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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第二章:客人の遺したモノ
39/99

039・再会と今後の予定

「それでは皆様、我らコロポックル一同、またのお越しをお待ちしております」


 どこかの旅館の女将さんみたいなセリフで見送られ、俺達はアルカを後にした。その際、石碑は持って帰るようにも言われている。アルカの館の玄関門と対になってるから、石碑があればどこからでもアルカに転移することができるんだそうだ。持ち運びできることもびっくりだが、何かの拍子で壊れる、もしくは壊される可能性がないわけじゃないので、俺は言う通りにすることにした。近いうちにミーナを連れてくることになるし、場合によってはユーリアナ姫のことも考えなきゃいけないからな。問題は王様が何て言うかなんだよなぁ。


「それにしてもさ、アルカやコロポックルを作った客人まれびとは女性だけだったみたいだけど、百年も経って似たようなご主人様を迎えることになるとは思わなかっただろうね」

「どういう意味だよ?」


 ルディアの言いたいことはわかる。わかるが、それだけに認めたくはない。


「わかってるくせに。ご主人様が女性ばっかりか、ハーレム引き連れてくるかの違いだけじゃない」


 プリムに答えられた。そうですよ、女主人達の中に俺が紛れ込むようなもんですよ。コロポックルも女性ばっかりだから、片身狭くなりそうで怖いよ。


「いいじゃないですか。コロポックルは予想外だったけど、アルカに住めることになったわけですし」

「まあな。あとはベール湖に降ろすことができれば、引っ越しなんかもはかどるし、ミーナが帰ってくれば色々と動けるようになるしな」

「やりたいこと、たくさんあるものね。それじゃ大和、石碑をボックスに入れちゃって。それでオークを少し狩ってから、フィールに帰りましょう」

「そういえば、昨日も何も狩ってないよね。遠出するって伝えてあるんだから、何か狩って帰らないと示しがつかないか」


 だなぁ。俺とプリムがHランク、リディアとルディアがPランクになっているため、レイドのランクはAに昇格している。Aランクのレイドは俺達しかいないので、手ぶらで帰るとなると少しみっともないかもしれん。まあ個人的なことだとギルドには伝えてあるから、そこまで気にする必要もないかもしれんけど。


「それでも何か言ってくる馬鹿はいるしね。なにせ私達、大和以外は全員女の子なわけだし」

「ああ、見た目からだと判断はつきにくいよな」


 どの世界でも変わらないようだが、見た目が厳ついから強いわけではないし、怖いわけではない。見た目と実力が一致しないことなど、山のようにある。実力のあるハンターはそれぐらい見抜けるが、脳筋や虎の威を借る馬鹿どもはそんなことも見抜けないし、質の悪いことにそういった輩がMランクに多いのも事実だ。先日の事件のことがあるから、ハンターズギルドもレベルだけじゃ昇格できないようにするみたいだが、あくまでもそれは後付けのランクであって、実際のレベルはそれより上になるわけだから、別の意味で問題を起こされそうな気もする。ランクはMだが実際のレベルはPランク相当とか、絶対にいるからな。

 その後俺達は、オーク・キングを一匹、オーク・プリンセスを二匹狩り、たわいない会話をしながらフィールへの帰路につくことにした。


「お帰りなさい、大和さん!」

「うおっ!って、ミーナか!?帰って来たんだな!」

「はいっ!」


 フィールに戻ると、ミーナが出迎えてくれた。一か月ぶりの再会だが、感極まったのか、俺に飛びつきながら涙を流している。なんか俺も嬉しくなってくるな。


「おかえり、ミーナ。いつ帰って来たの?」

「昨日です。一ヶ月もフィールを空けてしまったので、飛竜ワイバーンを使わせてもらって」


 確かにフィールから護衛についたから、その分騎士団は人数が減ってたんだよな。しかも一ヶ月もってのは俺達としても騎士団としても予想外だったから、歩いて帰れとは言いにくかったわけか。

 まあいつまでも立ち話もなんだから、続きは魔銀亭に戻ってからにしよう。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「それで、そっちはどうだったの?」


 部屋に戻ってお茶の用意をすると、プリムがさっそく口を開いた。


「はい、父も母も許してくれました。Hランクハンターと縁ができるんですから、断る理由もないと」


 やっぱり知ってたか。以前のフィールは情報を封鎖されていたに等しいから、俺達がAランクとして登録したこともほとんど知られていなかったが、今は普通にハンターや商人が行き来しているので、俺達の噂は、既にアミスター王国内に広まっているらしい。その俺達がHランクに昇格したとなれば、当然その噂も広まる。プリムはまだかもしれないが、俺は二週間前に昇格しているから、知られていてもおかしくはないだろう。


「なら、落ち着いたらミーナの実家にご挨拶に行って、その足でリディアとルディアの実家にご挨拶に行くか」

「ありがとうございます、大和さん」

「私達の実家にも来てくれるんですか?」

「当然だろ。それが誠意ってもんだと思うぞ」


 これは当然のことだ。しかも双子を両方とも嫁にするんだから、行かないなんて選択肢は最初から存在しないって。


「やっぱりリディアさんとルディアさんも、大和さんと婚約されたんですね」

「ごめんなさい、ミーナさん」

「報告が遅くなって、本当にごめんね」

「気にしないでください」


 魔銀亭までの道のりで、ミーナにはリディア、ルディアとも婚約したことを伝えたんだが、思ったよりあっさり受け入れられた。というか、なんか仲良くないか?三人って数日ぐらいしか、まともに話したことないはずだぞ。なのになんで、こうも打ち解けてんだ?俺の婚約者ってだけじゃ、説明つかん気がする。


「大和が何を考えてるのか、だいたい予想できるけどね。私だって何の考えもなく、リディアとルディアを嫁にしろって言ったわけじゃないのよ?」


 プリムさんが言うには、相性がいいだろうと思ったからなんだそうだ。確かに嫁同士の仲が険悪だと、俺としてもたまったもんじゃない。なるほど、そういったことを考えてくれてたってわけか。なんか既に、頭が上がらん気がしてきたぞ。


「それでミーナ、ユーリアナ姫の方はどうなったの?」

「はい、姫様の望むように、とのことです」

「つまり、フィールに来るってことか?」

「はい。ですので一度王都に来るよう、陛下から言付かっています」


 キャー!マジで王様に、娘さんをください、しなきゃならんのか!ストレスマッハで胃がぶっ壊れるぞ!なんで俺はキャベ○ン買ってこなかったんだよ!

 あ、俺がこの世界に来た時、通学に使ってた鞄も一緒に飛ばされてきてるんだよ。まあ本やノート、教科書は携帯端末状の刻印具一つで事足りるから、ほとんど空に近いんだけどな。今はボックスに突っ込んである。


「ということはユーリアナ姫様は、こちらから王都に迎えに行くことになるんですね?」

「はい。姫様は王都でハンター登録を済まされ、お兄様のラインハルト殿下がサポートにつかれて何度か狩りに行かれましたし、私も同行させていただいたことがあります」


 ラインハルト・ラグナルド・アミスター第一王子か。確か王位継承者で、Pランクのハンターでもあったな。それなら多少のことはフォローしてくれるし、妹のことなんだから余程のこともないと考えていいだろう。

 というかミーナは、まだハンター登録してないだろ。


「実は私も、ハンター登録をしてきました。その関係もあって、兄さんはまだ王都に残っているんです」


 と言ってライセンスを見せてくれた。


ミーナ・フォールハイト Lv.20 17歳

ハンターズギルド:アミスター王国 フロート

ランク:S-C

見習い騎士、客人まれびととの絆を深めし者、客人まれびとの婚約者


 フロートっていうのは王都のことだ。ユーリ姫に付き合って登録したわけだから、それは別にいい。というか見習い騎士って称号、そのまま使えるんだな。さりげなくレベル上がってるが、これはラインハルト王子の指導の結果か?


「あれ?確かお姉様もいましたよね?」

「マナリース殿下ですね。マナリース殿下はバリエンテから戻られてから、あまり表に出られなくなったそうです」


 そうなのか。ミーナにも事情は話してあるから、マナリース姫がプリムを探しに、バリエンテまで行ったことは知っている。だから余計に申し訳なくて、何度か口を滑らしそうになったと言った。そりゃそうだよ。俺だって良心が痛むわ。


「マナ、そんなに落ち込んじゃったのね……」


 プリムも申し訳なさそうな顔をした。マナリース姫がプリムのことを心配して探していたように、プリムにも黙っている事情がある。だからどっちが悪いわけでもないんだが、それでもプリムは、黙っていたことに負い目を感じているみたいだ。


「ねえミーナ、陛下に謁見するのって、大和だけじゃないわよね?」


 そのプリムは、何か決意したようだ。


「はい。私はもちろん、プリムさんやリディアさん、ルディアさんも謁見することになっています」

「えっ!?」

「私達も!?」


 リディアとルディアが突然話を振られて驚いてるが、そりゃそうだろ。王様としても、ユーリ姫が嫁ぐ相手の家族構成ぐらいは知っておきたいはずだからな。


「ユーリアナ姫も私達と同じ立場になるわけだから、それは当然でしょう。多分ラインハルト殿下とマナも、臨席すると思うわよ?」

「ラインハルト殿下は間違いないでしょうが、マナリース殿下は難しいかもしれません……」


 ショックが大きかったんだろうな。バリエンテで何を言われたのか知らないが、よっぽどのことを言われたのは間違いないだろう。確かGランクハンターらしいが、寝込むって相当だからな。


「それは私がいれば、解決する問題じゃない?」

「その通りですけど……いいんですか?」

「ええ。レオナスは見つからなったけど、バリエンテに戻ってるって噂があるし、それを信じるなら、多分ギムノスに抵抗しているはず。ほとんどハンターがいなくなっちゃったから情報は手に入りにくいけど、ハンターズギルドを経由すれば何とかなると思うし、そのためには王都にあるアミスター本部に行かなきゃいけない。そこでマナにも話すわ。なんで私がフィールに来て、ハンターになったのかを」


 情報封鎖を狙ってたわけじゃないだろうが、結果的にバリエンテの内情はハンターズギルドも入手し辛くなっている。高ランクのハンターが軒並みバリエンテから出ていき、残ったのはMランク以下のハンターばかりになっているから、治安も悪くなっているだろう。フィールと似た状況の可能性は高いし、場合によってはもっとひどいかもしれない。なにせ歯止めをかける高ランクハンターがいないんだからな。バリエンテ獣王が何を考えてるか知らないが、自分で国を滅ぼすつもりがあるんじゃないかと思えて仕方ねえよ。


「プリムがいいなら、俺は止めない。だけど忘れるなよ。俺はいつでも、プリムの力になるからな」

「ありがと、大和。絶対頼ることになるから、その時はお願いね?」

「任せろ」

「私達も微力ですが、お力になります」

「大和がいれば、必要ない気もするけどね」

「違いありませんね」


 リディア、ルディア、ミーナも同じ考えのようだし、当然俺もだ。暴獣王だか何だか知らないが、プリムを傷つけたわけだから、俺が許す理由はどこにもないし、そんなつもりもない。とは言っても、どうするかはプリム次第だ。マナリース姫に何があったのかも気になるから、そっちのフォローもしなきゃいけないだろうからな。


「ありがとう、みんな。頼りにしてるわよ?」


 プリムの目に、光るものが浮かんでいた。感極まったわけじゃないだろうけど、フィールに来るまで一人で戦ってたわけだからな。


「だけどその前に、私はマナに謝らなきゃいけないし、大和はご挨拶をしなきゃいけないでしょ?」


 ……そうだった。忘れてたわけじゃないが、忘れてたよ……。つかなんて言えばいいんだよ!?今から緊張で、心臓が口から飛び出しそうだよ!


「うちは大丈夫ですよ。父さんも母さんも賛成してくれていますから」

「うちはわからないですけど、反対はしないと思います」

「お父さんは、俺の屍を越えていけ、ぐらいは言うかもしれないけどね」


 それ、一番来てほしくないパターンだよ!娘が欲しければ俺を倒してみろ、なんて絶対に嫌だからな!実際そうなったら、遠慮なく倒すけどさ!遺恨もくそも知ったことか!

 などと軽く錯乱したが、できるだけ早く王都に来るようにとのことなので、一度ミーナもアルカに連れて行ってからにしよう。ベール湖に降ろすのは少し先になるが、これは仕方ないか。

短いですが、これで第二章は終わりになります。本当はベール湖着水までにしようかと思ってたんですが、ユーリ姫も交えた方がいいと思い、あえてここで切ってます。

そのユーリ姫は王都で待っていますので、メッセンジャーとしてミーナを再登場させることで、一応繋いだつもりです。

次から第三章になりますが、ここからしばらく、フィールを離れます。新キャラも出てきますので、0時に登場人物の紹介をアップ、13日のお昼に第三章を投下します。

そーゆーわけですので、引き続きよろしくお願いします。

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