全力ダッシュで逆走する少年の人生
ノリで書いてみた。どうなるのか誰か教えて欲しい。
特に何も考えずに生きていた私に夢が出来た。
そのきっかけは一人の魔術師。街から遠く離れた辺境の村の近くに狼の魔物が住み着いたのをどうにかしようと、街へと依頼を出してきてくれた人々の中の一人の女性。その女性こそが私の夢となった。
村の為に安い金額で立ち上がってくれた人々の中でも尤も若かったその女性は、まだ子供である私と一緒に遊んでくれたのだけど、かくれんぼをすると言って村の外にまで出てしまった私を守る為に、無数の狼を前にしても引かず、私を守る為に何頭もの狼を倒して、倒して、そして他の人が助けに来てくれるまで魔力を絞り尽くして気絶した。
その姿に憧れた私は魔術師になりたいと、そう願い、それを冒険者の人々に言うとこんな答えが返ってきたのだ。
「魔術師になりたいなら心を鍛えねぇといけねえぞ」「魔法使うならアレだよ、自然と一体になるんだよ」「筋肉鍛えろ筋肉」「健全なる肉体に健全なる精神が宿るとかなんとか」「30歳まで独身とかになると自然になれると言われている」「ははは、先輩方子供相手に何適当言ってんだオイ、ぶっ殺すぞ」
……よく分からなかったが、とにかく魔術師になるには体を鍛えればいいらしい。
それが魔術師になる為に一番の近道ならばと私は頑張ると誓った。何故だか、憧れの女性が妙に引き攣った苦笑いをしていたのが印象的だったけど。
◆
身体を鍛える為にどうすればいいのか、分からなかった私は冒険者の人達にまた話を聞くことにした。
その話は長くなったけれど、一番の上達の道は山に籠もって只管に頑張るというのが一番らしい。最後にまあ女の子には無理だろうなぁなんて言葉を言っていたけど、私は男なので関係ないだろう。
それはそうと身体を鍛えるには山に籠もるのが重要らしい。それも数日とかだと駄目で年単位でやらなければいけないのだとか。……魔物とかが出たらどうするのか、という疑問には殴れ蹴れ殺せと答えが返ってきたがその手にあるのは分厚い剣とか血に染まった棍棒とかだ。説得力ってなんだろうか。
ただその中で一人影の薄いというか、常識人らしさが滲み出ているお兄さんは苦笑いしながら訂正をしていた。
なんでも子供がそんな事をする必要はなく、それをするくらいならうちの仕事を手伝いながら筋トレとか、戦い方のトレーニングをした方がいいらしい。
山賊顔で何も考えてなさそうな筋肉なオッサンと、優しそうで何処までもお人好しそうなひょろいお兄さん。
どちらを信じるかなど一目瞭然。──当然オッサンたちを信じた。
何故かお兄さんが必死に止めていたが憧れの女性のように立派な魔術師になる為にと私は近場の山へと籠もる事を決定した。
10歳の大決心である。尚、両親は私の決意を聞いて泣いて喜んでいた。──食い扶持が減ると。
それを見たお兄さんは絶望的な顔をして目標とする女性を名を叫びながら走っていった。はて、何かあったのだろうか。
さて、思い立ったが吉日という言葉がある。
それは昔お爺ちゃんが言っていた言葉だった。正直意味は分からない。
だがなんとなくスタートは早い方が良いという意味だと思ったので、私は毛布とナイフとスコップを袋に詰めてそのまま山へと移動した。
尚、その際に実家の奥にあったお爺ちゃんの形見のマフラーを貰っていった。お爺ちゃんが独り立ちする時にくれる約束だったので問題ないと思う。真っ赤なマフラーは正義の証だとお爺ちゃんが熱く語っていたのを思い出した。
首元にはマフラー、背には荷物が入った袋、普段着を来た私が向かうの村から尤も近い山。
大人達が自分を含めて立ち入り禁止にしているその山の名前はない。強いて言うなら魔物の山だ。なんか危険らしいというのは分かるのだけど、それは目標の前では全くもってなんというかアレなのでスルーする。
さあ山籠りだと山に入ったのだけど、どれだけ歩いても木々が多くてなんとも。そう言えば私はどちらから来たんだろうか。右側から来たような気もするし、左から来たような気がする。後ろを見ると何故か川があった。……はて?
これは、おそらく魔物の仕業に違いない。私は知らない内にワープさせられたのだろう。魔物だからなんでもありでも驚かない。だってあいつ等火とか吹くし。
でもまあ、川が近くなのは良い事だと思う。毎日の水汲みは辛かった。釜一杯にするのに何回か往復しなければいけなかったから本当に大変だ。でも此処ならすぐに使える。ナイスアイディア。
だからここら辺にとりあえず済む事にする。寝る場所は考えてなかったけど、近くに兎の巣みたいな穴があるのでそこのウサギを狩りつつちょっと間借りしようかなと。晩御飯と一緒に自宅ゲットで一石二鳥の予定、だったのだけど。
巣穴だと思っていたのに兎はいなかった。むしろ兎が住むには広い場所に出た。なんか石で出来ているらしい。……これ、迷宮じゃないだろうか?
そんな事を思ったのだけど、まあ、これも体を鍛えるのには丁度いいだろうと、とりあえず此処をキャンプ地とする。
お爺ちゃんが言っていたけど、迷宮は入り口とかは安全で魔物に合わないらしい。なので水場が近い此処は多分とても安全。
とりあえず今日は歩き疲れたので眠る事にする。おやすみなさい、お爺ちゃん。