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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第一章:フィールよいとこ、一度はおいで
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012・子ヒポグリフ達の装備を整えよう 準備編

「獣具となると、やっぱり獣舎か?」

「普通ならそうなんでしょうけど、ヒポグリフ用の獣具なんて売ってるかしら?」

「ああ、ヒポグリフと契約してる人間は少ないから、売ってるかどうかわからないか」


 獣車を引くのは馬や地竜が有名であり、メジャーだ。だから馬用と地竜用の獣具は、どの町でも買うことができる。

 だがヒポグリフは、育児期間を除くと常に夫婦で過ごしているため、契約することが難しい。今ヒポグリフと契約している者の多くは、道に迷った子供を保護した、もしくは事故などで番いが死んでしまった個体と契約を結ぶことができたかのどちらかだそうだ。


「となるとオーダーか。空を飛ぶこともあるだろうから、丈夫な物を作る必要があるな」

「そうなるわよね。やっぱり、あの人に相談するのがベストかしらね」


 あの人というのは、獣舎で唯一ヒポグリフの世話をした経験がある職員さんだ。獣具の知識もないと世話はできないから、どう考えても頼ることになる。


「いらっしゃい、大和さん、プリムさん」


 獣舎に着くとその職員、フィアット・ライバートさんが出迎えてくれた。


「さっきはすいません、ロクに挨拶もできなくて」

「気にしないでください。お二人のおかげで、フィールも平和になってきているんですから」


 フィアットさんはフィールで生まれ育ったダークエルフで、獣舎の跡取りでもある。何年か王都にある獣舎で働いて経験を積み、去年フィールに戻ってきたのだが、王都での修業時代に、ヒポグリフを連れたハンターがやってきて、王都の獣舎に預けていったことがあるそうだ。そのハンターは迷宮に潜るために王都にやってきたので、迷宮内でヒポグリフを召喚したのだが、その都度獣舎からヒポグリフが消えるため、何度も慌てさせられたらしい。そのヒポグリフはハンターの命を守るために、迷宮で命を落としてしまったそうだが。


「早速ですが、まずは獣具を用意しなければいけません。手綱たづな頭絡とうらくくらあぶみは最低限ですね。特に鞍は、翼との兼ね合いもありますから特注になります」

「まあ、そうなるわよね。だけど鞍以外の獣具も、特注になるんじゃないんですか?」

「ええ。ですがあの子達の体なら、馬の獣具を使うことができます。今挙げた獣具なら、間に合わせではありますが大丈夫でしょう。ただし空を飛ぶつもりなら、しっかりとした獣具を用意しないと危険です」


 それは当然だな。だけど馬用の獣具で代用できるのは大きい。三日後にはプラダ村に行くことになっているから、一から作ると間に合わない可能性もある。体が小さい今のうちだけらしいが、それでもかなり助かる。成長に合わせて何度か作り直す必要はでてくるが、これは仕方がない。


「それでもありがたいですよ。実は私達、三日後にプラダ村に行くことになったので、できればこの子達に乗って行きたいんです」

「ああ、それなら聞いています。騎士団の方も何人か同行されるということで、午前中に団長と副団長が馬の様子を見に来られましたから」


 ああ、騎士団の馬もここに預けてるのか。それなら尚の事話が早いな。


「商人の護衛と聞いていますから、空を飛ぶ必要はないでしょう。ヒポグリフ用の獣具となると、今うちにある素材は使えませんから」

「ヒポグリフ用の獣具って、そんなに特殊なんですか?」

「それはもう。強度があるのはもちろんですが、激しい動きに耐えられて、しかも柔軟性のある素材でなければ、ヒポグリフの動きを制限してしまいます。かといって柔軟性のある素材を選択すると、今度は強度が問題になります。プレートアーマーのような物を装備させることで対処できなくはないですが、これも邪魔にしかなりません。必要最低限のミスリルを使うだけに止めておくべきでしょう」


 思ったより大変そうだ。お勧めの素材を教えてもらったほうが早いな、これは。


「ちなみにフィアットさんのお勧めの素材は?」

「そうですねぇ、やはりフェザー・ドレイクでしょうか」

「フェザー・ドレイク?」


 どこかで聞いた魔物の名前が挙がったから、思わず聞き返してしまった。またマイライトに籠るのか?


「ええ。ドレイク種はドラゴンの亜種ですから、その皮は堅く、柔軟性もあります。そしてフェザー・ドレイクは、ドレイク種で唯一羽毛を持っています。この羽毛は水をよく弾きますから、耐水性も高いのです」

「へえ。フェザー・ドレイクって、獣具の素材としては優秀なんだ」

「ええ。ですがドレイク種としては珍しく群れで暮らしているため、ランクがGだったはずです。ですからものすごく希少なんですよ」


 おっと、これはもしかするともしかしますよ。まさに今日、俺達はフェザー・ドレイクの異常種であるエビル・ドレイクを倒し、ギルドに売っぱらってきたばかりだ。


「さっきそれの異常種を、ギルドに売ってきたんですけど」

「なんですって!?もしかして、エビル・ドレイクを倒したんですか!?」


 フィアットさんの反応がすさまじいな。獣具として優秀な素材なら、是非とも手に入れたいだろうからな。


「ええ。ですがあの子達の親の仇なんです。それは大丈夫でしょうか?」


 だが続くプリムの説明で、眉を顰めた。あ、これはよくない感じだな。


「そういうことなら止めたほうがいいでしょう。契約したならご存知だと思いますが、ヒポグリフは群れで子育てをします。その群れの仇ということなら、おそらく本能的に悟ってしまうかもしれません。私は一度しかヒポグリフの世話をしたことがありませんから、正確なことは言えませんが」


 契約した時の様子じゃ、知能は高そうだったからな。確か俺の世界の伝説だか神話だかだと、大人しい性格なのにペガサスに対してだけは本能的に敵意を剥き出しにするって話があった気がする。


「じゃあやっぱり、マイライトに行くしかないわね。まああの子達には似合わなかったと思うけど」


 まあエビル・ドレイクの羽毛は毒々しいまでの紫だったからな。確かフェザー・ドレイクの羽毛は紺碧色って話だから、俺としてもそっちの方がいい。


「となると、とりあえず飛竜用の獣具を買って、明日狩ることになるな」

「試し切りも兼ねて、そうしましょうか。移動するだけなら問題ないですよね?」

「それは大丈夫だと思いますが……簡単に決めるんですね……」


 そりゃ獣具は早めに用意するに越したことはないからな。それに予定じゃ、明日武器と防具が完成する。実戦での使い勝手を確かめるには丁度いい。


「気を付けてくださいね、本当に……」


 フィアットさんが何とも言えない顔をしている。まあフェザー・ドレイクみたいな高ランクの魔物なんて簡単に狩れるもんじゃないし、ましてや試し切りも兼ねるんだから、心配したらいいのやら呆れたらいいのやらだよな。


「油断はしませんよ」

「というわけで、ジェイドとフロライトに獣具をお願いしますね」


 飛竜用の獣具一式を買い、正式に二匹を預ける手続きを済ませると、ジェイドとフロライトの様子をみてから帰ることにした。ジェイドは馬や地竜と一緒に元気よく牧場を走り回っており、フロライトは人見知り?獣見知り?するようで、そのジェイドにくっついていたが、プリムの姿を見つけると喜んで駆け寄ってきた。


「よしよし。甘えん坊さんね」


 フロライトはグルグルと喉を鳴らしながら、プリムに頭をこすりつけて甘えている。プリムも嬉しそうだが、なんていうか猫みたい仕草だな。あ、確かヒポグリフはグリフォンと馬の子で、そのグリフォンは鷲とライオンを合わせたような姿だったな。ライオンが入ってるんだから、猫っていうのもあながち間違いじゃないか。


「獣舎じゃ窮屈だと思うけど、我慢してくれよ。なるべく早く、何とかするからな」


 俺もジェイドの頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めてくれた。そういえばこいつら、まだ子供なんだよな。


「明日はまたマイライトに行くから、よろしくな」

「クワアッ!」


 ジェイドとフロライトは、帰ろうとする俺達をとても悲しそうな目で見送ってくれた。フロライトなんて、目に涙が浮かんでた気がする。


「やっぱり早く、あの子達と一緒に暮らせるようにしないとね」


 プリムも寂しそうだが気持ちはわかる。可愛いんだよな、あいつら。だけどいつまでもここにいるわけにはいかないから、俺達は後ろ髪引かれる思いで獣舎を後にし、その足で防具屋に向かった。

ヒポグリフもそうですけど、ペガサスとかグリフォンとかに乗るのって大変ですよね。翼があるから足をどこに置いたらいいのかわかりませんよ。

あとこの世界の馬は、基本地竜を怖がりません。生まれた時から一緒ですから、仲間意識があるようです。馬と一緒に育った地竜もそれは同じで、馬に手を出すことはしないです。


ヒポグリフの翼の位置を変えたので、普通の馬と同じように乗る形にしました。

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