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第25混ぜ 時短は良いこと


お待たせしました!

よろしくお願いします!(´ω`)



 


 アトリエは平屋だ。外側から確認しようが、内側から確認しようが、二階はない。それにワンルームで、他の部屋への入口もない。

 ただ、五〇平米くらいの広い部屋だ。大釜を置くスペース、暖炉、家具を計算に入れると、少し狭くはなるだろうが……それでも十分に広い。

 トイレは外にでも作れば良いから問題はないし、家の横に水汲み場もあったから、設備に問題も特にない。

 自分て作っても良いけど、テーブルや椅子はせっかくだから買って来ようかな。近くに店は沢山あるのだし。


「ホムラ様の懸念は分かってるつもりですよ」

「……えっ?」


 アトリエの内装を確認していると、不意にキャサリンさんがそう言った。

 もしかして、家具の件について顔にでも出ていただろうか? 仮にそんな顔をしていたとして、的確にわかる方が異常な気がするけど。


「このアトリエで一人が……寂しいのですよね?」

「違いますけどっ!?」

「ご安心を。アトリエの警備や掃除などの雑用は、引き続き私が致しますので……今後もお側に仕えさせて頂きます」

「あ、はい。それはお願いしますけど……別に寂しいからキャサリンさんに居て欲しい訳で――いえ! 寂しいですっ!!」


 キャサリンさんからの鋭い眼光。

 キャサリンさんに関する、キャサリンさんの望まぬ回答は、どうやら許されないみたいだ……。今後もこれで黙殺されるというなら、俺の胃はどんどん荒れそうだ。


「ふふっ……やはり、そうでしたか。まだまだ甘えん坊ですね、ホムラ様は。それと、午後には家具が届けられる予定になっておりますので対応はお任せください」

「あぁ……本当の懸念の方も大丈夫だったんですね。流石です」


 俺がキャサリンさんから視線を外して、家具の配置をどうしようかと部屋を見渡すと、何やら師匠がビスコを使って鏡を設置していた。

 高さが約一七〇センチメートルありそうな鏡だが、師匠なら運ぶのに他の人の力は要らない筈で……そこから、謎の非力アピールをビスコへぶつけたのだろうと推測できる。

 ビスコは何の疑いもなく、了承したのだろうな……たぶん。


「そうそう、そこの壁際にお願いね! あー、助かっちゃった。ありがとう」

「これくらい、お安いご用ですよ。して……この鏡は? 微かに魔力を感じるのですが……」

「おっ、ビスコ君! わかる? わかっちゃう? わかっちゃうよなぁ~やっぱり! うふふ、これはねぇ――」


「ただの鏡と見せ掛けた……転移装置ですね、師匠」


 答えを奪ってしまった俺に、師匠が恨めしそうな瞳を向けてくる。

 俺は師匠よりも先に、疑問の顔で鏡を見ているビスコへ簡単に説明してあげる事にした。


 転移装置とは言っても、鏡を設置したA地点から、対応させた鏡を設置したB地点までを繋ぐものだ。知らない土地に(ゲート)を開いて転移とか、一方通行的に飛ばされる訳ではない。

 あくまで、対応させた鏡を繋ぐ役割を持っている。

 魔力を注ぐ事で、空間を歪め、別次元を通り、到達する。入口の座標と出口の座標を重ねるという工程を、魔力によって行うのだ。


 相当の魔力が必要と思うかも知れないが、それが意外とそうでもない。下手な錬金術師が作ればその可能性もあるが、作ったのは師匠だ。

 師匠が作ってるという事は、それつまり最大効率でアイテムが使えるという事になる。

 思考を放棄すれば「つまり師匠は凄い!」という一言だけで、簡単に納得する事ができるだろう。


「――ビスコ、説明は以上ですけど何か分からない事はありますか?」

「分からない事だらけなのですよ……? ですが、とりあえず人に話せる内容ではないとだけ、理解できます。空間魔法の使い手は貴重ですし……それが作れるというのはなんとも……」

「あっはっはっ、軍事利用したら大変ですよね」

「ホムラ……笑い話じゃありませんよ? 権力者で転移魔法の有用性を知らない者はいません。つまり、バレたら拘束してでも連れ去られます」

「そこまで?」

「そこまで、です! 新たな発明として報酬や地位をエサとして、ずっとこの装置を作らされるでしょう」


 ふむ……。

 やはり、錬金術が進歩してないのが原因だろうか。

 師匠みたいに転移装置自体は作れる者は作っていたし、利用していた。日本に居た頃はだが。

 ただ、下手に魔法が普及したこの世界では、錬金術がより遅れた世界。師匠……いや、俺でさえ何かを作ってしまえば、それが最新の技術になってしまうくらいには遅れている。

 つまり、この世界の人――シララさんとかこの世界の錬金術師が転移装置を作らない限り、公表してはいけないアイテムという事なのだろう。

 ビスコの言うとおり、国、教会、その他あらゆる権力者に狙われかねない。

 種族間の戦争は無いものの、国家間での争いまで無い訳ではないし、本当に軍の移送に使う事になれば一気にパワーバランスを壊してしまうだろう。


(元々、言いふらす予定は無かったけど……ビスコ以外には言えないかもなぁ)


 例えばフラン――簡単にバラすだろう。本人はただ凄いというのを広めたいと思うのだろうが、後先考えずに動く。


 例えばミルフさん――受付のサリュさんにだけと言って、話してしまいそうだ。ギルドの受付嬢からギルド長へ……そこからの展開は深く考えずも最悪と分かる。


 この二人に比べれば、圧倒的にビスコは安心感がある。もちろん、フランにもミルフさんにも、教えないといけないタイミングが来るかもしれない。

 でも、とりあえずその時までは言わない方が無難だろうな。


「では、秘匿(ひとく)という方向で……師匠、酔ってペラペラ話しちゃ駄目ですよ?」

「キミは私を何だと思っているんだ……まったく。それで、どうする? 試しに使ってみるかい?」

「い、良いんですか!? 最初に使っちゃっても!」

「良いとも。ついでに朝食のパンでも買ってきておくれ」

「了解です! では――ちょっと行ってきます」


 転移装置に触れて、魔力を流す。

 鏡の部分が波打ち出して、それが収まると、正面に立つ俺を反射せずに別の景色が現れた。

 それは、王都に来る前に使っていたアトリエの景色。師匠が出発前に設置しておいた鏡へと、無事に繋がった。


 右手を鏡の中に入れてみる。

 水面から水中へと手を入れる感覚が一瞬だけあるが、通過した右手の指もしっかりと動く。次元に切断させるという事も無かった。

 師匠達を一瞥(いちべつ)し、勢いをつけて鏡の中へと飛び込んで行った。


 ◇◇


「おぉ~、一週間の短縮。長旅をしなくて良いというのは……素晴らしき」


 戻ってきたアトリエの中を見渡して、心からそう思った。

 冒険者の自慢話を聞かなくて済むし、退屈な時間を過ごさなくて済む。まぁ、王都以外に出向く時はやはり移動しなければならないのだが……片道だけで良いというのが分かれば、我慢もできるというものだ。


 振り返った所に置いてある鏡は、一見(いっけん)すると普通の鏡。

 これなら転移装置とバレる事も無いだろう。


「よし……せっかくだかし、やることやっておきますかね」


 最優先事項である、朝食の入手。そして……ミルフさんへの依頼を。

 アトリエを出て、まだ十日近くしか離れていないというのに、どこか久し振りに感じる街を行く。

 王都と違って人はそこそこ居る程度。やはり、人は少ない方が落ち着けて良い。


「すみませーん」

「おぉ、久し振りじゃねぇーか! 王都からもう戻ったのか?」

「えぇ、まぁ……急ぎで……。そ、それよりも! パンを幾つかお願いします。今日はお金もありますよ」

「金は良いって、前に貰った小麦粉分として持っていきな!」


 今日も今日とてライオンのおっちゃんは、見た目に反してとても優しい。

 なら、ありがたくパンを頂いていこうか。


「実はですね……これからは王都に居る事も増えると思うので、小麦粉は師匠が持ってくる事になると思います」

「そりゃ、王都にも店を構えるって事か? スゲーじゃねぇか!!」

「ま、まぁ……細々とですよ。たまにはパンを食べに来る事もあると思うんで、その時はお願いしますね!」

「おうよ! いつでも待ってんぜ!」


 美味しいパンを幾つか袋に入れて貰い、それをいつもの鞄に入れて店を出た。

 その足で、少し離れた所にある冒険者ギルドへと向かう。

 そこで「しまった……」と慌てて鞄の中を確認するが、捜し物はなく、肩を落とす。

 サリュさんに定期的に格安でお菓子を売っていたのだが、俺が王都に行っている間は当然、待ってもらっている状態だ。

 あぁ、見えてサリュさんは力が強い――正確には、お菓子を欲した時に凄いパワーを出すのだ。そこは女性特有って感じがするが、それにしても強い。ただの受付嬢って気がしないくらいに……。


「もうしばらく待たせて、お土産でお徳用チョコでも買ってくれば良いかな……」


 いつも渡しているのは簡素なお菓子。

 下の肥えた人なら、満足しないぐらいの質。それでも、この世界だと喜ばれるのだが……やはり、日本にあるお菓子の質には到底敵わない。

 日本ではお店に出せないレベルの、子供が休日に焼いてみたぐらいのクッキーを俺は格安とはいえ売っている訳で、そこは少し罪悪感もある訳で。


 そんな事を考えていると、いつの間にか冒険者ギルドの入口が視界に入ってきた。

 少し落ち着いた時間帯なのだろうか? いつもは外からでも聞こえてくるギルド内の喧騒が聞こえてこない。

 不思議に思いながらギルドの前まで来ると、答えはすぐに分かった。


「緊急クエスト……?」


 入口にそう書かれた紙が貼り出されてあった。

 最近は文字も読める様になってきたと自分に感動しながら、読み進めていく。


「えー……っと、『りゅうしゅわいばーんがモリにあらわれました。ぼうけんしゃのみなさまは、かくにん、とうばつのクエストへでてください』……か。ワイバーン……きっと良い素材が採れるんだろうけど、完全に乗り遅れたなぁ」


 この様子だとミルフさんも緊急クエストに出向いているだろう。そうは思ったのだが、ギルドで帰りをいつまでも待ってる訳にもいかない。

 俺はサリュさんに伝言を残しておこうと、ギルドの中へと入っていった。


「あれ!? ホムラ様じゃないですか! いつお戻りに?」

「こんにちはサリュさん。さっきですよ」


 すっからかんなギルド内に誰かが入ってくれば、普通に受付嬢も気付く。そして、サリュさんとすぐに目が合った。


「そうですか……あれ? ですが、出発が一週間くらい前だったと記憶してますが……」

「――ッ。そんな事よりサリュさん? 甘いお菓子の話があるのですが……」


 受付の場所まで進み、突かれたくない話になりかけたタイミングで、声を潜めながら強引に話題を切り替えた。


「あ、あるのですか……そんな美味い話が」

「えぇ、ちょっとミルフさんへの伝言をお願い出来るのなら、格安も格安でチョコやらクッキーを仕入れて来ます」

「くっ……そんな美味い話があるなんて……。う、裏があるんでしょ? そうなんでしょ!?」

「実はミルフさんへの依頼料がパン代で無くなったので肩代わりをですね……」


 普通の間合いに戻して、ここからはお願いしたい事をサリュさんへ伝えていく。


 ・ミルフさんへ、素材調達の依頼

 ・依頼内容の生き物毎にタッパーへ入れ、ラベリングをする等の説明。

 ・入れ違い防止の為、戻って来たミルフさんからその素材を預かっておいてという事。

 ・回復薬と魔力ポーションのアイテムを渡しておいて欲しい事。

 ・最後に、依頼量の肩代わり。


「――というのをお願いできますか?」

「かなりの量の動物の心臓をお求めになるみたいにですが……」

「ちょっと錬金術の素材に必要でして。調整が必要な案件ですから……一度で成功はまず無理なんですよ、なるべく早く作り上げたいとは思ってますが」

「なるほど、そうでしたか。分かりました! では、ミルフが戻って来たらしっかりと伝えておきますね!」

「では、えっと……コレとコレと……コレもアレも」


 自分の鞄から、受け取る側のサリュさんと、狩りに行く側のミルフさん用の、二つのマジックバッグを取り出した。

 次に、よくあるプラスチックタッパーを十個近く取り出して、ミルフさんへ渡すマジックバッグの中へと入れていく。


 マジックバッグは劣化防止の細工を(ほどこ)しているし、入れている間は品質が悪くなる事はない。それつまり、安心して長時間の労働を課せるし、ミルフさんも安心して狩りができるという事だな。

 そして最後に、回復アイテムを入れておくという……優しさに見せ掛けた、なるべく短時間で依頼を終わらせて欲しいという気持ちを込めて、サリュさんへと(たく)した。


「では、お願いします……」

「す、すいません……いま見たことない入れ物と高ランク冒険者でも中々買えない高品質の回復アイテムが入ったのですが……」

「あっ!! すいません、紙とペンの準備を忘れました……」

「あ、いえ……それくらいなら私が渡しておきますが。それより……あの高品質の回復アイテムは、もしや……ホムラ様が……」

「えっ、やってくれるんですか? 助かります! では、しばらくしたらまた来ますので! お願いしますね!!」


 面倒臭くなりそうなサリュさんの台詞を全て無視させてもらい、俺は冒険者ギルドから逃げ出した。

 とりあえずこの街でのやる事は、ほぼ終了である。

 一度王都へと戻り、師匠やキャサリンさんへといろいろ話し、師匠から『世界繋ぎ(コネクト)』を借りるだけだ。


 まだ準備段階ではあるけど、一先ず終わりまでの目処は立ったと言えるだろう。


 久し振りの世界。とりあえず、着いたらジャンクフードでも食べたいかな。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


感想とか貰えると、喜んじゃいますよ?

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2020/1/11~。新作ラブコメです!٩(๑'﹏')و 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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