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パッチン・クエスト  作者: パンTea
3/3

2話「チュートリアル1」

タッ、タッ、タッ、タッ


はっ、はっ、はっ、はっ



足音と吐息が一定のリズムで薄暗い洞窟の中で響き渡る。


突然ですが、





誰か助けてください!!





今僕、





コウモリっぽいのに追われています……!






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






意識が朦朧としている


空を飛んでいるようで、海に沈んでいるようで……

心地良いようで、どこか不安なようで……


目の前に友人達の姿がぼんやりと映る。

手を伸ばすとそれは消え、少し遠くにまた現れる。


そうだ……僕は食べられて……




何とも言えない感覚だけが全身を包み込んでいる




ここが天国……なのかな……




「い……!! お……ゃ……」




話声……?天使様……?




「…ら…せ!!」




「いらーーーッしゃいませー!!」


さっきまで真っ白だった視界は細身で細目でひょうきんな男の顔で埋め尽くされた。


「どわぁぁぁ!?」



「やァだお客様!どわぁー!って、今時どわぁー!って!!」


いつのまにか僕を包み込んでいた不思議な感覚は男の登場により消え去っており、

その男は嫌に嬉しそうに馬鹿にしてきた。

何なんだこの人……、いらっしゃいませだとか、お客様だとか……


「貴方一体何なんですか?」


「ひー!ひーっ!いやァすみません、わたくしモリィフと言いまして……」


必死で笑いを抑えこもうと頑張っているようだが

僕が聞きたいのは名前などでは無く……。


「そうじゃなくて、貴方は何者なんですか?それにお客様って……っ!?」


質問の途中ふと顔を見ると彼の表情はすっかり変わっていた。

いや、笑顔のままなのだけれど、どこか落ち着きのような物があった。


「お客様はお客様なのですよ」


「だからどういう……」


「わたくしは入界管理局に努めており、貴方が危険な人物でないか判断するのが仕事です」


僕の質問に割り込むようにして男は話を続けた。


入界……管理局……?

本当に言葉足らずにも程がある……ガイドブックでも渡してほしいくらいだ


「貴方は危険でないと判断され、現在入界の許可待ちの状態にあります」


気づけば男の姿勢は地面に突き刺さっているかの如くピンとまっすぐになっており

もはや最初とは別人のようであった


「あの……入界って……?別の世界ってこと……」


「そして、それと同時に私の仕事は危険人物であるかどうかのチェックから……ッ

お客様に様々なアァイテムや情報などを提供するお~店やさァんになったわけなんでェす!」


情報が多すぎてついていけない……。質問を聞く気も無いし……

男は説明を終え、満足したのかピョンピョンとその場で飛び跳ねている。


「ちょっと待って、お店って……僕今お金持ってないですよ?」


「大丈夫でござァいますよ!お客様!今回はタダでございます!先行投資でェす!プライスレェスッ!」


いや……プライスレスの意味間違えてるし……






「お客様、タダより高ァい物はありませんよォ?」






「え……す、すみません!口にでてまし……」


「あァーら!お客様!許可が通りましたよ!」


再び質問を遮るようにして男は笑顔でそう告げ、

どこからともなく取り出したステッキで空中をクルクルと回し始めた。


笑顔でステッキを振り回す男、僕は何でこんな怪しい男と一緒に居るんだろう

まずここは何処なんだ、僕は食べられたんじゃないのか?

死んでる……?生きてる……?入界管理局って何だ!誰がお客様だ!お前誰だ!


少し落ち着いてきたのか、冷静になった思考でそんな事を考えていた。




「いらァっしゃいませ、グラァンドランドへ……」



ズォォ―――ッ



いつの間にかそこに男の姿は無く、男がステッキを回していた所には白い渦が生まれていた。

それは徐々に吸い込む力を増し大きくなっている


すると僕の周りを目を覚ました時に感じた不思議な感覚が覆い始め

導かれるようにその渦に吸い込まれていった……。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「うわぁぁぁあああ!!!」


そして現在に至る。



キィィ!! キィャイ!!


必死で逃げる僕をいくつもの甲高い声が追い回している。

おそらくコウモリだとは思うのだが、僕の知っているコウモリとはサイズからして明らかに違う。


「まって!!本当に!!本当まってー!!!」


必死で叫び助けを請うが、そんな願いが通じる筈も無く……というより言葉が通じる筈も無く。

既に肩や足に噛みつかれており、出血とまではいかない物の体は傷だらけになっていた


「もっ、もっ無理……!」


元々そこまで体力がある訳でもない少年の足取りは次第に重くなって行き、

それに伴い噛みつかれる回数も増えて行った。


もう無理だ……諦めて地面に倒れそうになった時、





「こっちこっち!」




恐らく僕に向けて投げかけられたであろう言葉の聞こえる先には

鼻が長くおかしなヒゲをたくわえた、モグラのような男が手をこまねいていた。






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