純人間の少年
純人間、あらゆる種と繁殖可能かつ高い知能を全員が持つという絶大な力で世界を席巻した最強の種族。しかしそれは過去の話でハーフ化が進むにつれて純人間の数は年々減り保護対象もしくは崇拝対象となった
純人間の代わりに世界を牛耳ったのはもちろんハーフ達である。彼らは【混血種】と自らを呼称し純人間が作り上げた文明を継承した
そんな事があってから数千年
一人の純人間の少年がその身を偽って極東最大規模の街である【東京】に住んでいた
※※※
その都市は異様である
全てを呑み込んだうえで自らの色に染め直した結果だ
和風ではある
ではあるが、所々に違和感を感じてしまう
そんな街【東京】
元々は日本と呼ばれていたそこは自らの文化を残すことと他の文化を取り入れることに長けていた
「うん、今日もいい天気だ。空気が美味しいなあ!!」
道を歩くのは一人の少年
頭から日本の小さな角がのぞいていることからおそらく「鬼人」であろう
「ハーイ!今日も早いデスネ!」
少年の後頭部を小突きながらついていく少女の瞳には歯車が浮かびよく見るとところどころに人とは異なる特徴が見受けられる
極めて精巧な人形にして意思ある器物
「ゴーレム」だ
「痛いよ……マキナ……」
鬼人の少年は涙目でそう訴えた
庇護欲も嗜虐心も煽るその表情を見てマキナという名のゴーレムは満足した
「むふ〜、その顔が一番良い顔デスネ!」
「何言ってんのさ……痛てて……」
本気で痛がる少年を見続けているとマキナの胸中には異変が生ずる
「(アレ?加減間違えましたカネ?)」
痛みとも苦しみとも取れるそれはひどく不快だった
「あの……大丈夫デスカ?」
「痛いよ……」
マキナは自らの失敗を悟る
別に良い顔をさせたかっただけで必要以上に痛めつけるつもりなど微塵もなかったのだから
「えっと……その……ごめんなさい……そんなつまりじゃなかったんデス……」
白金のポニーテールとともに頭を下げるマキナ
「本当にそう思ってる?」
「心から反省してマス」
「これ何回目か覚えてる?」
「記憶してる限りだと268回目デス」
「はぁ……本当にマキナって最高傑作なの?」
「ハイ、ワタシを超えるゴーレムは存在しまセン」
「じゃあなんで学習しないの!?」
それはマキナにもわからない、どうしてこの少年を構いたくて仕方ないのか
一目見たときに回路に電流が走ったのか
マキナにはわからない
「それは……わかりまセン」
「まあ……許すけどさ……もうやめてよ?」
「ありがとうございマス!!」
少年を抱きしめる
しかしその膂力は桁外れである
「いだだだだだだだだだだだだだ!!!」
「アスラのそういうところ大好きデス!!」
「ちょっと……本当に……死ぬ……」
「モー!鬼人は頑丈なはずなのにアスラはなんでそんなに脆いんデス!」
「虚弱なんだよお……」
アスラは緩やかに気を失った
「アレ、アスラ?アスラ!?死なないでくだサーイ!!」
マキナの声がその場に大きく響いていた