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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第四章:嫁の実家へ、挨拶回りの旅に出ます。バレンティア竜国編
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085・久々の討伐依頼

 ―マナ視点―


 アテナが人間に転生してから一週間。アテナのハンター登録をしたり、装備を買ったり、装備を注文したり、大和と婚約したことがバレンティアの友好国にも伝えられたりで、それなりに慌ただしかったわね。私もエオスと契約したから他人事じゃないんだけど、自分の手の内を晒すつもりはないから、まだ誰にも伝えてないわ。

 そんなわけで大和は大変だったけど、やっと落ち着いてきたから、今はドラグニアにあるハンターズギルドで依頼を探してるところよ。


「うーん……」

「どうしたの、大和?」


 難しい顔してギルドマスターの部屋から出て来た大和とプリムにルディアが声をかけたけど、何かあったのかしら?ギルドに着くなり呼ばれたんだから、厄介ごとだってことはわかるけど。


「ああ、ドラグニアに来てすぐ、ロングノーズ・ボアとジャンボノーズ・ボアを狩っただろ?」

「狩ったのは大和さんですけどね」


 フラムの言う通り、ロングノーズ・ボアとジャンボノーズ・ボアを乱獲したのは大和なのよ。だけど、それがどうかしたの?


「それはいったん横に置くけど、それがどうかしたの?」

「ああ。ロングノーズ・ボアの異常種エレファント・ボアが確認されたそうだ。だから俺とプリムを指名して、討伐依頼が出された」


 あちゃ、ジャンボノーズ・ボアの数が多かったから、近いうちに生まれてくるかとも思ったんだけど、既に生まれてたのね。そういうことなら、Hランクの大和とプリムに指名依頼が出るのもわかるわ。


「大和とプリムが指名されるのはわかるけど、ライバートさんはどうしたの?」

「ライバートさんは別の依頼を受けてて、今ドラグニアにいないそうなのよ」


 ライバートはドラグニアに居を構えるHランクハンターだから、こういった指名依頼は必ず彼が指名されていたはずなんだけど、別の依頼を受けていることも珍しくはないのよ。


「あ、さっき私も聞きました。なんでもルセロ山脈の麓にあるリアマという町に行っているそうです」


 ルセロ山脈っていうと、バレンティア東部にある山ね。ウィルネス山より険しいし、亜竜が多く生息しているから、麓にあるリアマは常に亜竜の脅威に晒されているそうなの。そんな町に行ってるということは、亜竜の調査か討伐依頼でも受けたということかしら?


「調査らしい。ルセロ山脈に異常があるって、さっきギルドマスターが教えてくれたな」

「異常って、何があったの?」

「それを調べに行ってるそうだ。だからどれぐらい時間がかかるか、ギルドマスターにもわからないらしい」


 亜竜が住むルセロ山脈の異常があるってことは、亜竜絡みかしらね。確かに場所が場所だから、Hランクハンターに指名依頼を出すのもわかるわ。


「だから私と大和で倒すことになるんだけど、みんなはどうする?」

「俺は見学してみたいです。異常種なんて、そうそうお目にかかれませんから」


 フラムとレベッカは遠慮しがちだけど、ラウスはけっこう自分の意見を出すようになってきてるのよね。同じレイドなんだし、積極的になってくれるのはこっちとしても大歓迎よ。


「私も、その、足手まといですけど、連れて行ってほしいです」

「私もです。フロートではお二人の戦いを見ることができませんでしたから、本気で戦っている姿を見てみたいです」

「ボクも行きたいな」


 フラムとユーリ、アテナも見学希望か。リディアとルディアは戦力になるし、ミーナも固有魔法があるから問題はない。あとはレベッカね。


「お姉ちゃんもラウスも行くなんて……。足手まといにしかならないのに……」

「そうだけどさ、Hランクハンターの戦いを見るのも勉強になるし、異常種を見る機会は滅多にないし、見ておいて損はしないと思う」


 やっぱりレベッカは及び腰になってるわね。だけどそれが普通の反応よ。あと異常種だけど、この二人と一緒に行動してれば、そんなに珍しくはなくなると思うわよ。


「それはそうだけど……ううん、そうだよね。私も行きたいです。連れて行ってください」


 これで全員参加ね。レベッカだけ残していくわけにもいかなかったから、こっちとしても助かるのよ。


「俺達の戦いが参考になるかはわからないが、そういうことなら連れて行かないわけにもいかないか」

「まあね。だけど私の戦い方は、アテナには参考になるかもしれないわね」

「え?ボク?」


 アテナが選んだ武器はプリムと同じ槍だけど、形状は少し異なっている。プリムはハルバードとよばれる斧頭のついた槍を使ってるんだけど、使い手が限られる特殊な武器なのよ。対してアテナが選んだのは一般的な形状の、スピアと呼ばれる槍。ハルバードとスピアじゃ戦い方はだいぶ違うけど、同じ槍だから参考になることは多いし、何よりアテナも翼族として転生してるから、同じ翼族のプリムの戦い方は、この中の誰よりもいいお手本になるでしょうね。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 というわけで俺達はドラグニアを発ち、エレファント・ボアを探しているんだが、バレンティアはウィルネス山とルセロ山脈以外は平坦な国だから、探すにしても簡単にはいかない。実際、ドラグニアを出たのは昨日だが、昨日はロングノーズ・ボアの群れすら見つけることができなかった。エレファント・ボアを見つけたハンターの報告だと、ドラグニアから一日ほど北に歩いた所にいたということだから、そんなに離れてはいないと思うんだが、今日もエレファント・ボアどころか、ロングノーズ・ボアすら見かけない。ジャイアント・バッファローの群れならいくつか見つけたんだけどな。そろそろ日も暮れるし、今日の探索も限界か。


「これが普通よ。素材狩りだって目的の魔物を探すところから始めるんだから、対象が異常種に変わったらその分時間もかかるわよ」


 呆れたようにマナが口を開いて俺の疑問に答えてくれたが、言われてみればそうなんだよな。しかもロングノーズ・ボアを狩りに来てるわけじゃなく、その異常種エレファント・ボアを狙いにきてるんだし、確認したハンター達も偶然の遭遇だと言ってたそうだから、一日二日でケリがつくような話でもないか。


「それってさ、空から探せばいいんじゃないの?」


 アテナの言うことも間違ってはいないんだが、相手も動いてるから、全員一緒に飛べない限り、逆に時間がかかってしまう。マナにエオスを召喚してもらうことも考えたが、最上位のエメラルドドラゴンが近くを飛んでいれば、同じ群れにいるロングノーズ・ボアが逃げ出してしまうから、必然的にエレファント・ボアも遠ざかってしまう。だから面倒ではあるが、地道に陸路で探すしかないわけだ。


「そういうことなんだ。ハンターって大変なんだね」

「本当にね。それでも大和さんとプリムさんがいてくれるから、普通のハンターに比べれば大分楽だと思うわ」

「だね」


 それについてはリディアとルディアの言うように、自覚はある。今回のエレファント・ボア討伐だって、俺とプリムがジェイドとフロライトに乗って、空から探せばそんなに時間はかからないだろうし、すぐに討伐できると思う。だけどいつまでもそんな力押しが通じるとは思えないし、みんなにも経験を積んでもらいたいから、獣車で移動しながら探すつもりだったよ。


「そろそろ日も落ちるし、今日の探索はここまでかしらね」

「だな。どこかに魔石を……ああ、あそこにある岩場が具合よさそうだ」


 マナの意見に首肯し、探索系刻印術をいくつか刻印化させた魔石を近くにあった岩場に設置した。エレファント・ボアは夜行性ではないが、空が白みだすような早い時間から動き出すし、この場所に転移する際、誰かに見られないように気を遣う必要があるから、俺は毎回、ほとんど使い捨ての感覚で魔石を置いておくことにしている。実際何度か、近くを歩いてたハンターや商人とニアミスしかけたことがあるから、魔石を設置してなかったら遭遇してた可能性は高かったな。


「これで良しっと。それじゃアルカに行くか」

「そうね。というか大和、明日なんだけど、確かアテナの装備が出来る日じゃなかったっけ?」

「おお、そうだった」

「え?ボクの槍が出来るのって、明日だったの?」


 俺だけじゃなく、アテナも忘れてたみたいだが、アテナの場合はまだ人間の感覚に慣れてないから、これは仕方ない。それよりアテナの装備を受け取りに行くなら、明日の予定を少し変更する必要があるな。


「受け取りに行くのは当然としても、石碑は使えませんからゲート・クリスタルを用意しなければなりませんね」


 ゲート・クリスタルは石碑と同じく、ゲート・ミラーを付与させた魔道具で、マーカーを設置すればアルカを経由して転移することができる。俺達はそのマーカーは設置していないんだが、アルカに戻るだけなら必要はないから、帰りだけとはいえ時間を短縮できるし、直前に転移した場所を記憶する機能を持つ石碑を使うことができないので、こういう時はゲート・クリスタルを使うことになるわけだ。


「ああ。というか、全員で行く必要もないだろう。俺とアテナ、あと一人ぐらいでフィールに行って、アルカに戻る用にゲート・クリスタルを持って行こうと思う」

「それが無難ね。せっかくだからプリム、あなたが一緒に行ったらどう?」

「へ?私?なんで?」


 マナの提案に、プリムが間の抜けた声を出した。


「最近ジェイドに頑張ってもらってるから、フィールにはフロライトに乗っていくべきだと思うのよ」


 なるほど、そういうことか。確かにジェイドには獣車を引いてもらってるし、この二日は歩きっぱなしだから、ジェイドも疲れが溜まってるだろう。この上フィールまで飛べってのは、かなりの負担になるな。


「それにフロライトの手綱を大和に握ってもらえば、プリムも大和の後ろに乗れるね」

「行ってくるわ!」


 ルディアの意見に脊髄反射で返すプリム。そういやプリムとは、一緒に乗ったことがないんだよな。ジェイドは少しでもアルカで休憩させておいてやりたいから、フロライトに乗ってフィールに行くってのはいい案だし、プリムの想いも叶えることができるから、一石二鳥になるな。


「わかった。それじゃ詳しくは飯でも食いながら詰めるとして、アルカに行くとするか」


 俺はいつものようにボックスから石碑を出し、アルカへの転移門を開いた。

 なお夕食は、レラがサプライズ的に仕込んだファング・タートルの生き血を使ったジャイアント・バッファローのシチューだった。たまにだがレラはファング・タートルを使った料理を、こっそりと夕食に提供してくることがある。ファング・タートルは精力増強効果もあるし、媚薬効果も凄まじいから、夜の性活に大活躍なんだが、だからってこっそり仕込むのはやめてもらいたい。俺は婚約者が八人いるし、全員を満足させるのはかなり大変だ。みんなも順番待ちになるから、後になればなるほど性欲が増してくるから、体力の消費も半端じゃない。

そしてレラの魔手にかかるのは、俺達だけではない。レイドを組んでからはラウスとレベッカもレラの料理を食べるようになったから、俺達にファング・タートル料理が提供されるということは、当然二人にもということになる。俺は相手が八人もいるから負担は分散されるが、ラウスにはレベッカしかいないから、レベッカの負担はかなり大きい。いくらレベッカがフラムの妹でウンディーネの魔族だとはいえ、ファング・タートル効果はバカにできないから、もう一人ぐらい、ラウスの嫁を探した方がいいような気がしないでもない。まあ、これは二人次第なんだが。

久々に登場しました、ファング・タートル。大和は嫁が八人いますが、全員満足させるのは骨が折れるし、ラウスはレベッカだけしかいないので、レベッカが大変です。コロポックルは大和の愛妾枠ですから、ラウスの相手はさせられないと周囲が止めてることもあって、レベッカはけっこう大変なようです。ラウスの嫁を増やすかは、今後の展開次第なのでまだ未定ですけど。がんばれ、レベッカ。

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