第24混ぜ 新しい拠点
お待たせしました!
つ、ついに残弾の消滅……
2日置きが3日置きになるかもしれませんが、なるべく早く書いていこうと思います(´ω`)
よろしくお願いします!
「お姉様~! お姉様~? 入りますよー?」
フランが屋敷中に響きそうな声で、部屋の中に居るだろう姉を呼ぶ。
そして、部屋から返事が届くよりも先に、ドアを押し開けて入っていった。
「フラン……?」
「お姉様! 今日は嬉しいお報せがあるんです!」
部屋の中は、天蓋付きベッドが四割程度の広さを占領していて、他は机、椅子、タンス、床に綺麗な模様のカーペットが敷かれてあるくらいだろうか。
フランが開け放ったという事を理由として、勝手ながら部屋へとお邪魔させて貰った。
そして俺は、椅子に座ってティータイムをしているラランさんを見てホッとしていた。
フランとラランさんを見て分かる違い。
容姿なんかは、それこそ姉妹だと分かるくらい似ていた。ラランさんはその綺麗な金色の髪を一つ結びしていて……フランは二つ結び、ツインテールってやつにしている。
ただ、俺が安心感を得たのは、その落ち着き具合だ。
家族の中に知らない人間が混じっているというのに、騒ぐこともなく、何を聞くでもなく。そこまでされると、単純に興味が無いだけなのかもしれないが……。
だいたいの雰囲気は伝わって来たが、やはり少し……顔色がよろしくない。
元々美白なのだろうけど、体調の悪さが伝わってくる程の白さである。
フランが駆け寄っても笑顔を見せない。
それでも、騒がしい妹の頭を撫でる姿は『優しい姉』というフランの言っていた像に当て嵌まっていた。
「お姉様を治せる者を連れて来ましたよ! ようやく見付けたんですっ!!」
「そう……フラン、ありがとうね」
静かにフランを褒める姿は、教師が生徒の頑張りを褒める様な、お手伝いをしてくれた子を褒める母親の様な……嬉しさだけを受け取っておく、そんな感じに見えた。
今まで、ラランさんの元へ医者や神官を連れてきた事があったらしいし、その延長だと思われているのだろう。
『きっとまた治らない。でも、ありがとうフラン』といった感じだろうか……。
「従者ー? 早く、早く!」
「あー、はいはい。初めまして、名をホムラと申します」
「フラン……この方が?」
「うん! これでお姉様も、お姉様も……ひぐっ……うぐっ……うわぁぁぁぁん!!」
感極まったのか、フランがいきなり泣き出した。
そんなフランの頭を優しく撫で続けるラランさん。
感動的なのか、後ろからランドール氏のすすり泣く声まで聞こえてくる。
俺からすれば、今日あったばかりの家族に対して流石に感情移入できる筈もなく、ただ空気が落ち着くのを待つしか出来なかった。
数年前までなら自分の作業を優先して、フランを部屋から追い出していたかもしれない。うん……これが成長ってやつなのかもしれないな。
「フラン、泣き止んだらなら外で待っててくれ。騒がしいから」
「酷いっ!? い……イヤよ、イヤだわ! お姉様と一緒に居るんだからぁ~」
「じゃあ、静かにしていると約束できるか?」
「しますします! 約束しますから~、追い出さないでぇ!!」
どうせ、約束は守られないだろうと察している。
普段は固定観念に囚われてしまうリスクがある為、あまりレッテルを貼る事はしない。
しないのだが……殊フランに関しては、そういう奴であると決め付けても良いのかもしれない。そう思い始めていたというか、もう既に思っている。
「座らせて貰いますね。作法を知らないのは、平民だからとご容赦ください」
「えぇ」
「何か、私と態度違っ……はいっ! 黙っておきますぅ!!」
「……よろしい。では、ラランさんまずはコレを」
都度三度目になるが、タルトレット家の人間に例のアイテムを手渡した。
それを手にしたラランさん。どんな表情を見せるのか、少し期待していた。
フランやランドール氏と同じく驚くと思っていた。
だが――ラランさんの反応は、とても静かに涙を流しただけだった。
その涙にどんな意味があるのか、どんな感情が込められているのか、生憎だが俺には理解できない。本人もきっと、簡単に共感なんてされたくは無いだろう。
「よろしく……よろしくお願いしますっ……!!」
ただ、その感謝の言葉だけで、伝わる事もある。
どこか諦めた様な表情をしていたラランさんも、ちゃんと助かりたいと思う気持ちを持っていたのだと伝わってきた。
「時間は少し掛かるけど、任せてください。それと、協力もお願いしますね。貴女を助けるには貴女の協力は不可欠ですから。それと……俺に感謝は要りません。感謝ならフランやお父様へ」
「はい。それでも、貴方に最大の感謝を」
「……受け取っておきます。とりあえずそのアイテムは預けておくので、辛い時は触っていてください。長く持ち過ぎると一気に魔力が無くなるので注意が必要ですけど」
これで一先ず、ここに居る必要は無くなった。
フランもラランさんと居たいだろうし、部屋から出て行った方が良いだろう。
俺はビスコと目配せをして、部屋から出ようとしたのだが……立ち塞がる様に立っていたランドール氏に止められる。
「今日は家に泊まっていくと良い。あぁ、遠慮は要らないぞ。空いている部屋ならあるからね!」
「いえ、俺達は……」
「大丈夫! 大丈夫! 晩御飯の心配をしているのだろ? 今、新鮮な肉や魚を買いに行かせている所だ! わっはっはー」
「では一晩、お世話になりますね」
「ビスコ!? 食べ物に釣られるとは何事です!!」
話の通じないランドール氏、そして、基本的に腹ペコなビスコ。
この二人が揃うと手に負えない。そして、そこにフランからの更なる追い討ちがあり、今日は泊まる流れに決まってしまった。
明日の朝にギルドまで送ってくれるという話が出て、しぶしぶ俺も頷いた。
(部屋に行ったらやることメモでも書きますかね……)
◇◇◇
――タルトレット邸で一晩過ごし、朝。
とある一室の、朝食が並ぶ食卓には、ランドール氏、奥さん、フラン、俺にビスコが着席している。メイドさん達は壁際で静かに佇んでいるが……ラランさんは居ない。
昨日の夜に紹介された奥さんは、貴婦人も貴婦人。リアル「オホホ」を聞けて感動までしてしまった。
優雅であるが、気難しい訳ではなく、俺とビスコを歓迎してくれていた。
特に、有名な劇団の役者並みに顔が良いビスコは気に入られているみたいだった。
「ビスコさん? 朝食はお口に合いまして?」
「はい。とても美味しいです。良き料理人を雇ってらっしゃるのですね」
「従者、従者! このフルーツは私がカットしたのよ?」
「ははっ。どうりで汚ねぇ訳ですな?」
「な、なんですってぇー!?」
「冗談だ。美味いぞ、このフルーツ」
「あっ……え、えへへー。でしょう? そうでしょ! 当然よね、だって私がカットしたんだもん!」
得意気に笑うフランを程々に、朝食を終わらせて、さっそくギルドへと向かう準備を整える。
「えー、もう帰っちゃうのぉ?」
「いろいろ準備があるからな。しばらくは来ないぞ」
「えぇー。主居るところに従者ありでしょー」
「違うな。従者居るところに主ありだ。主が居るから従者が居るんじゃなくて、従者がいるからこそ、主は主たりえる事になるか……」
「あばばばば……主が、従者で……従者は従者で……あばばばば……」
よし。これでしばらくは混乱していてくれるだろう。
ビスコに渡しておいたメモには、フランやラランさんにやって貰いたい事もメモしている。とりあえず一度、ビスコも連れて屋敷を出るが、その後は任せておいても大丈夫な筈だ。
「じゃあ、行きましょうかビスコ」
「えぇ」
屋敷を出て馬車の待つ門まで歩いていく。
見送りにはランドール氏と奥さんがついて来てくれて、俺達が馬車に乗り込むまで送ってくれた。
馬車から屋敷全体を改めて見て、金持ちという存在を再確認していると、一つの窓に人影が映っていた。
ゆっくりと手を振るその姿に、軽くお辞儀を返した所で馬車が出発した。
まだやる事は残っているが、とりあえず状況は転がりだした。
後は勢いのまま突っ走るだけ……と気合いを入れた瞬間に、ひとつ思い出した事があった。
(そういえば、まだ金貨貰ってなかったなぁ……)
そんな理由で走り出した馬車を止めるわけにもいかず、記憶の片隅にだけ置いて、到着までしばし目を閉じておくことにした。
「ホムラ、そろそろ着きそうですよ」
移動を初めてから三十分くらい経っただろうか、目的地まで辿り着いたみたいだ。
馬車の小窓から外をみると、たしかに見たことのある景色が広がっていた。
今日は祭りのメインイベントである武術大会が開催される日。人も当然多く歩いている。
それでも馬車のスピードがそう遅くならなかったのは、馬車に刻まれた貴族の家紋のお陰だろう。
中に入っているのがただの一般人と知ったら、譲った人達は果たしてどうなるだろうか……そこそこ気になる疑問だが、顰蹙を買っても面倒。今回はこのチャンスを見逃しておこう。
「あっ、師匠とキャサリンさん……もう来てるみたいですね」
「あはは……目立ちますね、特にキャサリンさんは」
メイド服はそこまで珍しく無いにしても、キャサリンさん自体の存在感の強さが、きっと目立つ原因だろうな。
ギルドの前で泊めてもらい、馬車から降りた俺達は御者さんにお礼を告げた。
この御者さんはビスコを再度屋敷に運ぶ仕事が残っている為、指定の場所で待機しておいて貰う予定になっている。
俺はしばらく会うことが無い。ダンディーな御者さんに再度お礼を言っておいた。
「おやおや、だいぶリッチだねぇ」
「お待たせしました師匠、キャサリンさん」
「ご無事でなによりです。ホムラ様、ビスコイト様」
軽い挨拶をした俺達は、キャサリンさんの主導で人の波に逆らう様に街を歩き始めた。
道中の時間を使って、昨日のお互いの事をして情報の共有を済ませておく。
俺はフランやラランさんの事を。師匠からはシララさんの事について。
「ふーん。まぁ、受けたならちゃんとやりなさいよ?」
「勿論ですよ。特に難しい訳でもありませんし……それより、俺を学校に入れるって何です?」
「だから~、シララさんが学校の校長先生をやってて……ホムラって学校に通ってなかったじゃない? それも経験かなって」
「そういう事でしたか。たしかに面白そうではありますけど、今更って感じがしません?」
シララさんが姿を偽っていたとか、エルフだとか、校長先生とか、取り立てて思う程ではない。
それこそ、俺の話を聞いた師匠と同じぐらいのテンションだ。
これは興味が無いというよりも、自分で発見した事にしか価値を見出だせない錬金術師の性質と言えるだろう。
逆の立場なら、俺はエルフについて好奇心を丸出しにしていた自信はある。つまり、師匠もシララさんにそれ相応の迷惑を掛けただろうと予想が付く。
「私もいつまでも師匠では居られないのよ? 婚活も頑張らないといけないし。一人立ちして貰わないとね!」
「はぁ……まさか、王都にアトリエを作った理由にそれも含まれているのですか?」
今みんなで向かっているのは、キャサリンさんがギャンブルでボロ儲けしたお金で購入したアトリエ。
清掃も終わっているらしく、着いたらすぐにでも住める状態にはなっているらしい。
王都に来る前に使っていたアトリエと、王都のアトリエ。二つあるという事はどちらかを託されるかと思っていたが……まさか一人立ちさせる為だとは考えが及ばなかった。
いつかは一人立ちする日が来るとは思っていたけど、それはまだ遠い未来の話だとばかり……。
「学校に通いながらアトリエで日々の研鑽。素材も多く集まるし、取りにも行きやすい……良い場所でしょ?」
「たしかにそうですが……。俺はまだまだ師匠に教えて貰いたい事が沢山あるんですよ?」
「憧れたら越えられないよ。ホムラ……私を越えたいなら、この世界で自分を自分で育てなさい。もちろん、いつだって相談には乗るけどさ」
「師匠……!!」
一人立ちしたからと言っても、関係が切れる訳ではない。
頼っても良いと知って、少しだけ安心した。
「ま、コンビニに行く感覚でアトリエの行き来はするんだけどね」
「『転移装置』ですね。秘匿にしないと軍が動きそうですし、知る人を可能な限り最小限にしておかないと」
作れると知られたら、捕まって国土拡張の為に働かされ、争いの日々に突入……なんて状況も考えられる。
それほどに便利なアイテムだ。軽いイタズラから国家レベルにまで使う人によっては問題が大きくなってしまう。
日本に居た頃も、国内は良くても国外への転移は禁止とされていた。厳重注意ではなく、罰が下されるレベルだ。
「皆様、そろそろ到着致しますよ」
中心街からそこそこ離れた、鍛治場や建築業を請け負う店が建ち並ぶ工業区の奥の方にアトリエはあるみたいだ。
今の時間帯、騒音問題になりそうな程の音があちこちから響き渡っているが、この地区ならそういうものだと特に気にしないまま通って来た。
そして、キャサリンさんが一軒の平屋の前で立ち止まる。
赤いレンガで作られたその家は、外観だけなら新築の様にすら見える。
基本的に、この世界はどの家にも煙突が付いている。だが、何度見ても煙突が備わっている家というのは夢があって良いと思える。
日本の都会じゃ珍しい。例えば薪を使う暖炉なんかの煙が、近隣に住む人の所まで飛んでいけば迷惑になって問題となるから……憧れていた部分はあった。
「キャサリンさん。ありがとうございます!」
「いえ、これもメイドとして当然の事です」
それを当然とするメイドが、果たしてキャサリンさん以外に存在するのかは怪しい……。
でも、家を用意してくれたキャサリンさんには感謝の気持ちでいっぱいだった。
外観についてみんなで一通り話した後に、俺達は師匠を先頭に一列となって、ようやく新しい拠点の中へと入って行ったのだった。
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