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君の街へ

「ねぇ、この道どこまで続いてると思う?」


帰り道の途中にある、あの馬鹿みたく長い道に着くと、決まってお前はそう言ってたな。


「そりゃ、山田さんの畑過ぎた辺りまでだろ」


「もう、夢がないんだから! そう言うんじゃなくてさー……、ねねっずっとずーっと遠くまで歩いていきたいと思ったことない?」


「そんな遠くまでどこに行くってんだよ。つか、ずっと遠くなら乗り物を使えばいいじゃないか」


「馬鹿ねえ、歩いていきたいから、歩いて行くのよ。でも、どこへ行くかよりも一緒に行く人の方が大事だよ。一人で行っても、つまらないでしょ」


不意に言葉に真剣味が加わった気がした。何だかいつものお前じゃないみたいで、慌てて振り返ったが、いつも通りの笑顔だった。


翌週、お前は随分と離れた場所に越していった。


今思えば、あれがお前なりのサインだったんだよな。

まったく、本当に遠くまで行っちまうなんて思っていなかったよ。

もっとわかりやすく言えばいい。だってお前単純だろ? ……なんていうとまた怒るだろうな。でも怒られても、今のお前と会うならなんでも懐かしく感じるだろうよ。

大学に進んで最初の夏。

俺は何の交通手段も使わないで、歩いてお前に会いに行くよ。

別に早く会いたくないわけじゃないぞ。

歩いていきたいから歩いて行くんだ。

お前との思い出を一つ一つ思い出しながら歩いて行く。

きっとこの手紙の方が断然早く着くだろう。

このクソ暑い中歩いて行くんだ、死ぬほど喉が渇いているだろうから、冷蔵庫には俺の好きな飲み物入れといてくれ。

ちゃんと憶えてるだろ?


それじゃあ、この手紙を投函して、お前のところに向かうとするよ。


追伸、お前が欲しがっていた指輪をプレゼントに買ったんだ。左手の薬指が空いてたらそこに嵌めてくれ。


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