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刻印術師の異世界生活  作者: 氷山 玲士
第一章:フィールよいとこ、一度はおいで
11/99

011・プラダ村へ向かうにあたって

「お待たせ、ライナスさん」

「まったくお前さん達は……。こんなに早くケリを付けちまったばかりか、ヒポグリフと契約までしてくるとはなぁ」


 ギルドに着くと、ライナスのおっさんに呆れられた。俺達としても契約するなんて思ってなかったからな。レックス団長や副団長もいるが、こちらも苦笑していらっしゃる。言いたいことはあるが、先に報告だ。


「エビル・ドレイクに襲われて、契約した2匹以外は全滅。そして魔石を含めて君達に託した、と?」

「あの状況じゃそう考えるよりほかなくて」

「魔物によりけりだが、義理堅い種なら稀にある。それにお前さん達なら、託せると思ったんだろうな。滅多にないことだが、そうやって契約した従魔は、同じ種族の中でも飛び抜けて強くなるそうだ。当然、契約者にも恩恵がある。もしかしたらお前ら、レベル上がってないか?」


 言われてライブラリーを確認してみた。


 ヤマト・ミカミ Lv.56 17歳 

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール 

 ランク:A-G 

 レイド:ウイング・クレスト 

 異界からの客人まれびと、異世界の刻印術師、魔導探求者まどうたんきゅうしゃ、ヒポグリフの主


 ……上がってますな。それに称号も増えてる。ヒポグリフの主ってのはわかるが、魔導探求者まどうたんきゅうしゃってのはなんだ?

 ちなみにプリムのライブラリーも見せてもらったがこんな感じだった。


 プリムローズ・ハイドランシア Lv.51 17歳 

 ハンターズギルド:アミスター王国 フィール

 ランク:A-G 

 レイド:ウイング・クレスト 

 白狐の翼族、獣人連合の公爵令嬢、客人まれびととの絆を深めし者、ヒポグリフの主


 うん、公爵家のお嬢様でしたか。見た瞬間しまったって顔してたが、隠し忘れることもあるだろう。


「ごめん、大和。隠してるつもりはなかったんだけど……」

「まあ予想外ではあったが、そのうち話してくれると思ってたからな。俺も隠し忘れて、おっさんや団長達にバレたし」


 そう、俺も称号を隠すことを忘れていて、この場にいる人達に客人まれびとだということがバレてしまった。みんな目を丸くして驚いていたが、同時に納得もしていた。


「お前さん達については、もう驚くだけ無駄だってことがよ~くわかった」


 とはライナスのおっさんの弁だ。人外扱いするんじゃねえよ。


「それで、エビル・ドレイクは持って帰ってきてるのか?」


 いつまでも脱線してるわけにはいかないので、レックス団長が話を本線に軌道修正してくれた。さすが団長だ。


「ええ、俺のボックスに入れてあります。確認しますか?」

「そうだな、頼む」


 まあそのつもりがなきゃ、最初から鑑定室なんかで報告を聞かないよな。


「思ったよりデカいな。よくこんなのを二人で倒せたもんだ……」

「ええ。フェザー・ドレイクの異常種という話ですが、見た目も大きさも違いすぎます。どれだけ時間をかければ、ここまでの巨体になるというのか……」


 フェザー・ドレイクは大型犬とほぼ変わらない大きさだが、エビル・ドレイクは桁違いに大きく、おそらく10メートルは超えてると思う。とても同じ種族とは思えない。


「やはり従魔だな。契約印がある」


 召喚獣や従魔には必ず契約印が刻まれる。場所は血を交わした所になるため個体によって異なるが、契約印があるから町中でも連れ歩くことが可能になる。召喚獣や従魔が人を襲うなんてことは、契約者が命令するか、自衛のためしかありえないからな。

 そして召喚獣、従魔が死んでも契約印は消えない。そのため召喚獣や従魔を使った略奪行為なんかも防げるのだが、なぜ契約印が消えないのかはよくわかっていないそうだ。まあ魔法だしな。

 で、契約印には契約者の魔力が残ってるから、それを辿れば契約者が誰かは比較的簡単に調べることもできるので、言い逃れなんかもできないというわけだ。


「契約印が口の中って、いったい何考えてやがんだ?」

「頭を全部吹き飛ばしてたら、わからないとこだったわね」


 エビル・ドレイクの頭部はプリムが吹き飛ばしているが、それでも後頭部だけだったので口の中は無事だった。少しでも当たり所が悪ければ契約印も消えてたかもしれないわけだから、俺もプリムも若干居心地が悪い。


「放置しとくほうが問題だからな。それにその場合は、普通に討伐依頼を出したってことで解決する。異常種なんて、見かけたら即討伐が基本なんだからな」


 契約したことを隠していたギルドマスターが悪い、ということらしい。それもそうだよな。


「この件はとりあえずこれでいいとしてだ、プラダ村への商人の護衛依頼の件だが、行ってもいいという商人と話がついた。お前さん達とあいつらを指名することも納得してくれているから、後は物資の用意が済めば出発できる」

「騎士団からは副団長以下数名を派遣することになっている」

「ミーナもですか?」

「本人は行きたがっているんだが……」

「団長が止めてるんですよ。妹には甘いから」


 答えてくれたのは副団長のローズマリー・トライハイトさんで、王都に居を構えるトライハイト男爵家の次女だ。レックス団長とは恋仲だが、家柄の問題もあってまだ結婚することができず、そのせいで実家とは疎遠になっているとか。


「せっかくの機会だし、経験を積ませると思えばいいんじゃないですか?」


 プリムはミーナの同行に賛成している。この町でもっとも親しいのは、間違いなくミーナだ。ハンターと騎士という関係から顔を合わせる機会は少ないが、それでももう友人と言っても過言ではない。今度ミーナの休みの日に、遊びに行く約束もしているからな。


「不安はあると思いますが、ミーナは俺達が守ります」

「いや、不安はないが……」

「レックス、ミーナも子供じゃないんだから、本人に決めてもらえばいいわ。いつまでもお兄さんが縛ってちゃ、あの子がかわいそうよ?」

「それはわかっているんだが……ええい!大和君、プリムさん!妹を頼む!」


 なんか投げやりな感じもするが、これでミーナの同行も決まった。プリムの尻尾が嬉しそうに左右に揺れてるが、尻尾で感情表現ができると取引とか商談とかには向かないんじゃないか?


「で、出発はいつの予定で?」

「三日後だ。フィールには余裕があるから、予定より多く持って行くことになっている」


 三日後か。それまでに獣車を用意できるかはわからないが、間に合わなくてもジェイドとフロライトに乗れば大丈夫だろう。2匹の獣具も用意しないとな。それに明日には武器と防具が完成する予定だから、こっちの準備は問題ないと言っていい。


「ラウスとレベッカ、だっけ?あの子達は?」

「さっき依頼内容を説明したが、すげえ緊張してたぞ。あいつらの役目は道案内とはいえ、お前らみたいな化け物と一緒に村に行くわけだから、気持ちはわからんでもないが」

「失礼な……」

「道中で襲われる可能性も高いですからね」


 ラウスとレベッカの村、プラダ村はフィールより若干北にある。そのためプラダ村がアミスター王国最北になるのだが、プラダ村へ行く街道は途中で別れており、南へ行くとバリエンテ獣人連合国へ至るため、あまり重要視されている村ではない。同じぐらいの距離にバリエンテとの関所街があるのだから、プラダ村に行く理由がないわけだ。

 ちなみに俺が転移した場所は、その交差点から少しフィールに行った所になる。


「Cランクにはなってるんだよな?」

「そりゃさすがにな。明後日の昼に顔合わせの予定だから、しっかりと予定を空けておけよ?」

「了解だ。んじゃ報酬を受け取ったら、ジェイド達の獣具と獣車を考えるか」

「そうしましょうか」

「お前ら、本当にハンター向きの性格してるよな。っと、いつまでもプリムローズ様を呼び捨てにするのはよくありませんでしたね」


 隣国の公爵令嬢だから、そりゃそうだよな。公爵ってことは王族の一員なわけだし。


「別に気にしないでよ。あまり詮索してほしくないことだし」

「しかし……」

「それに理由があって隠してきたんだから、黙っててくれるとありがたいわ」


 それなら偽名を使えよ、と思ったが、ライブラリーを見ればすぐにわかるか。隣国とはいえアミスターに来たのは、公爵令嬢の名前なら知られてない可能性が高いからなんだろうな。


「そういうことなら。それじゃ報酬はカミナから受け取ってくれ」


 ハンターになる人間には様々な事情がある。ライナスのおっさんからすればよくある話なんだろうから、すぐにプリムの事情を汲んでくれた。レックス団長やローズマリーさんは複雑そうな顔をしているが、騎士なんだからこれは仕方ないんだろうな。


「わかった」

「我々も詰所に戻るとしよう。選抜者に説明をしなければならないからな」

「ミーナのこともね」

「わ、わかっている」


 レックス団長、尻に敷かれてるなぁ。早く結婚できるといいけど。

 そんなわけで俺達は受付に戻り、カミナさんから報酬を受け取った。しっかりとランクアップもして、A-Pランクになりましたよ。


「こちらが今回の報酬です」


 内訳は依頼の報酬が10万エル。エビル・ドレイクの買い取り価格が50万エルだ。他にも魔物の素材を買い取ってもらったが、こちらは全部合わせても1万エルにもならなかった。あ、ヒポグリフの魔石は売ってませんよ?あんなことがあったのに、売れるわけがないじゃありませんか。


「異常種って、やっぱりけっこう高値なのね」

「それはそうですよ。一度倒せば数ヶ月から数年は出てこないと言われていますから。例外は迷宮ぐらいです」


 迷宮というのはヘリオスオーブに点在している、所謂ダンジョンのことだ。出現する法則もないし場所も決まっていない。どこの国か忘れたが、首都にダンジョンができてしまい、しばらくの間大混乱をもたらしたこともあるそうだ。

 だがそのおかげで調査が進み、研究者達は迷宮の正体は超大型の魔法生物ではないかと推測した。

 迷宮はコアで魔力を吸収し、内部に多くの魔物を生み出す。だが迷宮内で生まれた魔物は迷宮の外では生きることができず、数時間で命を落とすため、迷宮内部の魔物が外に出てくることはない。そして迷宮が成長するためには迷宮の外の生物の命が必要なため、人間を誘き寄せるために宝物を、魔物を誘き寄せるために餌や繁殖相手を用意している。

 その迷宮内では、希少種や上位種、異常種なんかも普通に歩いている。倒しても時間が経てばまた出現するため、コアを倒さなければ金策としては有効なんだろう。倒せるだけの力量があれば、だが。


「迷宮か。行ってみたくはあるわね」

「だな。フィールの近くにはないから、遠出することになるか」


 残念なことに、フィールの近くには迷宮はない。一番近くても徒歩で三日はかかる。ジェイドやフロライトに乗れば一日で着くとは思うが、それでも遠いことに変わりはない。


「まあ、落ち着いてから考えましょう」

「そうするか。報酬も受け取ったし、獣具を買いに行こう」

「そうね。それじゃカミナさん、またね」

「お気をつけて」


 カミナさんに挨拶してから、俺達はギルドを出た。

さりげなくプリムが貴族出身とカミングアウト。後々ストーリーに絡んでくるかもしれない。そしてハンターのせいで迷惑を被っている村への護衛依頼。はてさて、いったいどうなることなのでしょうか。

ちらっと迷宮にも触れてますが、潜る予定はありますぞ。攻略するかは未定ですけどね。

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