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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第一章:フィールよいとこ、一度はおいで
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003・フィールの町に着きました

生まれてくる種族を修正しました。

ほとんどが父親と同じ種族で、低確率で母親と同じ種族、それよりさらに低確率でハーフになります。

「つまりこの世界の人口は妖族あやかしぞくが最も多く、次いで人族。竜族はそんなに多いわけじゃないんだな」

「ええ。単一種族という意味では人族が一番多いけど、妖族はエルフやダークエルフ、ハイエルフ、ドワーフ、それから妖精なんかの総称だから、それらを全部合わせると人族より多くなるわ」


 この世界のエルフは森に住んでおらず、性格も陽気で開放的だそうだ。俺の中のイメージが崩れていくが、どうやらハイエルフが俺の中のエルフ像に当てはまるらしい。

 そのハイエルフもそこまで排他的ではないそうで、他種族との交流も珍しくないどころかよくあることだそうだ。

 ダークエルフは褐色肌のエルフというだけで、仲が悪いということは全くない。人種程度の違いだと互いに認識しており、肌の色からダークエルフと呼称しているだけなんだと。

 妖精はある程度まで成長すると老化が止まるが、平均身長が130センチとかなり小柄な種族だ。妖族の中では最も魔力の扱いに優れている。

 そしてドワーフは俺の知るドワーフと同じで、やはり酒好きらしい。


「で、アミスター王国を治めてるのは妖族、つまり王様はエルフとかダークエルフとかってことか」

「ええ、エルフよ。まあアミスターは多種族国家だから、人族や魔族の貴族なんかも多いけど」

「確かヘリオスオーブの魔王ってのは、魔族の国の統治者って以上の意味はないんだったよな」

「ええ、そうよ。その魔族もヴァンパイアやウンディーネ、ワーウルフ、サキュバス、ハーピーとかいろいろいるけど」


 魔族もけっこうな種族からなってるんだな。ウンディーネは人魚らしいし、魔物と混同されがちなやハーピー、ワーウルフもいるとは、出会ったら殴りかからないように注意しなければ。

 ちなみにこの世界では、生まれてくる子は、ほとんどが父親と同じ種族になるそうだ。つまりダークエルフの父とヴァンパイアの母からはダークエルフが、猫獣人の父と人族の母からは猫獣人が生まれ、何人かに一人の割合で母親と同種族が、それより低い確率で両親の特性を持ったハーフなんかが生まれてくるらしい。事実、アミスター王国の第三王女様はハーフエルフなんだとか。


「そういやプリムは狐の獣人だけど、他にもいるんだろ?」

「ええ、けっこういるわよ。でも獣族はちょっと特殊かも」

「なんでだ?」

「獣族は獣の耳と尻尾、そして特徴を持ってるんだけど、それって周囲の魔力に影響されてるらしいのよ。だから虎の獣人が父親、兎の獣人が母親でも、生まれてくる子が狼の獣人っていうのも普通なの」

「つまり妖族や魔族とは違って、例えば狐族とか虎族なんていう種族はいないってことか?」

「そういうこと。竜族も似てるとこはあるらしいけどね」


 まあ地竜に水竜、それに飛竜なんて種類があるからな。実際地竜は獣車を引いたり、水竜は船を引いたり、飛竜は獣車を持って飛んだりしてるそうだが。


「そうだプリム、また魔石を出してもらえるか?」

「いいけど、属性はどうするの?」

「そうだな。風がいいんだが、なければなんでもいいや」


 俺はふと思いついたことがあり、またプリムに魔石を出してもらった。


「はい、これ。だけど風の魔石はこれで最後よ」

「サンキュー」


 俺は魔石を受け取るとフライ・ウインドと風性B級広域干渉系術式ガスト・ブラインドを刻印化させ、打ち捨てられていた荷車に埋め込んだ。捨てられてたんだから、俺が使っても問題ないよな。


「よし、これでいい。プリム、乗ってくれ」

「なるほど、風魔法を使って荷車を動すわけね。あんまり効率よくないし、魔力消費も半端じゃないらしいけど、あんたなら大丈夫か」


 実用化されてることにビックリだよ。だけど荷車は軽自動車並みのサイズだから、これを動かすとなると確かにキツい。 

 だがなんでかわからないが、ヘリオスオーブに来てから魔力(印子)が活性化してるみたいだから、町に着くまでなら何とかなるだろう。


「町まではどれぐらいかかるんだっけか?」

「私は夕方になる前には着けるようにしてたけど、途中であんたを拾ったり盗賊を捕まえたりしたから……そうね、夕方には着けると思うわよ」


 ということは、あと2時間ぐらいか。徒歩よりスピードは出せるから1時間ちょっとで着けるだろう。


「わかった。それじゃ行くぞ」


 荷車は思ったよりスピードが出た。魔力の消費も予想より少なかったので、これなら1時間かからないかもしれないな。


「それにしても、魔石に魔法付与するなんて、とんでもないわね、あんた。って刻印術だったわね。それが技術として確立してるなんて、本当にすごいわよ」

「この世界じゃ魔法付与って珍しいのか?」

「珍しいわね。ちょっとした魔法が付与されてるってだけで数万エル、名のある付与術師が関与したら数十万エルはくだらないわよ」


 すげえなそれは。というか魔法が付与されてるってだけでその価格は、ぼったくりもいいとこじゃねえかよ。


「それならお礼も兼ねて、プリムの槍にも何か付けたいな」

「ホントに!?」

「魔法と刻印術の相克関係や武器の強度なんかの問題もあるから、実験が終わってからだけどな」

「それは当然ね。楽しみにしとくわ」


 プリムはとても嬉しそうに表情を崩した。尻尾もすげえ勢いで左右に振られてる。やべ、超可愛いんですけど!

 その後俺は、この世界の常識なんかをプリムから教えてもらった。まあ思ったより早く門に着いたから、このアミスター王国と周辺国のことぐらいしか聞けなかったんだけどな。


「ここがフィールの町よ。アミスター王国の最北に位置する町で、ミスリル鉱山も多いから人口も多く、王国の重要な町になってるわ」

「なるほど。で、ここを治めてる貴族様は?」

「ここは王家直轄地だから、領主はいないわ。貴族はけっこういたと思うけど」


 アミスター王国最北の町フィール。マイライト山脈の麓にあり、多くのミスリル鉱山を抱え、ミスリル鍛冶も盛んなこの町はアミスター王国にとっても重要な拠点となっており、常駐する騎士団も精鋭が多い。湖もあるため、王家の方々もよく足を運ぶそうだ。

 だが近年、観光客やハンターは減少しており、王都をはじめとした多くの町でミスリルが値上がりし始めているらしい。


「よし、行っていいぞ。次。な、なんだ、これは!?」


 フィールは観光名所でもあるため、多くの人が訪れる。そのため町に入るには兵士や騎士によってライブラリーをチェックすることになっている。その時に身分証がない者は100エル預けなければならない。大きな町で商業も盛んなフィールを狙う盗賊も多いから、これは当然のことだ。その騎士さんが、俺が魔石で動かした荷車を見て驚いていた。


「すいません、ちょっと荷物があったので、街道に捨てられてた荷車を魔法で動かしてきたんです」


 魔石に刻印術を刻印化させたことは黙っておく。魔法付与と意味的に同じだから、けっこうな騒ぎになるというのが、プリムと俺の共通認識だ。


「あ、ああ、そうなのか。荷車を魔法で動かすとは、すごい魔力だな。だが町の中では使うことはできんぞ?」

「問題ありません。荷物は騎士団に引き渡すものですから」

「我々に?」

「こいつのライブラリーを確認してもらえれば、それはわかってもらえると思うわ」

「この男か。どれ。『マインド・ライブラリー』。こ、これは!?」


 盗賊のライブラリーを確認した騎士の目が見開かれた。そりゃそうだろうな。


「君達が捕らえたのか?」

「ええ。他にもいたんですが、さすがに連れてくることはできませんでしたから、そっちは体の一部だけですが」

「ここで渡すのは……マズいわよね?」

「そうだな。すまないがこちらへ来てもらえるか?」

「わかりました」


 事情聴取は当然だよな。俺達は騎士の後に続き、詰所へと入った。入り口で待つように言うと、騎士は近くの兵士に指示を出し奥へ走っていった。それにしてもミスリルの産地というせいか、いい鎧着てるな。


「ミスリルの鎧か。やっぱりアミスターはミスリルが制式装備なのね」

「あ、やっぱりミスリルなのか」

「あの薄く緑がかったシルバーアーマーは間違いなくね。兵士の軽鎧もすごいけど、騎士鎧は魔法付与もされてる感じだわ」

「ああ、そんな感じだな。それに重さを感じさせないってことは、もしかしてミスリルは軽いのか?」

「その通りだ。ミスリルは鋼やアダマンタイトに比べればかなり軽い」


 ミスリルを見たのは、当たり前だが初めてだ。プリムは初めてではないが、プリムの生まれ育った隣国のバリエンテ獣人連合国では珍しいそうだ。そのうえで魔法付与までされているのだから、装備的にはかなりのものだ。声をかけてきた騎士の男も、それを見抜いた俺達が珍しいのか、少し驚いている。というか、アダマンタイトもあるのかよ。


「君達が緋水団を捕らえた旅人だな?」

「はい。私はプリムローズ・ハイドランシア。こっちはヤマト・ミカミです」


 プリムに紹介され、俺も一礼する。


「アミスター第三騎士団団長レックス・フォールハイトだ。早速だが、話を聞かせてもらいたい」

「それはもちろんですが、ここでですか?」


 緋水団のことを話すのは問題ない。だがここは詰所の入り口だ。こんなところで話すようなことでもないし、話せることでもない。他にも一般市民と思える人がいるんだからな。


「心配はいらない。話は奥で聞かせてもらう。その前にすまないが、ライブラリーを確認させてもらいたい」

「わかりました」

「私も問題なし」

「すまないな。これも規則なんでね」


 それはそうだろう。盗賊を捕まえたのが実は犯罪者でした、ってのも問題なんだからな。だから俺にもプリムにも異論などあるはずもなく、すぐに左手を前に出した。


「レベル46に51!?その若さで……」


 ライブラリーで確認できるのは名前、年齢、レベル、レイド、ギルド、そして称号だが、称号だけは秘匿することもできる。出身地や身分まで丸わかりになるから、これができるとできないとでは大違いだ。それはともかく、やっぱり俺達のレベルは高いんだな。詰所の騎士や兵士が目を丸くして驚いてるし。


「できれば公にしたくはないんですけど」

「あ、ああ、すまない。こんなにレベルの高い者に会ったのは初めてだったのでね。ではついてきてくれ」


 そう言うとレックス団長は踵を返し、奥へと進んでいった。俺とプリムも肯きあうと、団長の後を追った。


「さあ、掛けてくれ」

「失礼します」


 奥の一室に入ると、俺達は着席を促された。席に着くとメイドがお茶を運んできた。コーヒーが飲みたかったが、この世界には果たしてあるのかどうか。


「では聞かせてもらおう。君達はどこで、緋水団と接触したのかな?」

「ここから街道沿いに、徒歩で3、4時間程のところにある森です。と言っても向こうから襲ってきたんですが」

「人数は全部で七人でした」


 荷車を手に入れたから正確なところはわからないが、ということはしっかりと付け加えた。


「なるほど。ということは狙いは君だった可能性が高いな」

「私もそう思います」


 プリムは白狐の獣族であり、翼族でもある。翼族の奴隷は、白金貨どころか神金貨で取引されることがある。なぜなら翼族の多くは各国で保護されており、余程のことがなければ見受け奴隷になることはない。犯罪者奴隷が売りに出されることはないから、残るのは非合法奴隷だけだ。そしてアミスター王国では非合法奴隷は認めていないから、奴隷として売るならどこか別の国へ行くことになる。非合法だから当然足下は見られるが、それでも莫大な利益をもたらす。盗賊が狙っても不思議なことはない。


「俺達は初めてアミスター王国に来たんですが、その緋水団ってどんな盗賊団なんですか?」


 これもプリムとの打ち合わせで決めていたことだ。俺は転移したばかりだし、プリムも子供の頃に来たことがあるだけで、緋水団のことは知らなかったから、初めて来たに等しい。子供の頃なら忘れてました、って言えるからな。


「王都とフィールを行き来する商隊を襲ったり、旅人を拉致し奴隷に落としたりだな。被害も大きく、腕利きを雇った商隊を全滅させたこともあるから、我々としても警戒していた」

「他の場所にはでないんですか?」

「緋水団程ではないが、いくつかの盗賊団が跋扈している。それでも縄張り意識があるようで、盗賊同士のいざこざは聞こえてこないが」


 確かに盗賊同士でのいざこざが起これば、それはそのまま壊滅に繋がりかねない。大きな盗賊団であっても規模を縮小せざるをえなくなる。


「つまり盗賊同士の暗黙の了解ってことですか」

「おそらくはね」


 レックス団長も同意見か。何にしても、盗賊を放置しておく理由にはならないが。


「ところで、君達はこれからどうするつもりなのかな?」

「ハンターズギルドに行こうと思っています。それでしばらくはこの町を拠点にして、色々とやってみようかなと」

「私も同じ。大和とはレイドを組むつもりですから」

「なるほど。君達ならギルドも歓迎してくれるだろう。私は普段、この詰所にいることが多い。何かあったら訪ねてきてくれ」

「ありがとうございます」


 詰所から出ると俺達はフィールの町に入ることを許された。本来なら預り金を渡さなければならないが、緋水団を捕まえたことでそれを免除してくれた。とはいってもすぐにハンターズギルドに登録しなければならないが。

数日は毎日投稿できそうですが、あんまりストックがないんで尽きたら更新頻度下がると思われます。

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