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フェンス越しに君と
あの日、仲間たちと。
フェンスの向こうに見た景色を、今でも思い出すんだ。
工場の多いあの街で、一年に一度の特別な祝いの日。その日は、どこの工場も休みで、いつも空を覆ってる黒々しい煙はどこにも見当たらない。ただただ真っ青な空がどこまでも続いていて――。
学校の屋上のフェンス越しに見たこの街は素晴らしく綺麗だった。
しかしその翌年、僕の仲間の一人……誰よりもあの光景を気に入っていたあいつは、祝いの日を一ヶ月先に控えた状態で亡くなった。
そして僕もその数日後に街を離れることになった。
あれから十年。
ひょんなことから、僕はこの街に帰ってきた。それも、母校の教師として赴任する。
なあ、今もこの街のどこかを漂っているのか。お前は墓の中でじっとしていられるような性格じゃないものなあ。
祝いの日、思い出の屋上で街を眺めている僕の隣には、不思議な暖かさがあるような気がした。