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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第一章:フィールよいとこ、一度はおいで
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004・ギルド登録とまたしてもお約束

「ハンターズギルドは中央通りの広場にあり、そこに武器屋や防具屋もあります。それから宿屋ですが、団長のお勧めがあります。よろしければご案内しますが?」


 話してくれているのは見習いの女騎士でレックス団長の妹さん。名前はミーナ・フォールハイトといって、俺達と同い年ということでレックス団長が案内役として付けてくれた。


「団長のお勧めなら安心できるわね。ちなみに一泊おいくら?」


 俺達が捕らえた盗賊は三人が賞金首で、賞金はハンターズギルドから貰うことになっているため、ギルドに行かなければ貰えない。そして盗賊の確認は騎士団に行ってもらうため、騎士団からもギルドに報告することになっている。つまり騎士がギルドまで付き添い、間違いなく討伐されたことを伝えるわけだ。そこまでしてようやく賞金が貰える。まどろっこしいが盗賊の討伐や賞金首の手配の多くは国が行っているため、国が依頼者ということになるのだから仕方ないことではある。妹を付けてくれたのは団長の気遣いでもあるだろう。


「70エルから400エルです。衛生面もしっかりしてますし、料理も美味しいですよ」


 そこまで高いわけではないな。宿探しも大事だし、レックス団長のお勧めならそこでもいいかもしれん。


「いいわね。大和、そこでいいかしら?」

「問題なし。料理が美味いってのは大事だしな」

「ではギルドに行った後でご紹介しますね」

「それよりミーナ、同い年なんだし、敬語なんて使わないでいいわよ?」

「それについては俺も同意だ」

「ですがこれは、騎士としての職務ですから」


 生真面目だな、この人。団長や他の騎士だってもっとフランクな人はいるだろうに。まあ同い年だし、それはおいおい何とかすればいいか。


「それじゃギルドに行こうか。そういや登録するのに、何か条件ってあるのか?」


 ミーナに案内してもらいながら、俺は登録についての必要事項を訪ねた。実力が必要なのはもちろんだが、他にも条件があるかもしれないしな。


「実力があれば特には問題なかったはずです。お二人は緋水団を捕らえていますから、その点は心配していただかなくても大丈夫でしょう」


 レベルのこともあるから、それは俺も心配していない。

 だがしかし!ここは異世界だ。ギルドに登録するとなれば、何かしらのイベントが待ち受けている可能性がある。最も可能性が高いのは先輩ハンターによる洗礼だ。無用な騒ぎを起こすつもりはないから細心の注意を払わなければ!


「注意点はやはり、気の荒い人が多い、ということでしょうか」

「私達を見て、絡んでくる馬鹿がいるかもしれないってことね」


 プリムがめんどくさそうな顔をしている。気持ちはわかるぞ。


「確かハンターズギルドって、中堅ランクが一番多いんだっけ?」

「ええ。個人の実力は我がアミスター騎士団と同等とされるランクですね。ですがだからこそ増長する人が多くて……」


 騎士団と渡り合えるって、けっこうすごいんじゃないのか?というか、そんな連中が多いなんて、この国の治安は大丈夫なのか?


「着きましたよ。ここがハンターズギルドです」


 おっと、着いたか。案内されたのは剣と弓矢の意匠を掲げた大きな建物だった。かなり大きな施設も併設されており、フィールでは一番大きな建物らしい。聞けばハンターの訓練所や魔物の査定用にどうしても広い場所が必要とのことなので、これは納得だ。


「詳しくはギルドの職員から説明があると思います。では参りましょう」


 ミーナに先導され、俺とプリムはハンターズギルドに足を踏み入れた。


「あらミーナさん。本日はそうしたんですか?」


 おお、受付嬢さんにネコミミがある!なんという愛らしさなんだ!っと、取り乱してはいけない。冷静に冷静に。


「こんにちわ、今日はこの方達の登録と査定をお願いに来ました」

「承りました。それでは先にこちらをご記入下さい。終わりましたら登録と説明をさせていただきます」

「わかりました」

「その間に査定をさせていただきますが、よろしいですか?」

「はい、お願いします。大和さん、プリムさん、一度失礼しますね」


 そういうとミーナは受付嬢さんと奥の部屋に入っていった。


「それじゃさっさと記入しますかね」

「そうね。それにしても名前や年齢はいいとして、レイド名どうする?」

「だよなぁ。確か他のとこと被ったりしたら、登録できないんだったよな?」


 ハンターはレイドを組む際、レイド名も決めなければならない。これによってどのレイドに誰がいるのかを把握しているため、離脱や加入があった場合はすぐギルドに届けることになっている。これには同名の人が間違われないようにという配慮もある。写真なんかもないこの世界だと、名前だけで勘違いされることは珍しくないそうだから、個人名とレイド名で確認できれば人違いかどうかもわかりやすい。そのためレイド名は絶対に同じ名称で登録することができなくなっている。


「理由は納得できるけど、考えてなかったわよね」

「だな。また手続きも面倒だし、何とか考えるとするか」

「そうねぇ……それなら『ウイング・クレスト』っていうのはどう?」


 ウイング・クレスト。翼の紋章か。刻印術は外国じゃ紋章術とも呼ばれてるし、知り合いにクレスト・ナイトやクレスト・ハンターもいるからいいかもしれない。


「いいな、それにしよう」


 レイド名も決まったし、あとは得物だが、これは剣だ。父さんや伯父さん達に叩き込まれてるからな。


「それじゃ登録しましょう。お願いします」


 用紙の記入を終えると、先程の受付嬢さんと所へ向かった。ミーナからある程度は聞いてるだろうしな。


「はい。ヤマト・ミカミさんとプリムローズ・ハイドランシアさん。レイド名はウイング・クレストですね。こちらは問題ありません。それではライブラリーを確認させていただきます」


 ハンターズギルドに登録したことやレイド名はライブラリーにも登録されるから、ギルドから確認があるのは当然の話だ。俺もプリムもすぐにライブラリーを確認してもらった。まあ、受付嬢さんの目が丸くなっていたが。


「……ミーナさんの言う通りだったんですね。失礼しました。それでは登録を始めさせていただきます。続いてギルドの説明に移らせていただきますね」

「お願いします」


 ハンターズギルドは魔物を狩ることを生業としているが、犯罪行為を働いた場合、最悪の場合登録抹消の上、騎士団へ引き渡される。盗賊になった場合は賞金首となり、世界中のハンターから狙われることになるが、これは当然のことだ。

 またハンターの身の安全について、ギルドは一切関与しないし命の保証もしない。ハンター同士の諍いにも介入しないが、こちらについては近年の中堅ハンターの素行の悪さが問題になっており、ギルドとしても口を出すことが多くなっているそうだ。

 魔物素材の買い取りは供給量が多ければ値崩れする場合があり、逆に需要が多ければ値上がりする可能性もあるとのこと。そして受付では魔物の盗伐依頼を受けることができる。依頼書は依頼掲示板に貼られているため、それを受付に持っていけばいいのだが、ランクによっては受けることができないため、自分のレベルとランクを過信しないことと釘を刺された。

 ランクは下からアイアン(I)、カッパー(C)、ブロンズ(B)、シルバー(S)、ミスリル(M)、ゴールド(G)、プラチナ(P)、アダマン(A)、ヒヒイロカネ(H)、オリハルコン(O)で、俺とプリムはA-Iというランクになるそうだ。これはレベルがどれだけ高かろうが経験豊富だろうが、登録時は必ずIランクから始まるからだ。昇格についてはレベルが大きく関係しているため、意味的にはAランク相当のレベルがあるが登録したばかり、ということになるらしい。

 依頼を受けなくてもシルバーランクまでは簡単に上がるそうだが、それ以上は必ず依頼を成功させなければならず、あと品性なんかも関係あるそうだ。チンピラなんかが高ランクにならないような処置だと軽く毒づいていたが、そんな馬鹿どもはそれなりにいるってことか。

 ちなみに俺とプリムが登録されたアダマンランクは、世界でも数十人程度しかいないランクで、その上のヒヒイロカネランクは世界でも数人、最上位のオリハルコンランクにいたっては現在いないそうだ。


「大まかにはこのようになっています。詳細はこちらをご覧下さい」


 そう言うと受付嬢さんは羊皮紙を二枚差し出してきた。


「以上で説明を終わらせていただきます。本来であればここで登録料をいただくのですが、お二人は懸賞金から登録料をお引きさせていただくことになっております。まもなく査定が終わると思いますので、申し訳ありませんがしばらくお待ち下さい。終わりましたらお呼びしますので」

「わかりました」


 これで登録が終わりか。思ったより簡単だったな。後は査定が終わるのを待つだけだ。


「話は聞いたぜ。おめえら、新人のくせにけっこう稼いだみてえじゃねえかよ?」


 だが席を立った瞬間、モヒカンにスキンヘッドの集団が俺達を取り囲んだ。まさに危惧していた事態だ。


「待て待て。せっかくの新人だ。俺達がしっかりと、ハンターの心得について教えてやろうじゃねえかよ」

「そっちの姉ちゃんは俺達がしっかりと可愛がってやるぜ?もちろん夜もな」


 人数は全部で8人か。全員がとてもとても品の悪い笑みを浮かべている。つまりあれか、新人から金を巻き上げ、さらにプリムに夜の相手をさせようって魂胆か。この分じゃ町の人にも多大な迷惑をかけてるな。


「つまりあんたらが品の悪い、町の人達とも問題を起こす馬鹿ってわけね」


 プリムの声が一段低くなった。怖いです、プリムさん!


「おいプリム、本当のことだからって本人達に言っちゃ気の毒だろ」

「ああ?素人の分際で、俺達スネーク・バイトにケンカ売ろうってのか!?」

「知ってるか?」

「知ってるわけないじゃない。こんなどこにでもいるようなチンピラなんて、どうせ大したランクでもないでしょうし」

「それもそうか」

「なめた口利くんじゃねえよ!俺達はMランクだ!フィールでもトップクラスのレイドなんだよ!」


 M、つまりミスリルランクか。ハンターの過半数がこのランクだから珍しくはない。トップクラスってのは多分自称だろうな。


「はいはい。自称トップなんてどうでもいいのよ。で、カミナさん。この場合、正当防衛は成立するのかしら?」


 プリムが受付嬢さん、カミナさんというんだが、カミナさんに声をかけた。


「問題ありません。ですがやるなら、外でお願いします」


 カミナさんもかなり鬱陶しそうにしてるし、こいつらは本当に問題ばっか起こしてたんだろうな。


「だってよ。やるなら相手になるが?」

「ガキが調子に乗るな!上等だ、表に出ろ!」


 おーおー、青筋浮かべちゃってまあ。この時点で大したことない連中だとわかるな。


「プリム、俺が片付けようか?」

「夜の相手をしろと言われて、黙ってられるとでも?」

「だよな。んじゃ、半分ずつってことで」

「それでいいわ」


 表に出るとさらに人数が増えていた。全部で18人か。全員頭悪そうだよなぁ。


「おい、スネーク・バイトの連中がお冠みてえだが、何かあったのか?」

「新人にコケにされたらしいぞ」

「あちゃあ。その新人、終わったな」

「ってスネーク・バイトにケンカ売ったのって、あいつらなのかよ!?」

「あいつら、本気で終わったな……」

「ええ。男の子は再起不能か奴隷にされて、女の子はあいつらの慰み者ね。本当に気の毒だわ……」


 外野が勝手なこと言ってるが、内容から判断するにトップレイドってのは自称じゃなかったのかもしれんな。別にどうでもいいが。


「今更謝っても遅いぜ?身ぐるみ剥いで奴隷商に売りつけてやるよ!」

「うん、思いっきり盗賊行為だな。こんな公衆の面前でそんなこと言うとは、どうやら頭も悪いらしい」

「本当に盗賊だったりしてね。例えば緋水団と繋がりがあったりとか」

「う、うるせえ!てめえら、やっちまえっ!」


 わかりやすいぐらい動揺してるな。口上が盗賊みたいだったから言ってみただけなんだが、本当に盗賊と繋がりがあるのかもしれないな。まあ後のことはレックス団長に任せるとして、こいつらを排除しますかね。


「な、なんだっ!?」

「こ、氷だと!?」


 水性B級広域対象系術式コールド・プリズン。領域内の対象を氷の檻に閉じ込める術式だ。当然強度はあるから、生半可な力じゃ脱出はできない。防御陣としても優秀だからな。


「やるじゃない、大和。私ももうちょっと、魔法を効率よく使えるようにしないとねっ!」


 プリムは上空を飛びながら、華麗に蹴りを見舞っている。当たり前だが連中はプリムの動きについていけず、一ヶ所に蹴りまとめられ、プリムが起こした竜巻によって宙に飛ばされ、一斉に落ちて気を失った。俺もコールド・プリズンの強度を上げ、連中の意識を奪うと同時に術式を解除した。


「口ほどにもないわね。トップなんて自称してるようじゃこんなもんなんだろうけど」

「そもそも本当にミスリルランクだったのかも怪しいがな。それより中に入ろう。もしかしたら終わってるかもしれないからな」

「そうね」


 俺達はスネーク・バイトの連中に視線を向けることなく、ギルドへ戻っていった。


「な、なんだ、あいつら……」

「ウソ、でしょ……」

「あのスネーク・バイトが……あんな簡単に……」


 外野のみなさんも驚いてるし、これで俺達にちょっかいかけてくる馬鹿はいなくなるだろう。

二人目のヒロイン(予定)、ミーナ登場。予定は未定であって決定ではない、とは名文句だと思うんですよ、はい。

一部手直ししてたら間違って投稿してしまいました。続きの投稿時間を直すのが面倒でした、はい。あ、しばらくは毎日12時に更新しておりますよ。

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