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4:聖女との出逢い(前)

※全面改稿したものです。まったく新しい第4話としてお楽しみください。

そこから見えたのは、街道に立ち往生する高級そうな馬車。その周囲に倒れこむ血塗れの人々。

そして覆面をして、剣を抜いた男たちが周囲を包囲し、馬車の近くにいる数人をじりじりと追い詰めている。


「うわっ」


ヤスが驚きの声をあげてしまうのは、無理もない。

俺だってこんな修羅場を見たことなんか、人生でいちどもないんだから。


「わ、ワガハイらはどうする……ぐっ」


ヤスが俺に緊張した顔で問いかけてくる。

見たかぎりだと、馬車の近くにいるのは紋章を施したプレートメイルに身を包む騎士みたいな集団だ。

騎士の円陣に守られているのは小柄な女性ふたりで、片方はどうやら使用人のようだ。


かれらを包囲しているのは、剣を抜いて油断なく包囲網を狭めている、覆面をしてフードを被った男たち。

外見的には軽装にみえるが、それでも腕が立つようで、すでに馬車の周囲には騎士の死体がいくつか転がっていた。


使用人に守られていた女性のひとり、使用人ではないほうが、すっと蒼いケープを脱ぐ。

やばい、と思った。

ミルクを溶かしこんだかのように真っ白な肌。西洋人形のように可憐な顔立ち。

ふわりとしたプラチナブロンドが腰まで広がり、切り揃えた前髪のうちから、慈悲に溢れた知的な瞳が現れる。


「レクリス。ほかの供はやはり――」

「残念ながら……」


彼女は哀しげに目を瞑ると、神に祈るように両手を組んだ。

……なんだろう。この気持ち。

純粋にあの娘の助けになりたいという感情が、胸の内に湧いてくる。

一目惚れか? いや、違うような気もする。

俺は迷っていた。あの娘を助けたい。だけど、ヤスを巻き込むわけにもいかない。


「なぁ、ヤス……ん?」


となりにいたはずのメガネが、いまやどこにもいなかった。

あたりを眺め回す。地面には森の奥へと続く足跡が点々と置かれていた。

あいつ……逃げやがった。


もうこうなればヤケだ。

俺は出っ張りを飛び越えると、そのまま馬車へ向かって突進する。


すぐに包囲網を敷いていたうちのひとりが、こちらへと気付いた。


「なにものだっ!?」

「通りすがりの魔王ですよ!」


やるだけやってみよう。

俺はスキルをイメージした。【混沌魔術/ケイオスマジック】発動。

すると一瞬、視界のうちに以下のようなステータスが現れる。

----------------------------------------------------------

★ステータス

称号:黒のデーモンロード

Lv:63

HP:48390

MP:32240

攻撃:5300[S]

防御:4800[A]

速度:3200[A]

魔術:4300[A]

スキル

【ティラの執着/グレイト・ジェラシー】

【混沌ノ君主/デーモンロード】

【混沌魔術LvA/ケイオスマジック】

【デーモンの香気LvA/レディキラー】

【我が名は強欲/ウロボロス】

----------------------------------------------------------

ふむ。かなり強いほうなのかな、俺。

だがいまは意識を眼前に集中する。剣を抜いて覆面の男が斬りかかってきた。

イメージする。男の手から剣が弾き飛ばされる。

その瞬間、渦巻きのような風が巻き起こり、男の手の周囲でだけ荒れ狂った。

たまらず男が剣を取り落とす。


「くそっ、こいつメイジか!?」


さーて、あとは料理するだけだ。

俺は地面に落ちた剣を拾い上げると、やみくもに鈍器のような形で男へ振り下ろす。

男は咄嗟に腕に仕込んだガントレットでそれを防ごうとした。

が、俺の剣はガントレットをハンマーで潰したように崩壊させ、そのまま腕に食い込んで、片腕を斬り落とす。


「がああああああああああああああ!!」


その場に悲鳴が轟いた。咄嗟に周囲の男たちが、俺に視線を向ける。

ふたりがこちらを挟撃するかのように回ってきた。

先ほどから、俺はひどく冷静だ。やはり祝福を受けていることに関係あるのかね。


「このガキ……!」


片方が剣を片手に突進しつつ、背後にいる男が本命として袈裟に斬りこんできた。

内心、少しだけひやっとするが、俺の強化された感覚はそれらのことをスローモーションで捉える。

先ず突進してきたヤツをいなし、合気道の要領で、自分が前に、相手が後ろへといくようにする。

そして足を引っ掛けつつ、斬りこんできた男の間合いに突進男を追いやった。


「ぎゃっ」


突進してきた男が仲間に斬られる。俺は剣を、斬りこんできた男の顔面に叩きつけた。

どさりとふたりが崩れ落ちる。これで三人。


「……なんだこいつは」


近くにいた覆面が、怯えたように口を開く。


無理もない。いきなり飛び込んできたヤツが、包囲網の一角を食い破ればそういう反応にもなる。

俺の様子を観察していた騎士たちのひとりが、これ幸いと大声を張り上げた。


「今だ! 突っ込め!」


同時に数人の騎士が、こちらに気をとられていた覆面の男たちへ突撃していく。

かれらはさすがに腕が立つようで、ひとりが俺を牽制し、残りが騎士たちと向かい合う構えをとった。


イメージする。手から重い波動を飛ばすような感じだ。

片手を突き出した。同時に眼前で俺の牽制を担当していた男が吹き飛ばされて、木々のなかに転がっていく。

すごいな、この力。


すると視界内にまた表示が現れる。

――【熟練:剣術士/LvB】を複数個獲得したので、【我が名は強欲】の効果により、【熟練:剣豪】のスキルを獲得しました。

ほう、あたらしいスキルを獲得したらしい。

しかし【我が名は強欲】って、どんなスキルなんだ?


「くそっ!」


男たちのひとりが斬り伏せられる。

残りの人数では、俺を含めた全員に対抗できないと悟ったのか、中心にいた男が鋭い声を発した。


「撤退するぞ」

「だが依頼が――」

「命あっての物種だ。勘違いするな」


反抗してきた覆面のひとりを一喝し、最後にリーダー格の男が俺を強く睨めつける。


「キサマの顔は、覚えたぞ」

「……そういうの勘弁してほしいんですけど」


ちょっと焦りながら苦笑する俺を尻目に、残りの男たちはじりじりと後退していき、やがて森に飛び込んでいった。

残りの騎士たちがあとを追おうとするが、騎士の隊長らしき人がそれを止める。

馬車の脇では、怯えきった使用人――おそらく侍女だろう――を、例の西洋人形のような少女が慰めていた。

俺はそれをぽーっと見ていたのだが、少しして、隊長が声をかけてきた。


「助太刀に感謝する。だが」


その目は笑っていなかった。

うー、怖い。普通の高校生にそんな視線ぶつけてこないでくれ。


「君がどういう素性で、どういう理由をもっているのか、教えてはもらえないか。でなければ難しいことになる」

「あー」


なんといったらいいか迷うな。ほかの騎士――三人ぐらいしかいないけど――も、こちらを警戒しているようだ。

そりゃそうだよな。変な術で瞬く間に数人を倒した人間とか、俺だって警戒する。


「通りすがりの……デーモンロードっス」


その場に沈黙が満ちた。なんというか、すごく気まずい。

ごめんね!


読了していただき、ありがとうございました。

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