純人間の少年 3
「はあっ……はあっ……」
アスラの体はすでにボロボロである。マキナに抱きつぶされかけ、かつララスのソニックブームまで直撃したとあっては満身創痍となってもなんら不思議ではない
「あ、いし……きが……だめだ……ここで倒れたら……二度と起き上がれない……」
それでもアスラは足を止めない。
「あら?アスラさんじゃありませんか、毎朝大変ですね」
芳香とともに姿を現したのは花を纏った少女だった
自然と同化し支配するもの「アルラウネ」である
「ああ……フウラウ。なれ……ないね、これ……ばっかりは……」
「今日はまた一段と傷が深そうですね?」
「ちょっとね……」
「うーん、それではこれを差し上げましょう。元気が出ますよ」
フウラウが差し出したのは華やかな花束であった
露出が増えているのを見ると纏う花から急遽こしらえたのが分かる
「ありがとう……でも今は、心の充足よりも体のダメージがね……」
「はい?これは食べるものですよ?」
「へ?」
半開きになったアスラの口へと花束が押し込まれた
「もがもごもが!?」
「ちょっと弄ってありますので傷はごまかせるかと思います」
「もがももまが!?」
「お礼なんていいんですよ、でもどうしてもというなら私の肥料に……」
「ぶくぶくぶく……」
「え?どうして泡を吹いていらっしゃるの……あ、これってもとは毒草でしたわね……きゃああああああああああああああああああ!!!申し訳ありません!!」
白目をむき泡を吹くアスラをガクガクと揺さぶるが全身を弛緩させたアスラはされるがままで反応の一つもない
「そうです、強心作用のある薬草を飲ませましょう!!!!」
フウラウの体から蔦が伸びアスラの口へと一輪の花を押し込んでいく
「効いてください……!」
「…………がはっ!?」
目を見開いてアスラが咳き込む
「はーっ……!?今僕に何が起こったんだ!?」
アスラは先ほどまでの数分の記憶が混濁しているようだ
「アスラさんはいきなり倒れられたんですよ」
「そうか……あれその蔦はどうしたの、いつもはかわいくないって言ってしまってるじゃない」
「し、しまい忘れたんです!」
「そっか……でも体が楽になってる……!?」
アスラの顔がぱあっと明るくなる
「ありがとうフウラウ!!これで無事に登校できるよ!!なんてお礼を言ったら良いか分からないよ」
「え、ええ、お礼なんていいんですよ……ほんとに……」
フウラウの顔は罪悪感で一杯だった
「あの、これを持って行ってください」
「ん?これは?」
「その……気分がすっきりする香りを詰めた袋です。大変なときは使ってください。あと……その……ごめんなさい」
「なんで謝るの?」
「いえ、何でもないんです。私も学校に向かいますね」
フウラウの体が花びらとなって散っていった
「よーし、これなら間に合うな」
アスラは道を駆けていく