第11混ぜ 辿り着いたぜ王都!
お待たせしました!
章分けするとしたら、ここから第二章って感じですかね!
よろしくお願いします!
師匠の思い付きを聞いてから、二日が経った。
キャサリンさんの手際の良さなのだろうが、次の日には王都へと向かう商会の一行と話を纏めていた。
そして今日が、その出発の日となっている。
お菓子や料理を溢れない様にタッパーに入れ、料理はホカホカのままで保存しておく。こういう時のマジックバッグは本当に便利だな。
「師匠、行きますよ」
「はいはい。急かさない、急かさないの」
「ホムラ様も、お荷物をお持ちしますが?」
「鞄ひとつですから、大丈夫ですよ」
師匠の、変化が有るのか無いのか分かりにくいお化粧を待って、俺達はアトリエを後にした。向かうのは待ち合わせ所である冒険者ギルドの前だ。
商会のメンバーとして連れて行って貰う事になっているが、こんなご時世だし……当然、商会の一行は冒険者を雇っていた。
王都までは長い。旅に慣れていて、尚且つそこそこの強さを持つ冒険者でないと、盗賊にあっという間に倒されてしまう事になるだろう。
そう考えると、旅に慣れていなそうでパーティーも組んでないミルフさんが担当してくれる事は……ないだろうな。
別の機会があれば良いとは思うけど、王都への護衛任務を発注することはもう無いし、残念だ。
「キャサリンさん、相手の方は大きな商会の人ですか? それとも個人経営の方でしょうか?」
「個人では無いみたいですよ? 大きな町には一店舗出しているかいないかの中規模だとか」
「そうですか……商会の人って聞いたので分かっていましたけど、店舗を構えている商会の従業員なら駄目ですね」
「ホムラ様は、何か売るつもりだったのですか?」
露店を開いている程度の旅商人なら回復薬なんかを売っても良いと思ったが、一度店に卸すと面倒な事になる……と踏んで、それなら止めておこうと思っていた。
店に卸す程の量産が難しいというのが、最大の難点だからだ。
それに比べ、露店なら一期一会的な感じでその場でお金を受け取って後腐れも無い。
「買ってくれるのがあれば、売っても良かったんですけど……またの機会にしますよ」
「左様でございますか。でも、ホムラ様の品ならば高値で売れるでしょうに」
師匠と俺が横に並んでキャサリンさんは少し後ろを歩いる。
少し話しづらいが、キャサリンさんのプライド的に横に並ぶことは無い。指示が無い限りは、主人の前を歩くなんて絶対にしないだろう。
「路銀の足しにでも……とは、思いましたけどね」
「お優しく育ってキャサリンは嬉しいですよ? ハグしますか?」
「いや、しないですけど!? あっ、ほら! ギルドが見えて来ましたし!」
隙あらば抱擁。キャサリンさんの愛情表現なのだろうが、欧米に被れ過ぎて、欧米の人よりも過剰にスキンシップを取ってくる。
質の悪いことに、回避しようとすればするほど、キャサリンさんが本気になる。外じゃなければ危なかっただろう……。
キャサリンさんと居て身に付いた事と言えば、無駄な事に時間を費やさないという諦めの精神と……負け犬根性だけだった。
「キャサリン殿! こちらでございますぞ!」
恰幅の良い、見た目三十代後半から四十代前半のおじさんが、こちらに……と言うよりは、後方に居るキャサリンさんに手を振っていた。
「あの方が、商人のポルトコールさんです。鬼畜な主に『王都までの足を探してこい!』と命令されたと伝え、泣き真似をしたら、簡単に同行を許可してくれた紳士ですよ」
「うん、あらゆる手段を使ってるねキャサリンさん」
「お褒めに与り光栄です」
「して、その鬼畜な主人とは?」
「ふふっ、おかしな事を聞くのですね? 今、私がお仕えしているのはホムラ様だけですよ」
どうりで、キャサリンさんには笑顔で手を振っているのにも関わらず、俺と目を合わせない訳だ。
まぁ、良いさ。必要なのは移動手段であって、ブラウンカラーのオールバックおっさんじゃない。
最初にお礼を述べたらそれで、もう十分だろう。
「初めまして、私はホムラと申します。こちらは私の師匠です」
「どうぞ、よろしく頼みますね」
「おや、これまたお綺麗な女性でございますなぁ~、ご一緒できて光栄でございますよ」
「あらあら、お上手ですわね! ホムラ、こういう所をキミも見習うんだよ?」
何が“ですわね”だ……言っちゃあ悪いかもしれないけど、だから師匠は駄目なのだ。お世辞をお世辞以上に捉えすぎてしまっている。
結婚詐欺師に何度も何度も騙されそうになったのを、もう忘れてしまったのか……。
「ここから王都まで、よろしくお願いします」
「あぁ、はい。今、冒険者の方々が来ますので……そしたら出発になります」
「ポルトコール様はお一人で行かれるのですか? 従者の一人二人はいらっしゃるものかと……」
「いやはや……何度も往復する機会がありますからな! もう、慣れたものですわい。もちろん、キャサリン殿の様な美人のお供なら毎回連れ添うのですがな、アッハッハ!」
あっはっはっはっは……嫌いだわ~。
「すいませーん、あなたがポルトコールさんですか?」
「うむ、いかにも。君達が護衛の冒険者かね?」
「はいっす! 緑ランクパーティー『蒼玉の眼』です! では、メンバー紹介ィィ!!」
「「はっ?」」
初めておっさんと息が合ったな。おっちゃんにランクアップしといてあげるか。
俺とおっちゃんの戸惑いを余所に、槍を持った男が饒舌に話し出した。
「まずは俺! パーティーリーダーの~『シュミ』だ! 槍使い! よ ろ し く!」
「次は私ね! サブリーダー『ミナ』よ! 魔法使いで得意魔法は火と風ね!」
「剣士『マネー』。よろしく頼む」
「荷物持ちで薬師見習いの『ハハラ』です。よろしくお願いします」
明るくムードメーカーらしき槍を持つ男のリーダー、魔法使いで少し気の強そうな女のサブリーダー、それに仕事はしっかりこなしそうな剣士と他のメンバーよりは少し若そうな薬師。
パーティーとしてはバランスが良さそうだ。
まだ全員が十代っぽそうなのに、緑ランクなのは中々じゃないだろうか。
「そ、そうか……王都までの護衛はよろしく頼むよ」
「任せてください! お前ら、頑張るぞ!」
「もちろんよ!」
「当然だ」
「一生懸命頑張りますね!」
シュミ、ミナ、マネー、ハハラの順に気合いを口に出している。
たぶん、ハハラ君が一番良い子だろうな。たぶんだが。
俺と師匠とキャサリンさんも軽い挨拶をして、皆でおっちゃんの持つ馬車に乗り込んでいく。
おっちゃんは、馬を操縦しないといけない為、一人だけ御者席に移動した。残念そうな顔をしていたが、変わってあげられるのはキャサリンさんくらいだろう。
そのキャサリンさんは沈黙を決め込んでいるし、おっちゃんドンマイである。
「では、皆さん道中はよろしくお願いしやす! 敵や魔物が居たら俺達に任してください!」
「頼んだよ、皆」
「よろしくお願い致しますわ、皆様」
ここでも師匠というよりは、キャサリンさんに圧倒される男性陣。まぁ、はいはいって感じですね。
では、やることも無いし……寝ますかね。
◇◇◇
街を出発してから六日が経った。
釜を掻き混ぜる事もできず、スポーツを楽しむ事もしていない。
そりゃ、長閑な風景は良いものだ。だが、平原なんて一日で飽きる。
移動中は静かに寝て、夕方にすることが無さ過ぎてアイテムで暇を潰し、夜は寝れなくて筋トレをしていた。
今もキャサリンさんは、パーティーの紅一点であるミナさんと楽しくお喋りをしている。なんと言うか……メイドさんは我慢強いと知る良い機会だった。
彼等の仕事上、仕方がないとはいえ自慢話が多い。『◯◯を討伐した』とか『◯◯に行った事がある』とか、最初は凄いと思って聞いていたが、すぐに飽きた。
人のゲームを横から見てるくらい飽きる。
電車や車、飛行機を知っている人からすると、馬車での移動は退屈でしかない。退屈で死にそうだなんて、初めての経験だった。
きっと見知った人達だけしか居ない旅ならば……会話の量も楽しさも違うのだろうな。
そうだ……次、いつ旅をする機会があるか分からないし、頑張って友達作りをしてみても良いかもしれない。
「……まてよ? 友達ってどうやって作るんだ? 錬金でいけるか? 無理か……無理だよなぁ」
「ホムラ様、お疲れのご様子……眠られては如何ですか?」
「あっ……口に出てました? あと、死ぬほど寝てたんで眠く無いですよ」
「明日には着くとの事ですから、もう少しの辛抱です」
師匠を膝枕しながら、キャサリンさんが心配してくれる。
俺ですらこんな状況なのだ。つまり、師匠はもっと――簡単に言えば、“ヤバい”状況になっていた。
「キャサリンの膝は柔らかいなぁ」
「ありがとうございます」
「キャサリン、ここは地獄なのかい? 私は疲れたよ……」
「明日に王都に着きますよ。そしたら、沢山面白い事がありますよ」
「キャサリン? 腹ペコで今にも死にそうな人が居たとして……明日まで待てとか言うの?」
「退屈も経験ですよ。退屈をしらなければ出ない着想もあるでしょう?」
キャサリンさんは良い事を言う。……でも、俺も師匠と同じで体力はあるのに気力が無いという状況に陥ってしまっていた。
ただ、空の眩しさを確認して……確認するだけという事をしていた。意味の無い行動だ。
馬を休ませる時間帯という事で、走らせずに歩かせているのも要因のひとつかもしれない。
「「暇だ……」」
「おいっ! ミナ、早く来いっ!! 盗賊が出たぞっ!」
「「きっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
今までに、こんな窮屈な状況からのこんな解放感を味わった事はない。
体に活力が戻って来た感じ。きっと師匠も同じなのだろう……声がハモったし。
「ホムラ、盗賊だってね!」
「ですね、師匠! 見ましょう! 見ましょう!」
俺と師匠は体を起こし、冒険者達の声のする方を馬車から眺めようとした。
だが、そこで……底冷えするような冷たい声が、俺と師匠に掛けられた。
「二人共、いけませんよ。盗賊も本気、冒険者様も本気で我々を守ろうとしてくださっているのですから」
戦闘メイドのキャサリンさんである。
戦いと奉仕に生き、死が身近にある戦場を生き抜いてきた人物。言葉に何とも言えない重みがあった。
「あっ、いや……そうですね。すいません」
思わず浮かれてしまった自分が恥ずかしくなってきた。
もし、敵が計画的に犯行に及んでいるのなら、冒険者達だけでは対処できない人数が奇襲してくる危険だって予想できる。
それ以前に、戦いの場において浮かれるなんてあってはいけない事だった。
反論をしてもいい理由がまったく無い。
完全に、俺と師匠が悪く、怒られるしかない案件だった。
「すまないね、キャサリン。気を付けるよ」
「分かってくださればそれで良いのですよ。貴女が盗賊なんかに負けるとは思えませんが、油断はいつだって大敵ですので」
次は貴方の番とでも言うように、師匠の時とは打って変わって、キャサリンさんはいつもより鋭い視線を俺に向けてきた。
「ホムラ様」
「は、はい……」
「敵に主人を殺されるくらいなら、メイドとして私が殺してあげます。喧嘩程度の“お遊び”なら良いですが、命のやり取りをする場で浮かれる者は死にますよ?」
「……っ。すいませんでした。以後、肝に銘じておきます」
「錬金術師であるホムラ様の価値観や倫理感は、しかと存じております。その上で、戦いに向き合ってきた私の価値観を、どうか聞き届けてくださいませ」
最後の方は、怒気が抜けたいつも通りのキャサリンさんに戻っていた。
怖いが優しさで溢れている、いつもの感じに。
キャサリンさんがちゃんと叱ってくれるのは、本当にありがたい事だと思っている。
俺達を守ってくれる為に戦っている人達に対して、悪乗りや浮かれた行動を取ってはならない。……という“当たり前”の事を教えてくれるからだ。
俺や師匠にが少し欠けている当たり前ってやつを。
「ホムラ様は“まだ”弱いです。強さを極めろとまでは言いません……が、心は強くあってください」
「心……ですか。頑張ってみます。お詫びというか、冒険者の方々にはお菓子を贈ろうと思います」
「ここはお詫びというよりも、感謝として贈った方が喜ばれるでしょう」
「なるほど……では、そうしてみますね」
馬車を囲む様に盗賊達が配置されているのか、あらゆる方向から汚い声が聞こえてくる。
馬車の荷台からだと、雨避けの布のせいで外の様子がイマイチ把握できない。
だが、数はこっちが冒険者四人に対し、盗賊は確実に倍以上は居るだろう。
――雑な予測だと不利な状況だろう。
ハハラ君は薬師だ。戦闘職は三人だとすると……危険だと思われる。
「囲まれてるねぇ」
「師匠、落ち着いてないでくださいよ。……コホン。キャサリンさん、冒険者達が危険になったら盗賊の捕縛をお願いします。それまでは待機で」
「承知致しました、ホムラ様」
ナイフや錆びた剣を持った盗賊を、リーダーのシュミが槍で対応している。
距離を稼いで、間合いに入れない動きは良いものだった。
その間に魔法師のミナさんが淡々と詠唱をしている。
独自過ぎる詠唱を堂々と叫んで発動してた魔法は、相手を殺さない絶妙な威力。その技術は、巧みだった。
「マネーさんの動きも、上手く立ち回っているって感じですよね。自分に敵を引き付けて、馬車から少し離れる的な」
「そうですね。もしかすると、私のする事はあまり多くないかもしれません」
「それはそれで良いことかもしれませんね」
――戦いが始まっておよそ三十分。全ての決着がついた。
バランスの良いチームの、バランスの良い部分を発揮出来ていて、結局キャサリンさんの出番はほとんど無かった。
さすがは緑ランクという事だろうな。
見ていて気付いた事だが、敵があまり強くなかった。それも含め、今回はラッキーな戦いだったと言えるだろう。
俺は戻って来た冒険者達に、飲み物とお菓子を提供することにした。
『雨降って地固まる』という程ではないにても、怒られて、反省して、感謝したら、最終日にちょっとだけ冒険者達と打ち解けられた気がした。
おっちゃんとは、特にこれと言って何も無かったけれど。
それからしばらく馬車を走らせ、林道を抜けた先――そのまた先の方に立派な建物が建っているのが見えた。
そして、その周辺に広さはパッと見じゃ分からないが、とても大きな街が形成されている。
パリとどっちが大きいだろうか? 同じくらいかもしれない……街の大きさとかは別に、どうでも良いんだけどさ。
「あれが……王都ですか」
「街を囲っている外壁も高いねぇ~」
「立派なお城ですね……一度掃除をしてみたいものです」
思い思いの感想を次々と喋り、初めて訪れた俺と師匠とキャサリンさんのテンションは高まって来ていた。
目的は錬金術発表会だが、その前に散策くらいはしてもバチは当たらないだろう。
「宿を取ったら各々で街の散策に出ようか!」
「それぞれ行きたい場所も違うでしょうし……良いアイディアですね、師匠」
「ならば、私がお二人の参加受け付けを済ませておきましょう」
「助かるよ。代理で参加受け付けが不可だったらそれで良いから。後はキャサリンも街を見て回りな」
「ありがとうございます、キャサリンさん」
街についてからの予定を立てている内に、王都の近くまで来ていた。入るまでにまた少し時間が掛かるらしいけど、今なら全然余裕で待てそうだ。
少し強めの風が何処からともなく吹いて、肌を掠めていく。
それすらも今は新鮮に感じるくらいだ。これから何か楽しい事が起こる気すらしてくる。
「次の方どうぞ! まずは軽く荷物のチェックをさせていただきます」
厳重とは言えないが最低限はやっているといった感じのチェックを受けて、おっちゃんの馬車と荷台に乗る俺達は、ようやく王都に辿り着いたのだった。
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