもよく意味が分からないし……。
「はいはい。じゃあ、黄色で」
「えぇ~黄色ォ~? 髪から靴まで全身黄色になっちゃわない? それで大丈夫なの~?」
「知らん」
「テキトーにしないでぇッ!?」
髪は金髪だし、たしかに服を黄色にしたら存在感の塊になりそうだが、靴は知らない。好きなのを履けば良いと思うのだが、そこは揃えるべきとフランの脳は判断しているのかもしれない。
(服か……そう言えば、先生ってどんな服を着てるんだろうか?)
錬金術科の先生だし、雑に白衣とかで良いのだろうか? それとも普通にビシッとした服装なのだろうか。
先生という職業……この世界も同じかはまだ知らないが、やはり公務員みたいな感じだとすれば、しっかりしていないと駄目かもしれない。
「フラン。たしか学園に通ってるんだよな?」
「そうよー、フフン! 優秀なんだから! 凄いでしょー」
「先生ってどんな感じなんだ?」
「先生? 担任の先生は厳しいけど……魔法科の先生はねぇ、優しいわよ! 褒めてくれるもの」
「服装は自由なのか?」
「基本は制服よ? ま、運動する時とか魔法の時はそれ用の服に着替えるけど! 私の凛々しいローブ姿を見せてあげたいものね」
「先生もか?」
「……ね? 私の話ちゃんと聞いてる!? さっきから質問ばっかじゃない!?」
「聞いてるぞ。制服をローブにしたら凛々しく怒られてるんだろ?」
「聞いてないじゃない!? 混ざってる! 混ざってるから!!」
しまった……あまりにも先生の服装に話を持っていこうとし過ぎて、そこまでのフランの話自体はざっくりとしか聞いていなかった。
まぁ、そこまで重要な事を言っていた訳でも無さそうだし平気だとは思うけど。
「先生の服装はどうなんだ?」
「……ねぇ、なんでそんな事ばかり聞くの?」
疑いの眼差しを向けてくるフラン。何を疑う事があるのか甚だ疑問なのだが、さっきの会話でフランを怒らせているっぽい。なるべく刺激は与えない方が良いだろう。
ここは……テキトーに言っておくか。
「学園に通った事ないからな、気になって……」
「そう……。そういう事なら私が何でも教えてあげるわよ!」
ただの事実だが、事実であるが故に感情を乗せやすい。できるだけ悲しそうに、可哀想な子を装ったらフランなんてこの通りだ。
チョロ過ぎて一瞬、俺の演技が上手いのかと錯覚したが……これはただ単に、フランがチョロ過ぎという問題だな。逆に心配になるレベルである。
だが、その隙をついて学校の先生についていろいろと聞き出した。
担任や各科目の先生に、服装の縛りは無いらしい。代わりに、先生には先生と分かる紋様入りのバッジが配られるらしく、それは着ける必要があるみたいだ。
(弁護士バッジみたいなものか? まぁ、そういう事なら服装は白衣とかでも良いのかね)
フランの話を軽く流して、他の服には興味ないが、とりあえず白衣に近い物を探し始めた。どうやらこのお店の販売している服のレパートリーは多いみたいで、ありそうな気もするが……流石に白衣は無いのかもしれない。
最終手段は布を購入して、自作するか日本に買いに戻るかだな。
いろいろなギミックを仕掛けるのもアリと考えれば、面倒だが自作が良いかもしれない。
「従者~、この靴可愛いと思わない?」
「走り難そう」
「可愛さの話してるの!」
「機能性の話だろ?」
今日、フランとはずっと何かズレてる気がするな。別に良いけど。
とりあえず、ランドール氏に白い布を買って貰おう。服を買ってもらうより安上がりだし、これくらいの買い物なら財布もそこまで痛まないと思う。
後をついて来るフランを気にせず、ランドール氏に布を渡しに向かった。既に奥様の洋服代で大変な事になりそうなランドール氏を見て「やっぱり……」と、買って貰うのを躊躇しそうになった。
「か、構わんよ……むしろそんなに安いので良いのかな?」
「えぇ、素材はとても良いですから。ははは」
「はは……はぁ。本当に助かる。またお金がある時にでも何かプレゼントしよう」
「あなたー? これとこれ、どっちが良いかしらぁ?」
惚れたが負け――。ランドール氏の背中が、そう語っているように思えた。
この店での買い物が終わるまで、俺はまた隅っこの方に居よう。何故かそう強く思った。
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